放課後
本日の授業過程が無事終了し、とうとう日が落ちてくる放課後になった。
ここから一人で家へと帰るか、校門で姉さんに待ち伏せされていて姉さんと一緒に帰るかのどっちかだが新学期は忙しいと言っていたため、今日は多分姉さんと一緒に帰ることはできないだろう。
となると一人でしめしめと帰るしかないな。
…今までの俺なら。
「奏くんっ!どこでお話しする?まだお話途中だったよね?やっぱりカフェがいいかな?この辺りのデートスポットは一通り抑えたからどこでも行きたいところ言ってねっ!」
一人で帰ることとおさらばしたと考えれば幸なことかもしれないが、また露那との日々が帰ってくると考えると不幸でしかない。
「デートをしに行くんじゃ無いだろ?」
「え〜、どんな条件でもどうせクリアできるんだから、もう復縁したも同然だって〜、それに復縁なんて言ってるけど私は別れたつもりないけど奏くんが勝手に別れたつもりでいるから、私が合わせてあげてるんだよ?わかってるの?私の気持ち的には今すぐにでも奏くんのことを恋人として軟き……こほっこほっ、恋人としてデートスポットに連れ回してもいいところを、奏くんの拗ねに付き合ってあげてるんだよ?」
「…そう、だな、ありがとう」
同じ言葉を返しても同じことの繰り返しが起きるだけなため、俺から折れることにした。
「うん、良いよ、奏くんの彼女として、そのぐらいのことは看過してあげる」
「だからもう彼女じゃ……」
「それよりっ!どこでお話しする?私は別にここでも良いんだけど、奏くんがここだと困るんでしょ?」
確かにまだ人も多い教室の中で露那とどうしたら復縁するのかなんて話をしたら色々と面倒な噂が流れるに決まってる。
「困るな…」
「じゃあ〜!じゃあ〜!ここなんてどうかな!?」
露那はスマホ画面を俺に見るよう促してきた。
そのスマホ画面に映っていたのはいわゆる猫カフェと呼ばれるものだった。
「ね、猫カフェ…?」
「うんっ!前から奏くんと行きたいと思ってたんだ〜!」
「行きたいと思ってたんだ〜、じゃない!ただただ露那が行きたい場所だろ!そんなの普通のデートと何も変わってないだろ?」
「え〜、一応カフェなんだし静かにお話もできるよ?」
「静かに話せる場所が欲しくてカフェに行くのはわかるがどう考えてもそれは猫カフェじゃない、普通のカフェと猫カフェとじゃ静かに話す場合の価値基準がひっくり返る!」
友達に「勉強するためにカフェに行こう」と言われていざ言ってみたら猫カフェであってみろ…勉強なんてできるわけがない。
「猫ちゃん可愛いのになぁ…奏くんはひどいね…」
「俺だけ悪者扱いするのもやめてくれ?俺は別に猫が嫌いとは一言も言ってない、ただ状況が合わないだけだからな?」
「それって私と今度一緒に行ってくれるって遠回しに言ってくれてるの!?」
「違う!」
おいおい嘘だろ…?
復縁する条件についてこんな風に話が難航するのは覚悟してるけどまさか話す場所を決めるだけでここまで難航するなんて全く考えてなかった、予想外にも程がある。
このまま話してても仕方ない…少し
「も、もういい、また屋上で話そう」
「え、良いの?」
「あぁ」
「…まぁ、大丈夫だよね」
「……」
露那は最後に意味深な一言を残したが、そんな小さなことを気にしていたら本当に話が進まなくなってしまう。
そう思いすぐに露那を連れて屋上へと向かう。
「でっ!復縁の条件は〜?早く言ってよ〜、どうせどんな条件でも等しく変わらないんだから〜」
完全に油断してるな…こっちは元々別れるつもりだったんだ、驚くぐらい難しい条件にする。
ここで俺がどんな難しい条件を出したとしても、こんなに何度もどんな条件でも良いって豪語してるんだ、断るなんてことできないはずだ。
「そうだな…一億円だ!」
もちろんそんな大金なんてあっても仕方ないけど、これは絶対に無理な条件……
「一億円で私と復縁してくれるの?」
「…え?」
「わかったよ〜!現金は厳しいけど、振り込みなら……」
「ちょっと待った!」
俺は焦って止める。
「や、やっぱり無しだ、無し…冗談だよ、はは」
「え〜、焦らさないでよ〜、あと一回だけだからね〜?」
「あ、あぁ、悪かったって…」
…ま、まさか今すぐに一億円を用意する手法を露那が持っているなんて…どんな方法なんだ?
露那がお金を持っているのは付き合ってる時になんとなくわかってたけど、これ程だったとはな…
「で〜?冗談じゃない本当の条件は何〜?」
「……」
露那は完璧超人だ。
身なりも勉強も運動も一部を除いて性格も良い。
それに財政面までしっかりと蓄えられていると来た。
となると…露那一人で完結しないことを条件にすればいい。
そして…復縁する条件で、露那一人で完結しないことなんて…もう一つしか俺には思いつかない。
「────俺に露那のことを好きだって思わせてくれ」
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