第20話
港町に到着すると俺達は真っすぐ歩き続ける。王都より民家は少ないが、露店が多く、所々で物売りの声が聞こえてきて活気に溢れている。露店の品揃いをみると、さすが港町と思う程、なかなか見慣れないものを置かれていて、何だかウキウキしてきた。
「ルーカスさん、どこに向かってるんですか?」
「まとまった金が手に入ったから、ちょっと武器屋でも覗こうかと思ってる。どこか行きたい所でもあるのかい?」
「いえ、そういう訳ではないです」
「そう」
──数分歩くと、俺達は武器屋と防具屋の看板がついた店を見つけて中に入る。
「好きに見て回って良いぞ」
「分かりました」
ルーカスさんとフィアーナさんは並んで歩き出し、俺とガイさんは別々に見て回る──へぇー……装飾品も充実しているな。
ふと視線を移すと、楽しそうに歩いているルーカスさんとフィアーナさんが目に入る。そのまま二人を見ていると、可愛い女性向けの装飾品が並ぶ棚の前で止まった。
ルーカスさんは棚から紫色の蝶の形をした髪飾りを手に取ると、サラッとフィアーナさんの髪の所に持ってくる。
「フィアーナも、こういうの付ければ良いのに。もし良ければ買ってやるぞ?」
「えー……私にこんな可愛いの似合わないよ」
「そうかな? 普通に似合うと思うけど」
「んー……髪飾りを買うぐらいなら、そっちの魔法の鞄を買おうよ! その方が皆の装備や回復アイテムが沢山はいって便利じゃない?」
「そりゃ、そうだけど……たまには贅沢を言ったって良いのに謙虚な奴だな」
ルーカスさんは髪飾りを商品棚に戻すと、魔法の鞄を持って、またフィアーナさんと一緒に歩き出す。え? え? 二人ってそういう関係なの?
一人でドキドキしながら二人を見送っていると、突然、後ろからポンっと肩に手を乗せられビックリする。視線を向けると、手を乗せたのはガイさんだった。
「あの二人、仲が良いだろ?」
「えぇ、ビックリするぐらい」
「幼馴染なんだよ」
「あぁ……そういう事……」
「ちょっと羨ましいよな」
ガイさんはボソッとそう言って、俺から手を離す。羨ましい? そういえばガイさんって、フィアーナさんに対して、好きな女の子に構って欲しくてちょっかいを出す男の子みたいな接し方をする時があるよな。それってもしかして──。
「ガイさんって……フィアーナさんに気があるんですか?」
「ばっ……馬鹿いっちゃいけねぇよ! 誰があんなチンチクリン……」
ガイさんはそれだけ言って、そそくさと俺から離れていった。きっと図星を指されて恥ずかしくなったのだろう。なんて分かりやすい人なんだ……。
勇者パーティの恋愛事情が垣間みられたのは良いとして、果たしてこの先、どうなる事やら……色々な意味でドキドキだな。
──買い物を終えたフィアーナさんとルーカスさんが近づいて来て、「おーい。アルウィン君、ガイ。そろそろ店を出ようと思うが、何か買いたいものはあったかい? あるならお金を渡すから買って来ると良い」と、ルーカスさんが話しかけてくる。
「俺は大丈夫です」
「俺も」
「そう。じゃあ船着き場に行こうか」
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