第5話「リバーウッドへようこそ」

・・・そんな、突如始まった異世界転生からの

未知との遭遇の連続からのグランガチ討伐を経て2週間ほど経った


前世のお父さん、お母さん、娘は今日も元気に頑張っています。

そちらはお変わりありませんか?病気などしていませんか?

私のことなら安心してください、なんとか今日も無事です。


「ユイちゃーん、こっちに酒頼めるかーい?」

「はい!すぐ行きまーす!」


ファンタジー漫画で見るようなウェイトレス姿で

私は今日も、ギルドに併設された酒場で働いている。


回想をしよう、あれはグランガチ討伐の話だ。


オータムさんが放った、

どう考えても並みの銃口から出ていいレベルじゃない

極太レーザーバレットの一撃で体の大半を失ったグランガチ。

その残骸を討伐の証拠品として依頼主である村長に渡し、

報酬をもらってすぐにラピスさん達の住む町、『リバーウッド』に帰った


そこで、私はラピスさんに二つの選択に迫られるのだった


「この町で住んで、うちらのギルド『レッドアッシュ』で働くか、

 この町で住んで、他の仕事を探すか、どうや?」


あ、もうこの町に住むことは確定で、その先の話なのねって思ったね。

でも実際、この町以外に私には当てがあるわけでもなく、

他の仕事・・・探せばあるかもしれないけど

就職先が用意されてるなら、今の私にはむしろ有難い提案でしかない。


「働きます、働かせてください」


ほぼ、即答だった。


それから、お酒の名前を覚えたり一人で買い出しに行けるようになったりと

前世ではバイトの経験のないながらも一生懸命仕事を覚えた結果、

こうして私はギルドに訪れる冒険者さん達の、

自分でも言うのはなんだけど、アイドル的な?存在になっている


「いやー、ラピスさんもオータムさんもシキさんも美人だってのに。

 ユイちゃんみたいな可愛い子、いったいどこで拾って来たんだろうなぁ」


髭をたくさん生やした、ドワーフのおじさんがそう褒めてくれた

最初はこういう荒くれっぽい見た目の人はセクハラしてくるのが

いわゆるお約束の流れだと警戒していたけど、そういうことは一切ない

下手したら前世のほうがセクハラが横行してるのではないか、と

そう思えるほど、この人たちは親切に接してくれるのだ。


「そんなこと知って、まさか拾いに行くつもりかぁ?」

「うるせぇよトカゲ野郎、こんな仕事してたら嫁なんて探さなきゃ来ねぇよ」

「はは、違いないな」


ドワーフのおじさんと、おじさんの友達であろう『トカゲ野郎』さんが

お互いの肩を小突きあいながら大笑いしている。

トカゲ野郎、というのはリルドラケンの悪口などではなく

『リザードマン』、そう、まじで蛮族のリザードマンである


「しっかし、ユイちゃんも最近ここに慣れてきたみたいで良かった良かった。

 最初に会った時は真っ青な顔してましたからなぁ」

「ははは・・・その節はどうも・・・」


トカゲ野郎さんがしみじみと語るのを苦笑いで返す


「いやいや、そりゃ蛮族ってだけでビビるのは仕方ねぇさ。

 実際この町には人族を嫌悪している蛮族も居る。

 だがしかし、この町はそういう蛮族も受け入れてるのさ。」


と、私をフォローするようにドワーフのおじさんがそう言ってくれた


「ええっと・・・町長さんが蛮族の・・・『ラルヴァ』で、

 人族と蛮族が手を取り合い発展する町を目指してるんですよね」

「はい、その通りですよ」


トカゲ野郎さんと話している私の背後

正確には左後ろと右後ろから同じ声が聞こえてきた


振り向くと、そこには金色の髪に白い服、銀色の髪に黒い服の

小中学生くらいの背丈の、双子の女の子が笑顔で立っていた


「おお、噂をすればですな」


ドワーフのおじさんとトカゲ野郎さんが深く一礼する

それに対し、双子の女の子も一礼を返した


そう、この双子の女の子がこの町の町長

『リバーウッドの双子町長』という名で通っている

『白エリス』さんと『黒エリス』さんだ。


なぜ双子で同じ名前なのかはトップシークレットらしいけど、

判別するために、人々は好みの色である服の色で分けて呼んでいるのだ


「町長がここに来たということは、何か依頼でも?」


トカゲ野郎さんがやや前のめりにそう聞いた


「町長の依頼ならわしらに任せてくれれば、無報酬でも構わないぜ」


ドワーフのおじさんがそんなこと言い出したけど、

いやいや、冒険者は慈善事業じゃないんだから。

無報酬でもいいとか町長さんにどんだけ恩があるんだろうか。


「ありがとうございます、でも依頼についてはギルドを通すことになってるので、

 ギルドから出たら、是非よろしくお願いしますね。」

「依頼と、今日はあなたに用が会ってきたんですよ、ユイさん」


白エリスさんと黒エリスさんが私の方に向いて、私は思わず変な声が出た


「へ?私、ですか?」

「ええ、ユイさんがここに来て数日経ちましたし、

 良ければこの町について色々説明したいなと思いまして」

「さあ、ラピスさんにはもう許可は頂いてますので、行きましょう」


小中学生ほどの背丈の女性二人に両手を引っ張られながら、

突然リバーウッド探索が始まるのだった








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