第23話 無限の魔力
「申し訳ございませんライナ姫……この二人ではCランク以上の地域に行くのは危険かと……」
「ええ~……」
視察に来たライナちゃんにセレナが頭を下げていた。
セレナは今にも泣き出しそうな顔だ。ライナちゃんは少し考え込むと、こう言った。
「でも異世界人が来る時。必ずなにかの方法で世界を救ってくれるの。だから今回は知恵や知識で救ってくれるかも……」
そう言って俺たちを見た。
「……しれないの」
〇
「はぁ~異世界に来てまで草むしりをすることになるとはなぁ~」
「全くよね~面倒臭いわ~」
現在俺とアーニャは城壁周りの薬草を駆除しているところだ。
つまり絶賛草むしり中である。腰が痛てぇ。
力がないなら現代日本の知恵で世界を救えとのことだったが、残念ながらどれだけ考えてもこのパンデミックを収束させる方法なんて思いつかなかった。
当たり前だ! 義務教育でパンデミックの収束方法とか習わなかったもん! わかるわけない!
ということで一時は国賓を免除されるところだったが、そこはライナちゃん。
「異世界人なら絶対なんとかしてくれるはずなの!」
と、なんとかしてくれた。歴史上、人類の危機の時に現れた異世界人が世界を救わなかったことがないからという理由だ。異世界人への信頼がスゲェ……。
その代わりに毎日薬草を摘み取る仕事をしなくてはいけなくなったがな。
「うわ~こんなところにも生えてるのかぁ」
薬草はまるで雑草のようにいたる所に生えていた。
ひび割れた城壁の隙間。低い木の影。もちろんそれは城壁の内側にもある。
石畳の隙間や、裏路地の奥の奥。
国が定期的に摘み取ってはいるのだが、全く追いついていない状況だ。
俺たちはその摘み残しをせこせこ摘んでいく。
……そんな日々が続いた。
朝から夕方まで薬草を摘み取る作業。城に戻れば何か解決策を思いついたのでは? とか、新しい力に目覚めたのでは? とか期待される。結構気まずい。
アーニャは時間を見つけてはコツコツと研究を再開し始めていたが……。
「う~やっぱり虹蛇の抜け殻が欲しいわねぇ」
虹蛇の抜け殻がないからうまくいっていないようだ。
代わりになる素材を探しているが難航している。
まあ、だからと言って今の国賓の生活を捨ててあの死の森に戻る気はなさそうだが。
俺はやることがないのでアーニャの研究を見守っている。
一応元の世界には帰りたいんだよ。……でももし、元の世界に帰れるとなって、この世界の人たちを見捨ててもいいのだろうか。
「本当に世界が滅びそうになったら女神が誰かを召喚するから大丈夫よ」
アーニャはそう言った。
「元の世界に変えるのを拒んだ私に、私に召喚された貴方。私たちはイレギュラーなの。この世界を救う義務はないわ。気軽にこの生活を楽しめばいいの」
「うう~ん。そうなのかなぁ」
俺にはそうは思えない。何か自分にできることがあるんじゃないかと思ってしまうのは俺の自意識過剰なせいなのだろうか。
〇
それはある日のことだった。
いつものように薬草を積んでいた時。突然思いついた。
「あ! そうだ!」
「なによ。うるさいわね」
隣で薬草を積んでいたアーニャが耳を抑え怪訝な顔をする。
「思いついたんだよ! 青い花を咲かす薬草を見つける方法を!」
青い花を咲かせる薬草は魔力地の高い土地に生える。
ならば作ってやればいいだけの話じゃないか!
こっちには無限の魔力を持つアーニャがいる! 土地に魔力を流し込み、世界一魔力地の高い土地を作れば良いんだ!
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