第21話
俺達は無事に船に乗り、次の大陸を目指す──俺はいま、潮風に吹かれながら、甲板で、さっき買った魔法の鞄について考えていた。
「こんなところで一人で何をしているんだい?」と、後ろから話しかけてきたのはルーカスさんだった。俺は後ろを振り向き、ルーカスさんの方に体を向ける。
「さっき買った魔法の鞄ってどんな仕組みなんだろ? って考えいたんです」
「あぁ、あれは鞄に物を入れると、小さくなる魔法が掛けられているんだよ」
「魔法と聞くと何でもありな感じで、納得は出来ますけど、物に魔法を留めておくなんて凄い技術ですよね……俺には出来ません」
「確かに俺にも出来ない。マジック・ウォーターに魔訳の実……変化の杖など様々な魔法道具は存在するけど、それを作り出せる魔法使いは、元からその才能を持っている人に限られる。そんな中、遥か昔に永遠の命を与える賢者の石を作り出した人もいたと言うが……流石にそこまでは本当かどうか……」
「賢者の石か……」
そういえばファシナンテは魔法石の事を賢者の石の出来損ないと言っていた……だとすると、魔法石は人が作ったものなのか? その可能性もあるとは思うけど……まぁ、今ここで考えていても、答えは出ないか。
「──ところでルーカスさん、次の大陸には何をしに行くんですか?」
「水の祠に行って、水の精霊との契約を結ぶつもりだよ。そういえばアルウィン君は、精霊との契約は?」
「いえ、まだです」
「そう。じゃあ、俺と一緒に契約をしてみよう」
「それは良いですが、俺の魔力で足りるでしょうか?」
「大丈夫だよ。後は相性だけだな」
「なら良いですが……魔力との相性だけはどうしようもないですからね」
「そうだな」
──こうして俺達は大陸に着くと、街で情報収集をしてから、水の祠へと向かった。
「ここが水の祠……」
見掛けは自然に出来た浅い洞窟といった感じだ。でも手入れが行き届いているようで、篝火が点いていて、薄暗いけど周りがちゃんと見える様になっている。正面に女神像があって、その後ろには滝の様に水が流れている。女神像の前には祭壇らしきものが置かれていて、その上に水晶玉が置かれていた。
「こんな狭い所で、どうやって戦うんです?」と俺が質問しながら足を止めると、ルーカスさんは俺を追い越し、水晶玉の前で足を止める。
「契約は魔力を精霊に捧げて更に強力な属性魔法を放てるようにしてもらうだけで、従わせて召喚する訳じゃないから、戦う必要はないよ。俺がやってみるから見ていてくれ」
「はい、分かりました」
ルーカスさんは水晶玉に片手をかざし、数秒間うごかずに待つ。すると、水晶玉が青く光りだした。
「どうやら受け入れてくれた様だ」
ルーカスさんがそう言うと、突如、ルーカスさんの前に小さな青い石が現れる。ルーカスさんはそれを手に取ると、こちらを向いた。
「え? 契約ってこれだけですか?」
「うん。精霊は恥ずかしがり屋なのか姿を見せてはくれないが、契約の証として、こうして精霊石を契約者にくれる。あとはこれを宝石屋に渡して、俺やフィアーナみたいに指輪などの装飾品に付けて貰えばいい」
「失敗したら、どうなるんです?」
「ふふ……そんなに心配しなくて大丈夫だよ。水晶玉が光らないだけだ」
「そうなんですね……他の精霊との契約もこんな感じなんですか?」
「まだ光の精霊としか契約をしていないから、全部かどうかは分からないけど、その時は同じだったよ」
「分かりました」
「じゃあ早速、やってみるといい」
「はい……」
俺は緊張しながらも、ゆっくり前に進み水晶玉の前で足を止める。水晶玉に手をかざすと、目をソッと閉じた。
「──ほら、成功したじゃないか」
ルーカスさんの声が聞こえ、俺は目を開ける。目の前にはルーカスさんと同じ小さな青い精霊石が浮いていた。俺は精霊石を回収すると後ろを振り向く。
「やりました!」
「だから言っただろ? 大丈夫だって」
「はい! ところでこれを別の人に渡した場合はどうなるんです?」
「どうにもならないよ。それは契約の証、契約を結んだ人にしか反応しない様にちゃんとなっているんだ」
「へぇー……」
俺は喜びを隠せないまま、笑みを零して水晶玉の前から離れた──次にフィアーナさんとガイさんが続き、試してみる。二人の結果は──。
「ダメだった……」
「ガッハッハッハッハ。フィアーナ、気にするなよ。俺なんて光もダメだったんだぞ」
「──うん……」
「──さて……次に行こうか」
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