第23話

 更に旅を続け、いま俺達はデストルクシオンが居る大陸に一番近い島にあるテーレという名前の町に居る。大地との精霊を済ませて、ルーカスさんと一緒に契約で貰った精霊石を宝石屋で加工して貰っている所だ。


「これで四大精霊、全てと契約を出来たな。凄いじゃないかアルウィン君!」

「いやぁ……そんな事はないですよ」

「謙遜するなって、器用に色々な精霊と契約できる人って、そうはいないんだぞ」

「え? そうなんですか?」

「うん。俺は火と水に加えて氷の精霊とは契約できたけど、風と土は出来ていなかっただろ? そんなもんなんだよ、実際」

「へぇー……そう聞くと何だか嬉しいな」


 ──俺達が雑談をして待っていると、「はい、出来たよ」と、宝石屋の店主が銀色の指輪を4つと、ペンダントを1つカウンターに置く。


「ありがとうございます」


 ルーカスさんは指輪を3つ取り、俺は指輪を1つとペンダントを手に取った。ルーカスさんは指輪を右手の人差し指、中指、そして左の中指につける。


 俺は……氷の精霊石が付いた指輪を左の親指につけ、火、水、土、風の精霊石が十字に並ぶように加工して貰ったペンダントを身に付けた。


「よし、じゃあ行こうか」

「はい」


 俺達は宝石屋の店主に料金を払い、余った精霊石を受け取ると、店の外に出た──ルーカスさんは店の前で立ち止まると「なぁ、アルウィン君」と話しかけてくる。


「はい」

「アルウィン君はフィアーナのことをどう思う?」

「え? どう思うって……? えっと──面倒見のいい可愛いお姉さんって感じ? ですかね……」


 俺がそう答えると、何故かルーカスさんは腹を抱えて笑いだす。


「ごめん、ごめん。言い方が悪かった。フィアーナが光の精霊としか契約できない事に、どう思っているかを聞きたかったんだ」

「あぁ……そういう事ですか。確かに不思議ですよね。あれだけの魔力を持っていながら、どの精霊も契約できないだなんて……」


「相性ってだけで片付けてしまっていたけど、どうも何か引っ掛かるんだよな……前に聞いた話が本当ならば試しに──」と、ルーカスさんが言い掛けたところで、買い物をしてくれていたフィアーナさんとガイさんが、戻ってくる。


 フィアーナさんは俺達に向かって手を振りながら「おーい、ルーカス。頼まれていた物、全部あったよ」


「おぉ、それは良かった。ありがとう」

「次は何処に向かうの? ルーカス」

「次は──光の精霊と契約を結びに行こう」

「え? それだと戻ることになるよ?」

「うん。順番を考えずに行動して悪かったが、アルウィン君はまだ契約をしていないからね。試したいんだ」

「そっか、光の精霊の魔法は強力だからね。戦力アップには欠かせないよね」

「そういう事。じゃあ、船着き場に向かおう」


 ──こうして俺達は船に乗り、光の精霊との契約を結ぶため祠へ向かった。祠は険しい山の頂上にあり、祠は白いレンガを敷き詰めただけのシンプルな作りなのに、神々しさを感じる雰囲気があった。


 確かに水の祠と似たような雰囲気があり、正面に女神像があって、女神像の前には祭壇らしきものが置かれ、その上に水晶玉が置かれていた。


「さて……まずはアルウィン君が試してみてくれ」


 ルーカスさんがそう言うので、俺は水晶玉に近づく。まずは? 俺以外はもう試しているんじゃ? と疑問を抱きながらも、水晶玉に手をかざす──だけど、水晶玉は光らなかった。


「ダメだったようだね」

「すみません。無駄足させて……」


 それを聞いて、ルーカスさんは「無駄足だなんて思っていないよ」と言ってくれた。


「次は……フィアーナ。君が試してみてくれ」

「え? 私? 私はもう契約が済んでいるじゃない」

「良いから、試してみてくれ」

「──分かった」


 フィアーナさんは眉を顰めながらも、水晶玉に向かって歩き出す──水晶玉の前で立ち止まると、黙って手をかざした──すると水晶玉が眩いばかりの光を放つ。


「ちょ……どうなってるの?」


 あまりに眩しくて俺は目を閉じる──少しして、そろそろ大丈夫かと目を開けると、フィアーナさんの前にはパールの様に光り輝いた精霊石が浮いていた。

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