第22話 ゴーレム
青い花を咲かせる薬草を入手する。それが死の森を脱出した俺たちに与えられた次の目標だ。
しかし、ここでとんでもない問題が発生していた。
城内にある闘技場でセレナが怒鳴る。
「くっ……貴様らっ! まったく使えないではないか!」
青い花を咲かせる薬草は魔力が高い地域。つまり、強力なモンスターが生息する地域に生えている。
ということで俺たちは闘技場でモンスター相手に修行していた。
相手は兵士達が修行用に戦うという動く土人形──ゴーレムだ。
二メートル近くある巨大な土人形で、土で出来た身体は堅く、その拳は重い。
しかし、その代わりに動きはトロく、動きをよく見て、胸にある魔石を攻撃すれば簡単に対処できる。俺とアーニャは剣を貸して貰い、そのゴーレムと戦っていた。
死の森を一緒に突破した仲間だから、ある程度戦えるだろうとのことだったが……。
「アーニャ殿! 避けてるだけでは敵に勝てないぞ!」
魔法が使えない制約があるが、魔力によって多少身体能力を上げることのできるアーニャ。
魔力で身体能力を強化し、ヒョイヒョイとゴーレムの攻撃を避ける。
セレナに急かされ、アーニャは剣を振るった。
「私剣術苦手なんだけどな~」
そうぼやきながら軽々と鉄の剣を振るうアーニャ。
しかし……。
「ダメだ浅い! もっと腰を入れろ!」
「え~! そんなの分かんないわよ~」
剣は中途半端にゴーレムに突き刺さるだけ。
ゴーレムは突き刺さった剣を身体から引き抜き再び動き出す。
セレナ曰くアーニャは避ける才能はあるが、攻撃の才能がまったくないらしい。
「だって私魔法でしか攻撃したことなかったもん。敵が近づく前に殺してたのよ」
アーニャはセレナにバレないように俺に愚痴る。まあ、そりゃそうだよなと言った内容だ。
避けるのが上手いのは偶に近寄ってくる強い敵を避けてる内に身についたものらしい。
つまりアーニャは魔力があるだけのでくの坊。
って! 人のこと言えないんだけどね! 俺!
「恭也殿! 避けるならもっとコンパクトに! 敵に背を向けるな!」
「避けてねえよ! 逃げてんだよ!」
俺はゴーレムから逃げながらセレナに叫ぶ。
アーニャみたいにギリギリで躱しながら隙を見て攻撃とか器用な真似できるわけないだろ!
全力で逃げながら偶に後ろを向いて渡り鳥の剣を投げるだけだ。でもそれもチクチクとゴーレムに刺さるだけで全く攻撃になってない。
そんなこんなしている内に疲れてゴーレムにつかまる。
足首を持たれてぶらんと逆さづりにされる俺。
「ひ~助けて~」
「全く! 貴様はっ!」
セレナが駆け寄ってきて、剣でゴーレムの腕を切る。
そのまま腕ごと地面に落ちる俺。
「ぐえっ!」
セレナが頭を抱えながら嘆いていた。
「ダメだ……これでは使い物にならん……」
死の森では殆ど差がなかった俺たちの力。それは敵が強すぎたからだった。
攻撃力一万の前に、攻撃力百も一も変わらないのだ。
死の森ではモンスターから逃げるだけで良かった。しかし、これからは違う。
これから向かう先には死の森程の強力なモンスターは出てこない。時にはモンスターを倒しながら進まねばならないのだ。
セレナがブチきれた。
「アーニャ殿はまだいい! 問題は恭也殿! 貴様だ!」
セレナは大きく息を吸い込むと、頭に青筋を浮かべながら俺に怒鳴った。
「貴様がおっぱいを見ると強くなるスキルと言うからこんな格好をしているんだぞ! そのスキルが嘘だったとは何事だ!」
プルンとセレナの胸元が揺れた。
俺の言った嘘のスキル【おっぱいを見ると強くなるスキル】を信じたセレナはビキニアーマーを着てきたのだ。
もちろんそんなスキルなどデタラメで、おっぱいを見ても俺の強さが上がるようなことはなく……。
「すいませんでした!」
「すいませんですむかバカもの!」
全力で謝る俺。その後俺はビキニアーマー姿のセレナに二時間ほど説教された。
なにはともあれ兵士の修行用モンスター程度に手こずる俺たちではこの数十倍の強さを持つモンスターがいる地域に行けるはずもない。
薬草を探す旅は暗雲に包まれた。
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