第24話

「え……どういうこと? ルーカス、説明して」と、フィアーナさんは精霊石を手に取る前に、驚きを隠せないまま、ルーカスさんに質問をする。


「今まで精霊との契約を続けてきて、フィアーナは光の精霊としか契約できなかっただろ? それを疑問に思って、旅を続けていく中で色々な魔法使いに話を聞いてみたんだ。そうしたら、中には一つの属性に特化した魔法使いもいて、そういう人は上位精霊との契約も上手くいきやすいって聞いて、もしかして……って、思ってね」

「じゃあ……」

「うん。アルウィン君にも試して欲しかったけど、フィアーナに上位精霊との契約を試して欲しくてここに来たんだ」


 ルーカスさんの優しさに触れ、フィアーナさんは思わず涙が出てしまった様で、指でグイっと涙を拭う。


 そして、嬉しそうに笑顔を見せると「ルーカス……ありがとう!」


「どう致しまして」

 

 ルーカスさん、他の精霊との契約を出来なかったフィアーナさんの悲しそうな表情をちゃんと見逃さずに見ていたんだな……。


 フィアーナさんは精霊石を回収すると、魔法の鞄にしまう。それを確認してからルーカスさんは口を開いた。


「さぁて、次の目的地だけど……俺達は数え切れないぐらいの魔物を倒し、強くなってきた……そろそろデストルクシオンの城に乗り込もうと思うのだが……どうかな?」


 フィアーナさんとガイさんは顔を見合わせてから、ルーカスさんの方に顔を向け、黙って頷く。それを見た後、ルーカスさんは俺の方に顔を向けた。


「俺も大丈夫です」

「よし! じゃあ、行こう!」


 ルーカスさんは珍しく熱くなっている様で、拳を天に突き上げる。そんなルーカスさんの気持ちにつられる様に俺達も一緒に拳を突き上げた。皆がお互いの顔を見ながら笑顔を見せる。


 いよいよか……長く旅を続け、皆とは随分と仲良くなれただけに終わりが近づくのは、ちょっぴり寂しく思う。でも、俺はその先に向かう事に興奮している様で、ドキドキと胸を高鳴らせていた。


 ルーカスさんは拳を下ろすと、フィアーナさんと一緒に歩き始める。俺とガイさんは後に続いた。


「──ところでガイさんは何故、ルーカスさん達と旅を始めようと思ったんですか?」

「どうしたんだ急に?」

「いえ、これで最後かと思ったら疑問に思いまして」

「なるほど。そうだな……単純に惚れちまったんだよ」

「え? フィアーナさんにですか?」


 俺がからかう様にそう言うと、ガイさんは分かりやすく顔を赤く染め、フィアーナさんにチラッ、チラッと視線を向ける。


「ばっ、そんなんじゃねぇよ! こいつ等の旅の理由を聞いて、感心しただけだ。俺は昔、とある傭兵団の団長をやっていたんだが……その時は善悪関係なく金が一番で、汚ねぇ仕事もやってたからよぉ……」


 ガイさんは腕を組みながら、昔話をしてくれる──。


「そんなある日に、フィアーナとルーカスが魔物にやられて全滅しかかっていた俺達の事を何の見返りもなく助けてくれて……ふと旅の理由を聞いたら、デストルクシオンを倒して平和を取り戻すって言うもんだから、若いこいつ等が頑張っているのに俺は何をしているんだって恥ずかしく思ってな、その場で仲間にしてくれないかと頼んだ訳だ」

「へぇー……そんな事があったんですね」

「まぁ……あの頃の俺達はまだ若かったからな。正直、いまは復讐の気持ちの方が強くなってしまったよ」


 ルーカスさんは俺達の話を聞いていた様で、背中を向けたまま会話に参加する。


「ルーカス、お前……それでもデストルクシオンを倒して平和を取り戻したい気持ちは変わらないんだろ?」

「あぁ……もちろん!」

「だったら俺はお前たちを尊敬しているよ」

「──ガイ、ありがとう」

「へへ、別に俺は何もしてねぇよ」


 温かいなぁ、もう……俺はさりげない優しさが飛び交う、このパーティが大好きだ。俺はそう思いながら、ルーカスさんの背中を見つめていた。

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