第10話 大きい建物にゾンビが集まる理由
若い男女が僕達(ゾンビ)になるのを目撃してから約一時間。
やっと僕は目的の場所に来ることが出来た。
ここは元大手ショッピングセンター。
今ではゾンビの溜まり場所になっている所。
このお店は元々規模が大きく、品物が豊富で店内も広い。
その為、人間がゾンビから立て籠るのにはうってつけなのだが、
「ウー (こんばんわ)」
「ウー? (お?見ない顔だな。どっから来たんだ?」
「ガウ (んーここから少し離れた所かな?」
「ウガー (そうか。俺達(ゾンビ)の体じゃここまで来るのもかなり時間が掛かっただろう)」
「ウーウー (ですね。夕方に出発して、着いたのが今ですからわりと)」
「ガー! (そうかそうか!そりゃお疲れ様だったな!よし!うちは来るもの拒まず、去るもの追わずだ!歓迎するぜ!おーい皆!新しい俺達(ゾンビ)が来たぞー!」
「ガ? (お?本当か?おーい見えるかー?)」
「ガーガ (珍しくあまり傷が無いやつだな。いいな~)」
「ガウ! (若い男の私達(ゾンビ)!こっちに来て話しよーよ!」
それはゾンビにとっても例外じゃなく、広くスペースがある建物にはゾンビも集まる。
と、言うのもいくらゾンビとは言え完全に不休で活動出来る訳ではない。
確かに疲れを感じることは無いが、疲れが蓄積され続けているのも事実。
そして不幸なことに、その疲れが治癒されることも無い。
故に、活動する上で発生する疲労が肉体の限界を越えてしまうといつかは動けなくなる時が来る。
……らしい。
僕も人づてに聞いただけだからハッキリとは分からないが、それでも用心することに越したことは無い。
そのことを知っているゾンビも多く、こうして人間から奇襲を受けにくい場所には疲れを溜め過ぎないように休むゾンビは結構いる。
だからこういう建物にはわりと多くの(ゾンビがよく集まっているのだ。
「ガーウーア (歓迎してもらっている所申し訳無いんですけど、僕はここにあまり長く滞在するつもりは無いんです)」
「ガーア? (ん?そうなのか?んじゃなんとなくフラッとやってきたクチか?)」
「アーウー? (そんな感じですね。僕が普段活動している場所に数人の人間が逃げて来たんです」
「ガ (ふむ)」
「ガーガ (それでその人間の一人が、恐らくここに来たであろうことを口走っていて、ここから何かを持ち出そうとしていたみたいなんです。それで、それが何なのかが気になってここに来たんです)」
「ガガガ! (お前変わってるなぁ!そんなこと知ってどうするんだよ?)」
「アガーアー? (僕達(ゾンビ)にも情報があれば他の人間を出し抜くことは可能です。人間が必要としている物を僕達が先に始末してしまえばその分だけ僕らが人間に活動不能にさせられる可能性が少なくなると思いませんか?)」
「ガウアー (あーまぁ確かにそうかも知れねぇな。あんまりそう言うことは考えなかったからな。でも、ここに来る人間って言っても結構居るぞ?もしかしたらそいつらの仲間が俺達(ゾンビ)になってここに居るかも知れねぇが、そいつだけを探すことは出来ないだろう?)」
そう言えば通りすがった彼(ゾンビ)も言ってたっけ。
今は人が良く来るからあまり行かない方がいいぞーって。
んー……あ。そうだ。
「ガー (多分大丈夫です。その仲間の一人が殺されたと言っていたので僕達(ゾンビ)になっている筈です。ここに居る保証はありませんが、名前は知っているので探すだけ探してみます)」
確か拓也とか言ったかな。
「ガウ! (そうか。まぁ無理せず頑張れよ。……というか逆に殺されないように気を付けろよ!はっはっは!)」
「アウ (えぇ気をつけますよ。それでは)」
「ガー! (おう!じゃあな!)」
よし。
それじゃまずはどこから行ってみようか?
人間が最も必要とする物がある場所……
うん。
あそこかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます