第6話 生きた人間との遭遇

「ゴアー!? (ちょっと待て!それはずるい!?)」


「ハッハハハハ!何を言っているのか分からねーが、勝負は非情なんだよ!」


「ゴッア! (くっこの!これならどうだ!」


「おぉ!?やるじゃねーか!だが、俺の敵じゃねぇ!」


「ゴァァァァ!!? (卑怯者!?)」


「勝負に卑怯もクソもねぇ!」


「ゴガァ!? (非人道的だ!?)」


「知るか!強い者が勝つ!これが常識!」


「ゴガ! (酷い!)」


「酷くねぇ!……そらそらそらさら!これで……俺の勝ちだぁぁぁぁ!!!」


「ウガァァァァァ! (クソォォォ!負けたぁぁぁぁ!)」



 そんな……人間ごときに僕が負けるなんて……!

 こんな家に……入りさえしなければ!



 ☆★☆★☆


 ~数十分前~



「ガーガー (お邪魔しまーす)」



 おぉ……

 ちゃんとまだ施錠がされていただけあって室内は荒らされてないみたいだな。

 玄関も綺麗そのもの。

 靴もキッチリ揃えられていて、ゴミ1つ無い。

 きっとここの住人は綺麗好きだったのだろう。

 まぁ、そんなのお構い無しに土足で上がり込むんだけど。


 ズカズカと僕は遠慮無しに土足で室内を歩き回る。

 靴の汚れの具合?

 街が既に崩壊しているんだ。

 死体の1つや2つ、当然軽く踏んでる。

 それはもう犬の糞よりも頻繁に。

 そんな靴の汚れの具合なんて気にしてどうするのさ。

 最悪なまでに汚いに決まってるじゃないか。


 だから僕は靴の汚れを少しでも落とす為に摺り足で歩き回る。

 特に絨毯やカーペットの上を。

 後ろを見ると、赤黒い染みが見事な線を引いている。

 ズリズリ。ズリズリ。

 僕の靴が綺麗になるのと比例して絨毯とかはドンドン汚れていく。

 笑えるわー



「ガアー」



 それにしてもこの家普通だな。

 テレビ、机、本棚、クローゼット、電化製品etc。

 どこにでもあるような物しかこの家には無い。

 見た目は綺麗な家だったからもう少し面白いものがあるのかと思ったけど、期待外れ。

 二階にいったらまた違うのかな?

 とりあえず僕は二階に行くことにする。



「ガ……ガ……」



 あ、辛い。

 辛いってか、難しい。

 そう言えば僕達(ゾンビ)って傾斜は大丈夫だけど段差は登り降りしにくいんだよね。

 三半規管が駄目になってるからかな?


 登りはまだふらつくだけだからいいけど、下りはマジでヤバイ。

 下手したら転げ落ちる。

 ……なんで僕わざわざ二階に来てるんだろう。

 止めとけば良かった。

 でも今更引き返すのもなんかなー



「ガァ~……」



 まぁそんなわけで二階に来たわけですけども。

 今の僕の心情はうーわーないわーて感じです。

 二階に来るなり僕の少ない感情を刺激してくれる出来事が起きました。



「ぬぉ!?誰だお前は!?どっから入ってきた!?」



 人間です。

 エネミーです。

 エンカウントです。

 ゲーム風に言えば人間Aが現れた!です。


 しかも場所が場所なだけに即座に逃げれない。

 マジないわー


 殺す?殺しちゃう?いいよね別に?

 別に食べなければ僕的にはセーフだし、こんな所で活動不能になりたく無いし?


 僕がそうやってごちゃごちゃと考えていると、目の前の人間はかなりズレたことを僕にしてきた。



「生きてる人間……じゃないよな?首、思いっきり噛まれてるし。なら、ゾンビ!?いや、別にどっちでもいい!とにかくこっちに来てくれ!」



 あろうことか僕の腕をとって自室らしき部屋に僕を連れ込む。

 まさか男同士の人間とゾンビのランデブー?

 ……うわ。

 気持ち悪。


 でも僕無駄に抵抗出来ないのでされるがままに。

 マジでヤバかったら殺せばいいし、とりあえずこの人に従うことにする。

 するとこいつは更にズレたことをしてくる。



「よし!持て!」



 僕にゲームのコントローラーを渡してきたのだ。



「で、やるぞ!対戦!」



 そしてゲーム機の電源を入れて起動させる。

 画面に表示されたのはとある格闘ゲームのタイトルだった。

 婆ちゃんが格闘家みたいな名前のゲーム。



「ガ?」



 まぁそれいいんだけど、僕にはこいつの行動が今一つ理解出来ない。


 コントローラーを渡される→ゲーム機の電源を入れる→対戦をやると言われる→現在に至る。


 こいつもしかして僕とゲームをしようとしてるのか?

 ゾンビなのに?

 一応僕人類の敵だよ?



「はいはいボーッとしてないでやるぞ!ゾンビでもゲームくらい出来るだろ?よし!スタート!」


「ガ!(待てコラ僕まだちゃんとキャラ選んで無い!)」



 どうやらこいつには関係無いらしい。

 いいだろう。

 それなら二次元の世界で殺ってやる!



 ☆★☆★☆


 ……クソ。負けた。

 唐突にゲームをやらされて敗北させられる。

 なんと言う屈辱。

 こいつゾンビよりタチが悪い。

 一体何者なのさ?



「ガーガーガー!(お前何?馬鹿なの?何ゾンビ相手に遊んでるわけ?」



 ……どうせ言ったって通じないのは分かってるけど、僕は文句を言わずにはいられない。

 だってこいつ別の意味で理不尽だし。

 文句の1つや2つ言いたい。

 あーこう言うときはゾンビって不便だー



「いや別に?遊びたいから遊んでるだけだし、俺の友逹殆ど死んで一緒にゲーム出来る人がもう居ないんだよ。んで外は危ないから出たくないし暇だし。んでお前が来たからまぁゾンビが相手でもいいかなーって」


「ガアン(嘘ん)」



 あれ?

 言葉通じてない?

 なんで?



「ガーガー(バーカバーカ。アホアホー)」


「そんなアホにゲームで負けたドアホに言われたく無いなー?」


「ガアン(嘘ん)」



 やっぱり言葉通じてる。

 え?なんで?

 そう言えば対戦中も途中から会話が成立していたよーな?


 えー何こいつ。

 そんな人間も居るの?

 敵対心は無いみたいだし、それなら少し相手をしてみるのもいいかもなー

 よし。

 そうしよう。

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