第12話 モールの中での出会い

 ぬぁぁぁぁぁ……辛いぃぃぃぃぃ

 エレベーターが使えないから2階へ上がる為の手段は否が応でも階段か止まったエスカレーターになります。

くっ!本日二回目の階段(停止したエスカレーター)昇りはキツイ!

 中々重心が安定しません。

 大変です。

 学習能力が無いとか言っちゃいけません。

 しょうがないんです。



「ガァァァァァ (つーらーいー)」



 しかもこの階段(停止したエスカレーター)、お店の規模が規模なのでかなりの距離があります。

 結構長いです。

 遠藤の家とは比べ物にならない程に長いです。


 そんなこんなでひーひーふーふー……違う、うーうーがーがー言いながらやっとの思いで二階に到着。

 うん。

 気分は始めて近所の山の山頂に来た感じ。

 僕やったよー頑張ったよー


 よし。

 それじゃ始めるか。

 一階が主に食品や薬を扱ってるコーナーが多いのに対し、二階は衣類が多い。


 人間は多分、ゾンビは衣類に興味が無いと思ってるんだろうけど、実は結構ファッションに気を使ってるゾンビは多かったりする。


 何故か?

 そんなの決まってるじゃないですか。

 僕達ゾンビですよ?

 ゾンビになる条件って、なんでしたったけ?

 ほら、あれですよ。

 ガブッと、噛まれるやつです。はい。


 そんなことされたら当然肉は喰い千切られて、見るも無惨な容姿になります。

 ゾンビがおぞましい存在だと言われる由縁の1つでもあります。

 ゾンビだって意思はあるんですから、やっぱり見た目でギャーギャー言われると傷つく人ゾンビも多いんです。

 だから一部のゾンビはなるべくそう言われないよう喰い千切られた箇所を隠すように服を着ます。


 ……だからここにも一階同様にとはいかなくてもそれなりにゾンビが多いわけで、



「ガーガー (あ、このマフラー半分無くなった首を隠すのに丁度いいかも)」


「ガウー (お?この服いくら血を吸収しても変色しないな。よし。当分これを使うか)」


「ゴアー? (頭の傷を隠すのなら、帽子?ニット?どっちがいいんだろう?)」



 見た目を気にする僕達(ゾンビ)がそこそこ居ます。

とりあえず、服を選んで無さそうな僕達(ゾンビ)に話しかけてみようか。

……あのお姉さんとか丁度良さそうだな。



「ゴカーウ? (すいませーん。ちょっといいですかー?」


「アァァァ? (ん?何かしら?)」


「ゴゴ (さっき一階の僕達(ゾンビ)に聞いたんだすけど、今日このショッピングセンターに人間が浸入したらしいんですよね。それ、どこか分かりますか?」


「ガー! (あーなんかそれ私も聞いたわ。でもごめんなさい。どこかまでは覚えてないわ。悪いけど、他のゾンビに聞いてみてくれるかしら?)」


「アーウ (了解です。ありがとうございました)」


「ウゴー (いいのよ別に。あ、そうだ。ついでにあなたも服を選んでいく?私が見繕ってあげるわよ?)」


「ウーウー (あーごめんなさい。僕はそこまで気にしないので。また気が向いたらお願いします)」


「ガウ (あらそう。まぁ何時でもいらっしゃい。大概私はここら辺に居ると思うから。それじゃあね)」


「ゴーゴ (はい。それではまた)」



 残念ながら収穫は無し、か。

 んーでも見た目を気にするゾンビならかなりの意思疏通が期待できそうだな。


 さっきのお姉さんも普通に喋れたし。

 もう少し二階をウロウロしてみるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る