第4話 生き残った人間だって居る

 さて。

 ごちゃごちゃと考えているといつの間にか次の目的地に着いていた。

 僕が今来たのは本屋さんだ。

 世界がここまで崩壊してしまうと食料や衣類の方に目がいってしまい、あまり需要の無い本はわりとそのまま放置されていることが多い。


 漫画・ラノベ・小説・雑誌・etc。

 生前暇があれば本を読み、ゲームをしていた僕にとっては嬉しい限りだ。

 どんな本も大体ここにはあるし、お金が勿体無くて買えなかった本も今では自由に読める。

 勿論新品の本にはビニールでカバーされているか紐で括られているのだが、



「ウガ」



 火事場の馬鹿力があればそんなもの、1秒無くとも破り捨てることが出来る。

 今日はこのシリーズの漫画を2~3冊読むとしよう。

 タイトルは「世界平和を彼らは望んでいる」。

 最早世界平和もへったくれも無いのだが、現実と比較したら多分笑えるから読むとする。

 内容は感動ものなんだろうけど。



「…………ガガ」



 それから数時間程してようやく漫画を読み終える。

 ずっと立ちっぱなしだったので疲れた……ということは無いけれどそう言っておく。

 あ、漫画の内容はやっぱり数人の男女が世界平和を訴えて活躍する感動ものだったけど、現実と真反対過ぎて笑えて笑えて。

 ついつい全巻読んでしまった。



『……!…………!!!』

『!!!…………!』

『!………………!』



「ガ?」



 なんか外が騒がしいな。

 声の質からして……生きてる男が二人、女が三人くらいか?

 随分と大声で叫んでいるな。

 集中すればここからでも聴こえるか?



『だから言ったじゃない!あいつらの群れに突っ込んでいっても勝ち目は無いんだって!』

『知るかよそんなの!普段あれだけノロいんだ!俺達を見つけるや否やあんな異常な速度で走ってくるとは思わねぇじゃねぇか!』

『考える時間はいくらでもあったじゃない!あんな……あんな下らないものの為に必死になって、先走らなければ拓也(たくや)が死ぬことは無かった!』

『俺のせいだって言いてぇのかよ!?』

『えぇそうよ!大体あんたは―――――』



 ……ふむ。

 どうやら僕達(ゾンビ)が集まっている場所に特攻をかました馬鹿な連中のようだな。

 群れと比喩されるぐらい僕達(ゾンビ)が集まっている所と言えば……ここらならあそこしかないな。

 とりあえず僕も行ってみようか?

 あの調子だと下手したらこの店の中にあいつら入って来そうだし。

 それに何を求めて行ったのか気になるし。


 僕に敵対心が無いとは言え、人間と相対するのは死んでもごめんだ。

 あいつらマジ理不尽だし。

 頑張れば皆殺しにすることも出来なくは無いけど、身体がボロボロになるのは目に見えてるし。


 だから僕はあいつらがここに入って来る前に裏口から撤退。

 辺りが暗くなってきて、僕達(ゾンビ)の感覚も敏感になってきているというのにあいつらはまだギャーギャー騒いでいた。

 あれじゃ狙いの的はここに居ますよーって全力アピールしているものだ。

 自殺志願者?


 まぁ、別にどーでもいい。

 死にたきゃ死ねばいいしむしろ死ぬことを推奨する。

 ただし、僕達(ゾンビ)に噛まれてな。

 普通に死んでも僕達(ゾンビ)に為ることは出来ないからな。

 死後の人生……ゾンビ活動?ゾン動?ぐらいは自由に伸び伸びと楽しまないと。


 そうして僕は本屋を後にし、あいつらが行っていたであろう僕達(ゾンビ)が沢山集まっている所へと歩み始めた。

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