本音
「露那…?」
「……」
露那が珍しく酷く落ち込んでいる様子だ。
教室の隅の方で三角座りをして、誰の目にも明らかに落ち込んでいる風に見えるが…一体どうしたんだろうか。
「奏くん…昨日何してたの?」
「え…昨日?…昨日は姉さんが雨に降られてしまって風邪になってたからその看病をしていた」
と言っても、姉さんは驚くほどの回復力で今朝には俺よりも早く起きて料理まで作っていたほどだ。
「そうなんだ…はぁ…」
ここまで落ち込んでいる露那は本当に珍しいな、何があったんだと聞いても良いが重たい話が口から出そうでそれはそれで嫌だな。
「奏くん…昨日やり残した事とかない?」
「え、やり残した…?」
「うん」
やり残したってことも特に思いつかないな…
昨日は秋ノ瀬が家に帰って秋ノ瀬が帰ったと思ったら姉さんの看病をで、結局優那ちゃんの配信を見れなかっ……
「あるな」
「あるよね!」
優那ちゃんの配信を見損ねた。
これは俺の中で大きな心残りだ。
「どうしてそこで嬉しそうにするんだ?」
「う、ううん?な、なんか昨日奏くんがやり残してることある気が直感でして、昨日は色々と身が入らなかったんだよね〜」
「身が入らなかった…?」
「…ちょっとお手洗い行ってくるね」
「あぁ…」
なんだたったんだ…ん?
『完全復活!!明城優那〜!今日からまた元気〜!!』
「え…?」
優那ちゃんのツイート…?
完全復活って…昨日も配信はしていたはずだ。
俺はスクロールして昨日のツイートを見てみる。
『見てくれてない気がする』
『元気出ない』
『はぁ…』
などのツイートが行われていた。
見てくれてない気がするって…優那ちゃんの配信なんてここ最近は平均で一万人ぐらいは見てるのに、一体何を見てくれてないって言うんだ?
「…って、あれ…」
露那、ハンカチ忘れて行ってるじゃないか。
…わざわざハンカチを届けに行くっていうのも気持ち悪いかもしれないが、放っておくわけにもいかないしな。
俺は教室を出て、女子トイレの方角へ……
「え、露那?」
「か、奏くん…!?」
露那は咄嗟にスマホを隠した。
どういうことだ…?トイレに行くって言ってたのに。
「何してるんだ?」
「ううん、何にもしてないよ?今からトイレ向かうところだったから」
演技力は流石と言ったところだが、論より証拠だ。
「そのスマホで……」
「奏くんは…今は、その…私の、恋人…彼氏、じゃないんでしょ…?だ、だったら、これ以上詮索する権利はない、よ?」
露那はこれ以上なく震えた声で言う。
…露那から俺とはもう恋人ではないと強調するほど、そのスマホでしていたことを隠したいのか。
これで十八禁なサイトを見てた…とかなら俺だって興味はないが、明らかにそんな雰囲気では無い。
「じゃあ…私トイレ行くから!」
そう言って駆け出そうとする露那の腕を取る。
「待ってくれ露那、前から薄々何か感じてたけどずっと何か俺に隠してる事ないか?大事なことをだ」
露那は再会してから、明らかに俺に何かを隠している、それが今までの節々の言動から感じられたことだ。
「…隠して無いよ」
「ここで嘘をついたら一生縁を切る、そう言っても露那はもう一度何も隠してないって言えるのか?」
「……」
露那は黙り込んだ。
…そろそろはっきりさせたいところだ。
「何を隠してるんだ?」
「…最初は隠すつもりなんてなかったんだけど、奏くんのことを見てると段々それを知られるのが怖くなって…」
「復縁した場合に何か隠し事をされてる方が俺は嫌だ、だから…言って欲しい」
「…嫌だよ、だってそれを知っちゃったら、どっちからも離れちゃいそうだもん、奏くんは…」
「どっちからも…?良くわからないが、俺は秘密の一つや二つで露那から離れたりはしない」
「それってもうプロポーズみたいなものだよ?」
「あっ…」
そういうつもりで言ったわけじゃなかったんだが…
「…はぁ、そうやって私以外の女の子にも無意識に勘違いさせてるんだと思うと、本当に奏くんと付き合ってたとき私は精神が追い込まれてたよ、確かに私も愛が行き過ぎてたのかもしれないけど、その原因は奏くんだからね」
「俺…?」
「奏くんがそうやって無意識に女の子に勘違いさせちゃようなことを言わせないために、私は奏くんの周りの女の子を片っ端から奏くんから遠ざけたんだから」
「…そう、だったのか」
確かに露那と付き合ってから一ヶ月は普通の恋人だった。
それは付き合ってお互いが近くなったから段々と本性を見せてきたのかと解釈していたが…違った?
俺のこういう小さな発言が一ヶ月降り積もった結果…だったのか。
「だから奏くん…離れないっていうんだったら、そういう状況作っても良いかな?」
「状況…?あぁ」
良くわからないがここは許諾しないと話が進まない。
「わかったよ…じゃあ、真実を教えてあげる」
露那がそう言った途端、俺の視界は暗くなった。
薄れ行く意識の中で露那の声が聞こえた。
「先生…天海……ん……倒れ……早退……ます……」
なんだ…?
俺は微かに聞こえたその声を最後に、意識を絶った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます