初のコラボ配信
あれからと言うもの優那ちゃんについて露那の気に触れない程度にちょこちょこと話しているが、露那が怒る様子は一切なく、なんならどんなところが好きなのかと聞いてくるぐらいには許容してくれている。
これならもしかすると露那に優那ちゃんのことを布教できるかもしれない、そして布教できることができればいずれ露那に優那ちゃんの恋愛相談配信とかを見てもらって考えを改めてもらうことにしよう。
そうすれば本当になんの気兼ねもなく元の関係に戻ることができる。
「奏方、最近は少し元気そうですね」
「え、そうか…?」
「はい」
もしかすると露那が少しでも前と変わっていてくれて嬉しいということが表にも出てしまっているのかもしれない。
「何かあったのですか?」
「いや…実は最近露那がちょっと寛容的になってくれたんだ」
「それが…嬉しいのですか?」
「え?まぁ…」
「そう、ですか…」
姉さんはどこか影のある表情をした。
「姉さん?」
「なんでもありませんよ?」
…多分そんなに変なことは言ってないし、多分俺の杞憂だろうな。
それよりも今日は一大ビッグイベント、優那ちゃんの初コラボ配信というものがある。
今まではソロで活動してきた優那ちゃんだったがそろそろ知名度もそれなりに高くなってきたため、そろそろコラボ活動にも手を伸ばそうと思ったのだろう。
初めてのコラボ配信、優那ちゃんの実際のコミュニケーションの仕方、色々なことが非常に楽しみだ。
「…そうだ」
コラボ相手のこ人のことも少しぐらい知っておかないと見るときに冗談の範囲がわからないかもしれない、どんな人かだけ見ておこう。
「コラボ相手の人の名前が…永生一愛…?」
なんて読むのかが非常にわからない難しい感じの羅列だが、その感じ一つ一つの読み方はわかるので俺はそれを検索にかけてみた。
読み方は
見た目はピンク髪のツインテールであくまでもアバターの話だが見た目も大都会とかにいそうな人の見た目をしている。
「…見た目だけじゃどんな人かなんてわからないし、ちょっと動画を見てみることにしよう」
俺は動画をクリックしようとしたが、その瞬間に優那ちゃんのコラボ配信待機所の通知が来た。
「っ…」
仕方ない、相手の人がどんな人かを事前に調べることができなかったのは残念ではあるが優那ちゃんの配信をみすみす逃すようなことはしたくない。
俺は待機所で配信を待つことにした。
「うわ…!?なんだこれ…!?」
俺は待機所のコメント欄を見て驚愕してしまう。
いつもなら待機所のコメントは「待機!」とか「楽しみ」とかで埋まっているのに、今日はその半分ぐらいが「殺待」で埋まっている。
そして人数もいつもの約3倍ぐらいになっている。
この一愛さんという人のファンの人が来てるっていうのもあるだろうが、普段優那ちゃんを見てなかった人たちも初のコラボ配信は興味を注がれたんだろう。
それにしても…
「なんなんだこれは…」
十中八九一愛さんの所の配信待機の時の決まった用語なんだろうが…殺って感じが入っているのが怖すぎる、一愛さんがどんな人かわからないが今のところ怖い印象しかない、というかなんて読むんだこれ。
「あっ」
そしてとうとういつもの優那ちゃんのオープニング画像が差し込まれた。
優那ちゃんのオープニング画像とは優那ちゃんが笑顔で左手を差し伸べてきている画像のことだ。
なんて天使なんだろうか。
そして…
「こんにちは〜!今日も運命の人に見つけてもらうために頑張りますということで!本日は天城優那、初のコラボ配信です!!」
はぁ、最高だ。
全世界に優那ちゃんをを見せてあげたいな。
「では!早速!ものすごく人気にして、私の大先輩である永生一愛さん!お願いします〜!」
さぁ…第一印象、ファーストインプレッション。
やはりそれは重要なもの、果たしてどんな人なのか…
「どーもー、こんにちはー、永生一愛でーす、よろしくお願いしまーす」
「…え?」
その声は俺の「初のコラボ配信!楽しみすぎる!!」という内心とは裏腹な、全くなんていうか…やる気というものを感じられないほど脱力した声だった。
…別に無理してやる気を作って欲しいわけじゃないけどここまで脱力されるのはそれでそれであまりいい気はしない。
俺はコメント欄の人たちに共感を求めるようにコメント欄に目を移す…が。
「待ってた〜!」
「一愛ちゃん!」
「今日も可愛いよ!」
と言ったコメントが爆速で流れている。
「…え?」
いや…声が可愛いっていうのはまぁ、初見でもわからなくはない。
優那ちゃんの艶のある元気な声とは違う、今にも消え入りそうだがどこか一定の線がある声だ…が。
「はいー!よろしくお願いしますー!」
「はーい」
こんなのが許されるのか!?
こんな適当な…って、いやいや、第一印象だけでそんなに言うのは良くないな、まだこの人がどんな人かも知らないんだ、そうだ、落ち着け…
優那ちゃんの初コラボ配信だからって情緒が不安定になってしまっている。
「今日は!雑談も兼ねてみんなからたくさんもらった質問に答えて行きたいと思います〜」
流石優那ちゃんだ、なんて素晴らしい企画なんだ。
「じゃっ、最初の質問読み上げちゃいますね〜」
「はーい」
「……」
本当に大丈夫なのか…?
今更ながら不安になってきた。
今のところ雑談配信と言ってもこの一愛さんって人が長く話すところが想像できない…
「もし彼氏にするならどんな人ですか、また彼氏ができたら彼氏のことを束縛したいですか、です!」
いきなりこんな感じの話題か…ん?
「ざわ…」
「くるぞ…」
「待機」
「な、なんだ…?」
コメント欄が異様な空気に包まれている。
「一愛さんどうですか〜?」
「彼氏にするなら私より身長が高くて私よりちょっと力が強い人、でも私より精神力はものすごく弱くて簡単に心を折れそうな人、それでいて心が弱いが故に全てを許容してくれる優しさと温かさ、経済力とかはなくてもいいので、とにかく私に一途で居てほしい、あとは世間的にどこからが束縛っていうのかはわかんないけど彼氏ができたらその彼氏専用の部屋を私の家に取り付けてそこに彼氏を一生入れる、もちろん彼氏なら幸せになって欲しいからトイレとかお風呂とかご飯とかも不自由無しで生活できる生活環境を作りつつ、私との時間もいっぱいとってくれる人が…話がループしちゃいそう、まぁ軽くこんな感じー、ですー」
「……」
俺はこの永生一愛という人がどんな人なのかを知らなかった。
このライブ配信の関連動画にはこんなタイトルの動画があった。
『ヤンデレVtuber 永生一愛のヤンデレシーン集』
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