第10話 エラー:肉体の正常な情報取得に失敗しました

登場人物

―ウォーロード/ヌレットナール・ニーグ…PGGのゴースト・ガード、単独行動の青年。



計測不能:不明な領域


 過去の思い出に蹂躙され尽くした心を再編成し、ヌレットナール・ニーグは彼が何故ギャラクティック・ガード達にウォーロードと呼ばれているのか、その由来をここに見せるに至った。すなわち彼は激烈に戦い、畏怖される存在なのだ。

 一匹狼でありながら戦いが始まれば彼はかつてと同じ、あるいはそれ以上によく戦う。

 目の前の変化は時空から得体の知れない何かを絞り出し始めた。どろりとした何かが滴るようにして落下し、それらは異常な振る舞いを見せ続ける怪物であった。

 それらは正常な情報の取得に失敗していたらしかった。何らかの異常、この地における時空間の異常のせいか、あるいはそれらが抱える何かしらの問題のせいか、物理法則及びその結果として存在するはずの原子達が誤っていた。

 スキャンの結果それらは本来『こうあるべき姿』はもっと小さく、様々なエネルギー解析の結果本来は四肢を備えて頭部も存在している輪郭がHUD上では補助的に表示されていた。

 しかし『原子がそこに存在してその結果このような姿を形作っている』という情報に異常が発生したのか、『こうあるべき姿』の輪郭通りに肉体が存在していないため、例えば腕が細長く伸び、各々の指はそれと同じぐらい長かった。

 脚がグロテスクに脈打つ事で歩行しており、顔は下顎らしきものが突き出たり引っ込んだりして、眼球も同様の振る舞いを見せ続けていた。頭部の上部分は顔から離れて浮かびながらその位置で固定されており、顔が動けばそれに合わせて延長線上の頭部も連動した。

 そのような怪物どもであり、とにかく言葉らしきものを発したもののそれすら異常である事がわかり、事実としてはそれらが発した音声が正常に反映されず、被弾した戦闘艦内部の破壊音に似た悲鳴のような何かを上げていた。

 つまりそれらは何かしらの狂った悪意に支配されてウォーロード目掛けて接近していた。

 彼はそれらに対して警告を発したが、あらゆる言語による警告は全く聴こえておらず、明白な悪意が返されるのみであった。そのためウォーロードは後退しながらプラズマ兵器を使用した。発射されたそれは信じられないぐらいに輝きながら敵の一体に到達した。

 原子レベルで物体を引き裂く超高温のプラズマがその温度を保ったまま到達したため、当然期待されていた効果が起きるはずであった。しかし対象は原子の配列の正常な情報取得に失敗しており、原子では無い何かが配置されていた。

 だが超高温という現象はそれには一応効果があったらしく、即死ではなかったが苦しんでいた――五〇フィート程に引き伸ばされた各部位が乱舞して周囲を貫通したりしていた。やはり異常だ。

 とは言えそれには実際の害があり、不意にアーマーへと激突した際にそれはシールドを減少させた。そのためヌレットナールは回避せねばならなくなり、ほとんど瞬間移動のような速さでその肉体をあちこちに荒ぶらせる紐状の怪物の、攻撃に対する『反応』をすうっと躱した。

 聴覚への拷問じみた悍しい悲鳴の中で、ウォーロードは攻撃を受けた個体に反応して高速で動き始めた他の個体にも対処しなければならなくなった。

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