第2話 人生の終わりはあっけないもの

 始まりと終わりは割とありきたりだった。

 この世界は一ヶ月程前には普通の平和な世界で、始まりと終わりが来たのも普通の平日。

 僕が学校で退屈な授業を聞いていると、授業中にも関わらず校内放送で



『本日講演を予定しておりました佐藤さんがいらっしゃったので全校生徒は体育館に移動して下さい』



 との指示があったので僕達は即座に体育館に移動し始めた。

 これは勿論佐藤さんという人の講演を聞く為では無く、学校によっては違いがあると思うけれど、不審者が校内に侵入した時の緊急措置だ。



 避難訓練があるとも事前に聞かされていなかったので、僕達はこの放送が本物だと理解し、内心ワクワクしながら移動していた。


 こんな非日常な出来事なんてそうそうあるわけじゃない。

 あったとしても学校生活において一度あるか無いか。

 むしろ無いほうの可能性が高いだろう。



 だからこれからどうなるのだろうと期待を胸に抱きながら体育館に着くと、ついさっきまでの僕を呪いたくなった。

 僕達のクラスが体育館に着いた時には既に何百人という生徒が血を流して苦しんでいた。



 その時僕は何が起こっているのかが分からなかったし、とにかくこれはヤバイと本能で理解していたから先生の指示も仰がずに速攻で逃げた。



 どこに逃げればいいのかは分からなかったが、立ち止まっているよりかはいいだろうと思って逃げた。



 気がついたら僕は学校の屋上に来ていた。

 多分、そこからなら全体的な景色を見渡せると考えたからだろう。

 事実僕が通っていた学校は街のど真ん中に建っており、360°街並みを眺めることが出来た。

 それ故に、僕は愕然とした。


 ほんの数時間前までは普通だった街並みは、所々火事でも起こったのか黒煙が立ち上っており、救急車やパトカーなどのサイレンも煩く鳴っていた。



 何が起こっているのかとパニックになっていると、校庭に二人の生徒が走っているのが見えた。

 そしてそれを取り囲むようにゆっくりフラフラ歩く数十人の生徒も。



 二人の生徒が叫んでいるのに対し、取り囲んでいる生徒は何も言わずただただ無言。

 そして円の中心に二人を追い詰めるとそいつらは一斉に二人に覆い被さる。

 その瞬間に響き渡る絶叫。



 ほんの数秒絶叫が響いていると、それは直ぐに止み、同時に取り囲んでいた生徒も離れていった。



 どうして離れていったのか?

 答えは二人を見れば明らかだった。



 屋上からの遠目でも分かるぐらいに大量の出血をしており、間違いなく助からないといった血を流していた。

 つまりそいつらは二人を殺したのだ。



 それを理解すると僕は怖くなり、もっと安全な場所に逃げようとするが足がすくんで動けなかった。

 代わりに二人の遺体に目が釘付けになっていた。



 そして僕は更に驚愕することとなるものを見ることになる。

 二人はゆっくりと立ち上がり、二人を取り囲んでいた奴らのようにフラフラとどこかへ歩いていったのだ。



 間違いなく死んでいた筈なのに、生き返った。

 その事実に僕はあり得ないなと思いながらも、この世界にゾンビが蔓延したんだなと結論づけた。



 なんとかハザードとか、なんとかオブザデットとか、そんな感じの世界になったんだなって、混乱しながらも冷静になって結論づけていた。



 それからは早かった。

 ゾンビを倒す為の武器を調達しようと一番定番なバットを入手する為に野球部の部室まで行って、手に入れたと思ったら部室の近くを徘徊していたゾンビに噛まれて……食べられて?死んでしまった。



 で、生き返って僕はゾンビになった。

 僕が学生からゾンビに転職した瞬間だ。

 漫画みたいな世界になったから主人公みたいな展開が待っているかと思ったけど、全然甘かった。

 主人公どころかモブの扱い……モブとして描写されるのかさえ分からない程にあっさり僕は死んでゾンビになった。



 もしかしたらちゃんと主人公みたいな展開になってどこかで活躍している人がいるのかも知れないけれど、別に興味は無い。



 なんやかんやでゾンビになった僕だけど、そこまで悲観しているわけではないし。

 というかぶっちゃけこの世界満喫してます。

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