第5話 ゾンビに法律は通用しない

 ノロノロ。フラフラ。

 ノロノロ。フラフラ。

 僕は今、本屋を出て僕達(ゾンビ)が集まっている場所に向かっている。

 けれどもその場所が近いとは言え、1㎞ぐらいは離れている。

 生前であれば大した距離では無いのだが、如何せん僕らは遅い。

 ノロノロフラフラ、本当に遅い。


 昼間の日光に当てられながら歩くよりは夜の月光に当たりながらの方が気持ち速く歩けている気はするのだが、それでも遅い。

 こういう時はゾンビの特徴が恨めしい。

 別に急いでるわけじゃないんだけどね。

 人間はあまり夜に活動しないからエンカウントする危険性も少ないし。


 因みにゲームセンターと本屋との距離は大体2~300m位なので割りと近いです。

 はい。



「ウガー? (おぉ?お前どこに行ってるんだ?)」

「ウガ (僕達(ゾンビ)が集まってる所)」

「ウーガー (あぁあそこか。別にどうしようとお前の勝手だが、今は止めておいた方がいいぞ?)」

「ガガ? (何故?)」

「ガーガーガー (なんか人間がよく来るらしい。理由は知らん)」

「ガー (そうなのか。ありがとう。気を付ける)」

「ウガー? (おう。気を付けてな。それでお前はどこに行ってるんだ?」

「……ウガガ (……そこら辺を散歩にね)」

「ガ (そうか。人間に気を付けろよ)」

「ガガ (ありがとう。あんたもな)」

「ウガ (おう)」



 んー?

 どうやらあの連中以外にも人間が来るみたいだな。

 でも、何があったっけ。あそこ?

 そんなめぼしい物は無かった気がするけど。

 僕が忘れてるだけ?

 それとも興味が無くなっただけ?


 んー………

 まぁ、着けば分かることでしょう。

 ノロノロフラフラ時間は掛かるけども、のんびり行こう。



「…………」



 あー退屈だー

 ゲームしたいー

 漫画読みたいー

 人間食べたいー……いや、食べたくないー


 なんかあそこまで行くの面倒になってきたな。

 気になるけど、僕の自由時間使ってまで確認する価値があるのかな?

 いや、年がら年中自由時間だらけですけど。


 んーでもなるべく色んな情報を知っていた方が後々困ることはないだろうからなー

 ……よし。

 決めた。



「ガー!」



 バキッ!

 と、僕は一番近くの家の玄関のドアを破壊して浸入する。

 不法浸入?

 こんなご時世にそんな無駄なものが通用するわけが無いじゃないですか。

 それにあれは、人間を裁くルール。

 僕ゾンビ。

 ZOMBIE。

 死んでる人に法律もクソも無いよね。



「ガーガー」



 てなわけでお邪魔しまーす。

 やる気が出るまでこの家でゴロゴロしてよーっと。


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