第27話

 俺達は旅を続け、とうとうデストルクシオンが住む城に辿り着く。デストルクシオンの魔力によるものなのか、空はずっと夜の様に暗い状態が続いていた。


 デストルクシオンの城は今まで見てきた城が小屋に見えるぐらい高く、大型の魔物が潜んでいる事は間違いないと容易に想像できるぐらいの広さをしている。中は篝火かがりびによって照らされているが、薄暗く戦いにくい状況だ。


「フィアーナ。俺の後ろに隠れてろ! ──おりゃ!」と、ガイさんが大剣を振り、ゴブリンの首を吹き飛ばす。


「ふぅ……さすがに親玉の城に住む魔物だけあって手強いのが多いな」

「──ガイさん、危ないッ!」


 俺は首が切れているのに動き出すゴブリンをフレイムで焼き払った。


「お、おう……アルウィン、良く気付いたな」

「魔力が抜けきっていなかったので」

「助かった」


 魔力が抜け切っていなかった? ふとしたキッカケでファシナンテの事を思い出す……そういえばあの時、魔力感知をマスターして浮かれて、そこまで気にしていなかったけど、ファシナンテの魔力は抜け切っていたのか……?


 ──まぁでも、ファシナンテといえども顔は灰になっているし、周りの手下もルーカスさん達が全て倒している。少しぐらい生きていたとしても、どうにも出来ないか……。


「アルウィンさん、どうかした? 置いて行かれちゃうよ?」

「あ……いや何でもないです。すみません」


 ※※※


 ──更に城の奥に進むと、民家が一件、収まりそうなぐらい大きな扉の前へと辿り着く。金で装飾までされている赤い扉で、いかにもこの奥に親玉がいますといっている様な重厚感のある扉だ。


「おりゃぁぁぁぁ……」


 扉を開こうとガイさんが頑張るが、ミラータートルを真っ二つにする程の腕力と魔力のガイさんでさえビクともしない。


「はぁ……はぁ……はぁ……ダメだこりゃ……」

「魔法も試してみたけど、弾かれちゃったしね……どうやって開くのかしら?」

「扉の左右にある篝火の横に、壁に掛けてあるガーゴイルの彫刻が気になる。まずはそれを触ってみよう」


 ルーカスさんはそう言って、ガーゴイルの彫刻に近づき──触り始める。


「これ……頭が奥へと押せるようになっているぞ。でも──押しても何も変わらない?」

「反対側にある。もう一つの彫刻も押さないとダメなんじゃないかしら? 私がやってみるね」


 フィアーナさんがガーゴイルの彫刻に近づくと「同時に押すぞ」と、ルーカスさんが声を掛ける。

 

「うん。せー……の……」


 二人が同時にガーゴイルの彫刻の頭を奥に押し込むと、ガシャン! と、鉄の何かが動く音がした。


「──おい、皆。さっき閉じていた鉄格子の扉が開いているぞ」


 ガイさんの声がする方に目を向けると、確かにさっき通った時は閉まっていた鉄格子の扉が開いていた。


「やったぁ。じゃあ、そっちに行ってみよう!」と、フィアーナさんが手を離した瞬間……ガシャン! と、鉄格子の扉が閉まってしまう。


「ずっと押し込んでないと直ぐに扉が閉まってしまうみたいだな。戦力を分断するための罠か……」

「全員にクイックを掛けて、一気に突破しましょうか?」


 俺がそう提案すると、ルーカスさんは首を横に振る。


「いや、距離があり過ぎる。間に合わないだろう」

「じゃあ、どうする?」


 フィアーナさんがルーカスさんに聞くと、ガイさんは腕を組みチラッとフィアーナさんに視線を向ける。だが直ぐに視線を戻して「俺とアルウィンで扉の先に行ってみるよ」


「ルーカス、それでいい?」

「いや……俺とアルウィン君で行ってくるよ」

「どうして?」

「どうしてって……戦力を分断する罠って事は、扉の先には罠が仕掛けられている可能性が高い。アルウィン君は回復の魔法が使えない訳ではないが、少ない。俺もフィアーナに比べれば少ないが、アルウィン君の使えない回復魔法を使えるし、お互いに補えて融通が利くだろ?」


 ガイさんは眉を顰め納得の言っていない表情を浮かべているが「──そうか……」


「じゃあガイ。代わってくれ」

「おう」


 ガイさんはルーカスさんと代わりガーゴイルの彫刻の前に立つ。ルーカスさんはガイさんの肩をポンっと叩いた。


「俺達が扉の奥に進んだら、戻るまで手を離していても大丈夫だと思うから。ここは頼んだぞ」

「分かった。気を付けろよ」

「うん」


 ルーカスさんは俺の顔を見ながら鉄格子の方を指差し歩き出す。俺も合わせて鉄格子の方に向かって歩き出した。

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