朝の日常

「ん、ん〜…」


 俺はゆっくりとベッドから上体を起こし、時計を見てみる。


「朝7時半か…」


 まぁ今から着替えてご飯を食べて学校に向かうにはちょうど良い時間だな。

 俺はいつものように制服に着替え、俺の部屋のある2階からリビングのある1階に向かう。

 因みに俺の住んでる家は一軒家の3階建て、3階は基本的に姉さんの部屋で、両親は近くの別宅に住んでいる。

 分けて住んでいる理由は、姉さんが両親にお願いしたかららしいけど、姉さんは一向になんで分けるようお願いしたのかの理由を教えてくれない。


「…まぁ別に姉さんと2人で住んでて困ることもないから良いんだけど」


 姉さんも俺と比べると本当に俺が惨めになるぐらいの超人で、料理はもちろん家事全般から理系なことまで基本的にはなんでもできる。

 強いて言うなら…


奏方かなた!起きたのですね!」


 待ち望んでいたかのようにそう言うと、姉さんは俺のところまで来たかと思うといきなり抱きついてきた。


「ちょっ…」


 姉さんは無駄にスタイルがいい…主に胸が高校3年生とは思えないほどの大きさをしている。

 兄妹だから全くの他人の人のよりは耐性があるにしてもそれにだって限度がある。

 こんな押し当てるような形で当てられると流石に…


「はぁ…奏方の体温だけが私の生きる意味です…」


「っ…!」


 俺は両腕に力を込めて、姉さんの体をなんとか俺から引き剥がすことに成功した。


「…はっ、すみません、私としたことが…」


 姉さんは少し反省しているようだ。

 …姉さんは高校2年生後期から生徒会長に推薦されていてもういつでも生徒会長になれる状態だが、学校には家庭の事情で忙しいなんていう嘘をついて今現在高校3年生になっている。

 因みに前になんで生徒会長にならないのか本当の理由を聞いてみると「奏斗と過ごせる時間が減ってしまうからに決まってるじゃないですか」と即答していたのを覚えている。


「あ、奏方!見てください、今日は少し自信作です」


 そう言って姉さんはテーブルの上に並べられている料理を自慢げに見せつけた。

 実際に姉さんの料理は美味しいから別に自慢げにされても気分が悪くなったりはしないんだけど…


「ね、姉さん…俺こんなに食べれないんだけど」


「…え?」


 テーブルの上には文字通りたくさんの料理が並べられている。

 ハンバーグ、オムライス、サラダ…等々。

 こんなにもの数の量を一体誰が食べられると言うんだろう。

 きっと大食いチャンピオンでも呼んでこないと不可能な量だ。


「私としたことが…うっかりしていました」


「うっかりでこんなに大量の料理が作れてたまるか!」


「うぅ…仕方ありません」


 そう言いながら姉さんは料理にラップをしていく素振りを見せた。


「…はぁ」


 まぁこういう抜けてるところも姉さんの魅力の一つ…なのかもな。


「奏方、今日の朝ごはんは何が良いですか」


「ハンバーグとサラダで…」


 その後俺はハンバーグとサラダを、姉さんは白ごはんと味噌汁と魚というザ・和食といった感じの料理を食べて洗面所に向かったのち…


「本当は奏方と一緒に登校したいのですが学期の始まりは色々と忙しいので先に登校します…姉がいなくて寂しいのはわかりますが──────」


「寂しくない!何歳だと思ってるんだー!」


 俺はそう叫びながら姉さんのことを玄関から追い出すようにしてドアを閉める。


「…はぁ〜」


 朝から疲れたな…

 登校時間までまだ時間があるな。

 俺はその少しの時間何をするかと考え…


「優那ちゃんの動画を見よう」


 そんな考えに行きつき、すぐにスマホでネットを開いた。


「配信は…やっぱりしてないな」


 優那ちゃんの配信時間は大体夜なため、今配信していなくても特に驚きはしない。

 俺は登校時間までを那優ちゃんの動画を見て癒され、必要なものを手に持って玄関へと向かう。

 因みに言っておきたいことが、俺はオタクと呼ばれるほどVtuber…優那ちゃんににのめり込んでいるわけではないという事だ。

 別にちょっと帰ってから1時間ぐらいのんびりしながら見ているだけだ。

 ちょっと暇があれば見ているだけ…

 ちょっと歯を磨きながら見ているだけ…

 ちょっと眠る前に見ているだけ…

 …重症かもしれないな。


「よし」


 俺は靴を履き、ドアノブを回して家から出て家の鍵を閉めた。

 高校までは一駅電車を乗らなければいけないため、俺は駅へと歩みを進める。


「はぁぁ…」


 危なかった…電車通学というものは一分一秒が重要になってくる。

 一分でも一秒でも遅刻すれば等しくプラス三分程予定より遅れることになるからだ。


「…っ!?え!?」


 俺は咄嗟にそんな声を上げた。

 なぜなら電車待ちの人たちの並びにからだ。


「つ、露那…?え?な、なんでこんなところにいるんだ!?」


 俺は一年前に姉さんの都合で転校しているため、露那がこの駅にいるなんてありえない。

 …でも現実、そこに露那がいる。


「…まさかっ!」


 俺はポケットからスマホを取り出し、すぐに昨日無視した露那からのメールを確認する。

 するとそこには…


『明日…かなくんのところに行くからね…❤︎』


「……」


 俺はそのメッセージを見て、言葉を失ってしまっていた。

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