第5話 猫に小判



 セレナから手当を受けた吾輩は、数日が経ちすっかりと体調を回復させていた。


 もう変な技は使いません。


 いい年こいて恥ずかしいので。


 俺の黒猫歴史にまた、一ページ。


 治らなかったら勘弁な!


 セレナと生活を始めて二ヶ月と、時が進むのが早い。


 思えば、俺はいつも死にかけて助けられるを繰り返し、今の自分がいる。


 セレナのことも何か手助けは出来ないものか……


 「仕事をするニャン!」


 前世で引きこもりニート孤独死野郎は、自発的に働きたいと願い始めた。


 でも何をしようか?


 芸がある訳でも無ければ、磨き上げたスキルもない、こればかりは、転生前や転生後も変わることのない現実である。


 そこで、ある閃きが脳に電流を走らせる。


 「吾輩は喋れるのだから、相談相手になれるニャン!」


 いや、無理か。


 俺はこの世界では、死神の使者だと虐げられている身分ゆえ、下手に人と会話するのも難しい状況だ。


 考えるだけでも頭が痛い。


 猫に小判とはよく聞くが、文字通りお金を稼ぐ力も持たない非力な黒猫なのである。


 「黒猫さん、ご飯が出来たわよ〜! 一緒に食べましょ?」


 「うぉぉ! ご飯ニャン! ニュールかニャン?」


 


 暖かくセレナと食卓を囲むことも俺にとっては今、一番の幸せです。


 転生した猫である。


 吾輩はお金を稼ぐ方法を考えている途中である。


 死にかけの吾輩を拾ってくれたセレナといつまでも幸せでいる為に今を生きている













             ーーーー黒猫である。



 


 

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