性別を超える羨ましさ

シヨゥ

第1話

「羨ましいと思う自分が嫌いだって?」

「そうなんだよ」

 宴もたけなわ。酔いを深くした友達が突然自分の嫌いなところを話しだした。

「自分が持っていないものを持っている人を見ると羨ましく思ってしまうんだ」

「それって普通じゃないか?」

「普通なのかな……」

「それを奪ってしまいたいとか思ってないんだろう?」

「そんなこと思わないよ。ただただ羨ましくて、ああなりたいとか、あれが欲しいとか思っちゃうんだよ」

「いいことじゃないか」

「いいこと?」

「周りから素直に刺激を受けて、今の自分を変えたいと思えているっことだろ?」

「……その考え方はなかったな」

 そう言って視線を落として黙り込む。

「羨ましいってことは憧れているってことだ。あとは気持ちに素直になって、憧れに向かって歩き出すだけだろ」

「羨ましいと思うのは憧れているからなのか」

 そう言って額に手を当てて天井を見上げる。

「そうだな。よし、俺、いや私は女を目指すわ」

「……はい?」

 何を言っているのかわからない。

「女の子の着飾ったり、メイクで変身する姿が妙に羨ましくて。だがら私、女を目指すわ」

 押してはいけない背中を押してしまった。

「頑張るわよ~」

 頑張るな。そんなことは言えるはずもなく。

「おっ応」

 せめて彼、いや彼女の第二の人生が幸せであることを願うしかなかった。

 

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性別を超える羨ましさ シヨゥ @Shiyoxu

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