黒園と秋ノ瀬 邂逅2
はぁ〜、奏くんって本当に扱いやすいな〜。
私が奏くんのお姉さんに伝言なんてもらうわけないし、用があるなら奏くんに連絡するでしょ普通…
まぁそういうところも好きなんだけど。
「黒園さん…?私に何か話があるん、だよね?」
流石にこの女は奏くんに比べて全然勘良いんだ。
奏くんの扱いやすいところは可愛いんだけど、私以外にも扱われちゃうのが本当に何点だよね〜。
さっきの反応から見るに今日のイベントもこの女と参加してたのかな?
奏くんと付き合ってたら奏くんに色々言ってたかもだけど、さっきはこの女に意図的に邪魔されたせいで奏くんから告白を引き出せなかったし、まだ我慢しないとね。
それにしてもさっきの不安っていうのは上手い言い回しだったなぁ、半分は嘘ついてないし、私の不満点も言える。
不安だけで監禁なんてするわけないのにね。
私の感情はただ二つ、奏くんが女に騙されたり誑かされたりしないかの不安と、もう一つは…奏くんを誰にも渡したくない独占欲。
そんなこと言ったら奏くんは自分の悪いところを認めないだろうからもう半分は隠したけど、それが私の感情。
…って、奏くんのことばっかり考えるんじゃなくて、まずはこの邪魔者と話さないと。
「うん」
「何かな…?」
「単刀直入に聞くけど、今の話、聞いてたの?」
「何の話…?」
さっき奏くんの前では動揺して言葉詰まり起こしてたのに私しかいなくなったらこの冷静な装い…こんなのに奏くんを渡すなんて絶対に無理。
ていうか誰が来ても奏くんは私だけのもの、絶対に譲らない。
「聞いてて、危ないと思ったからさっき奏くんが答えを出すのを邪魔したんだよね?」
「く、黒園さん?なんの話かわかんないよ」
この女はあくまでも白を切る気らしい。
せっかくさっき奏くんが私に復縁の一言を告げようとしてくれてたのに、本当私以外の女なんて奏くんの周りから消えちゃえば良いのに。
「別にその演技続けるなら良いけど、どちみちもう私と奏くんが付き合うことは決定事項だからね」
奏くんがあそこまで決意を固めて私に告白しようとした以上、次に私がちょっと涙目で懇願すればきっとさっきの続きを言ってくれる。
「そ、そうなのかな〜?聞いた話だと元々は付き合ってたけど今は付き合ってないんじゃなかったっけ〜?」
「だけどこれからまた復縁するって話だよ」
「……」
私がそうハッキリ言うと、この秋ノ瀬とかいう女は黙り込んだ。
はぁ…でもこれでようやくまた奏くんが私のものになる。
でも扱いに気をつけないとまた別れるなんて言い出しかねないし、その辺りの良い塩梅を見つけないとね。
「黒園さんって、天海のこと好きなの?」
「は?当たり前でしょ?前も言ったし」
「…そっか」
今更何言ってんのこの女…はぁ〜あ、やっぱり奏くん以外の人間との会話は不毛だな〜、本当なら今すぐにでも奏くんのところに行きたいけど不安の種は今の内に確実に摘み取っておきたいからね。
「前って言うとさ、今までも天海の周りにいる女子のこと区別なく払ってきたみたいなことも言ってたよね」
「うん、事実その通りだし」
奏くん自身の人格は一部を除いて全部良いんだけど、その良さに惹かれて私以外の女にまで擦り寄られちゃうのは本当に奏くんの罪なところだよね。
私がそういう女たちを払ってあげてなかったら今頃奏くんに集る虫でいっぱいだったんだろうなぁ…あぁ、気持ち悪い…考えなくても良いことは考えないに尽きるね。
「で、私のことも払うって言ってたっけ」
「言ったね」
「…私黒園さんにそう言われて考えたの、どうしたらその払う対象から私が外れるのかって」
「いきなり何?」
奏くん以外の自分語りなんて興味無いのに…奏くんと復縁したらいっぱいイチャイチャしてこの空虚な時間分ちゃんと幸せを倍の倍の倍ぐらいにして返してもらわないと。
「もうわかってると思うから言うけど、私も天海のこと好きなの」
やっと白状した…まぁわかってたけど。
むしろ本気で気付いてない奏くんの方に驚きなんだよね。
「それで?」
「だから払われないようにって考えると、私が天海と関わらなかったら黒園さんも私のこと敵対視しないかなって思ったりしたけど、それは私の感情的にはできないから、他に考えたの」
「……」
「だから、本当はこういうことはしたく無いんだけど…何か弱みを握るって答えに行き着いたの」
「弱み…?」
「うん」
この女、普段教室ではあんなに明るく振る舞ってるくせに恋愛ごとになるとやっぱり女だね、こんなのと奏くんを一緒になんて居させられるわけがない。
「別にね、黒園さんが天海と復縁したいってだけなら私だってそれは天海の意思に準ずるだけだけど、黒園さんは私に今後何かしらの形で危害を加えようとしてるみたいだし、何より黒園さんみたいな人と天海を一緒になんて居させたくない」
それはこっちのセリフ。
「だから…多少強引だけど、黒園さんから攻撃的なこと言ってきたんだから…もし私と天海に何かしようとしたら、その弱みを使うから、これは脅しじゃないよ─────明城さん」
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