第15話
何でこんな夜中に御連れもなく一人で居るんだ? 何か引っ掛かる……この辺の魔物の事を考えると、魔物がメタルフォーゼで化けているとか? 可能性はありそうだ。だったら──。
俺はエマ王女が俺の前で止まったところで「エマ王女。御連れもなく、どうされたんですか?」
さぁ、どう答える。メタルフォーゼは姿を変えられても、声までも真似は出来ない。直ぐにバレるぞ。
「アルウィン様にどうしても早くお伝えしなければならない事がありまして。連れの方は夜中ですし、ゾロゾロ連れてきて村の方々に迷惑をお掛けしてはいけないと思い、外で待たせてあります」
間違いない……エマ王女の声だ。じゃあ目の前にいるのは本物?
「なるほど、そうでしたか。伝えたい事とは?」
「アルウィン様。魔法石を貸してください」
「魔法石を?」
──魔法石の事を知っているのは、モーリエ師匠とエマ王女だけ……それ以外の人に話してはいない。ってことは……本物だから貸しても大丈夫だよな? 俺は違和感が残っているもののローブから魔法石を取り出すと、エマ王女の前に差し出した。
エマ王女は俺の手から奪う様に魔法石を回収すると、まるで初めて魔法石を見るかのように親指と人差し指で挟みながら見つめ、後ずさりを始める。
「クックっクックッ……こんなにも簡単に手に入るとはねぇ。あんた魔力感知の能力がないのね。無能で助かるわぁ」
エマ王女に化けていた女から明らかに違う声がする。
「お前は誰だ……!? 何故、エマ王女の声が出せる……?」
「ふふふ、良い表情ね。特別に教えてあげる♪ 私はね、自分の体を色々と改良ことが出来るの。声さえ知っていれば、真似する事なんて容易いのよ」
「クッ……なんで俺が魔法石を持っている事を知っていたんだ!?」
「そんなの簡単。ピエールの時に戦いを監視させていた魔物に聞いたのよ」
ピエールを倒したときに居た悪魔のような羽を生やした魔物か!? 戦いに集中していて、監視までされていたなんて気づかなかった……って事は──。
「俺が魔法石を持っていた事は、魔物たちに伝わっているのか!?」
「ふふ……安心しなさい。そうなると私が不利になるから殺しておいたわ」
不幸中の幸いってやつか……だったらこいつを殺して、魔法石を取り戻せばッ! 俺は魔法を唱えようと右手を前に突き出す。突き出した──が、唱える事が出来なかった。相手はその理由を瞬時に読み取った様で、ニヤァっと不気味な笑みを浮かべる。
「──イリュージョン・ミスト」
俺がまごついている間に魔法を唱えられてしまい、辺りは濃い霧に包まれ視界を奪われてしまう。
「お嬢さん、良い仕事してくれたね。約束通り、あなたのパーツ《身体》は奪わないであげる! じゃあね♪」
「待てッ!」
俺は化けていた女が居た場所に駆け寄り、霧を手で払うけど全く当たらない。そんな事をしている間に霧が徐々に晴れていく──。
「やっちまった……」
──って、呆けてる場合じゃない! 魔法石を使われる前に直ぐに追わないとッ!!
イリュージョン・ミストは姿をくらますために使う魔法。瞬間移動系ではない。だから奴はまだこの辺に居るはずだ。でも闇雲に探しても、どんどんと逃げられてしまう。どうする……? とにかく些細な事でも情報が欲しい。
「アルウィン様、申し訳ございません!!」
赤いロングヘアの女性は俺に駆け寄ると、頭を深々と下げる。
「いえ……それより、あいつの事で何か分かる事はありませんか?」
「先ほどはエマ王女様の姿をしていましたが、本当は赤い角を二本、頭から生やし、薄紫の肌に腰まである長い白髪の女性の形をした魔物で、女性でも虜にしそうなぐらい美しい顔立ちをしています」
赤いロングヘアの女性は体を小刻みに震わせながら「二日前に突如、私の前に現れて、私の身体が欲しいと言ってきたので様々な女性を殺して、自分の体に移植してきたのかと……」
二日前……確か村長も二日前に魔物が洞窟に棲みついたって言っていた。偶然? 魔物は自分と似たような系統と、行動を共にする傾向はある。だとすると──。
「アルウィン様、どちらへ!?」
俺は東の洞窟に向かって走り出す。本当なら一旦戻ってルーカスさん達に助けを求める方が賢明のかもしれないが……俺の為に迷惑を掛ける訳にはいかないし、一刻も早く取り戻したい!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます