第18話
「アース・ロック!」
俺はファシナンテを岩石で覆い、閉じ込める。
「小賢しい真似をしてくれるねぇ! こんなもので私を足止め出来ると思っているのかい!?」
思っている! アース・ロックは本来、自分や味方に掛けて防御する魔法。魔法攻撃には弱いが、直接攻撃に対しては割と持つ。
「すぐにぶっ壊してお前の腹を引き裂いてやるからなッ!!」
ファシナンテは安いハッタリをかましているが、魔法攻撃のないこいつは直ぐには出て来られないだろう。
「ふ……」
「何が可笑しい?」
「醜いな……こんな醜い奴に、攻撃できなかったなんて、情けなくて笑っちまったんだよ」
「あぁん! 誰が醜いだってぇ!! 私はあらゆる美しい女からパーツを頂いて来た! 醜いなんて有り得ねぇんだよッ!!」
「はぁ……」
俺は溜め息をつき、ゆっくりとファシナンテに近づきながら「太陽の様に燃え盛る熱き炎よ。槍のように邪悪なものを貫き、暗闇を照らせ!!」と、炎で出来た槍を右手に作り上げた。
ファシナンテがアース・ロックを壊して姿を現す。エマ王女の姿でいれば俺が攻撃をして来ないとでも思っているのか、マジック・シールドどころか防御すらしていない。甘いな。
「ソール・ランスッ!!!」
魔力感知をマスターした俺は、禍々しい魔力を発するファシナンテの顔面に躊躇いもなく思いっきり突き刺した──炎の槍は骨さえ灰にして、一瞬に美しかったファシナンテの顔を跡形もない状態にする。
「バーカァ……醜いのは姿じゃなく、てめぇの心だよ」
炎の槍の炎がファシナンテのレオタードに燃え移り、ファシナンテが倒れると同時に、魔法石が俺の方へと転がってくる。
俺はそれを回収し、ローブにしまう。後ろを振り返ると、フィアーナさんが真っ先に駆け寄ってきてくれた。
「アルウィンさん、怪我は大丈夫?」
「えぇ。腕にかすり傷を負ってピリピリするぐらいです」
「それでも治しておいた方が良いよ」
フィアーナさんはそう言って、一人の状態異常を回復してくれるキュアの魔法を掛けてくれる。スゥー……っと腕の違和感が無くなっていく。
「ありがとうございます」
「うん」
「こっちも片付いた。さぁ帰ろう」
ルーカスさんはそう言って、剣を鞘に収める。
「はい!」
──こうして俺達は洞窟を無事に脱出して、村へと帰った。村長たちは心配してくれていた様で、村の入り口で待っていてくれた。
「おぉ! 皆、無事に帰ってきたか!」
「ご心配おかけしました」
ルーカスさんはそう答え、村長の前で足を止める。
「それで、魔物の方はどうだったのかね?」
「お陰様で無事に片付ける事が出来ました」
村長はそれを聞いて満面な笑みで「そうかい、そうかい。ありがとうございます。疲れたでしょう? 宿の方は既に準備させておりますので、どうか泊って行ってください」
「お気遣い、ありがとうございます」
俺達はルーカスさんと一緒に頭を下げる。村人たちも村長と一緒に俺達に向かって頭を下げた──。
村長は顔を上げると村の奥に向かって歩き出す。俺達も後に続いた。
「明日のご予定は?」と、村長が聞いてきて、「明日は朝に村を出て、北の洞窟を抜けて港町に向かいます」と、ルーカスさんが返事をする。
「それならば洞窟前まで馬車で御送りします。その時に報酬を御渡ししますね」
「何から何までありがとうございます」
「いえいえ、当然のことをしているだけですよ」
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