第9話 女騎士に昼間こっぴどく叱られ、夜には逆転してみたい
「卿、何度言えば分かるんだ! 何故一人突出してあのゴブリンを追った!? あの森のゴブリンは狡猾だから罠をかけていると言ったはずだ!」
付近の森へのゴブリン退治。
いつもは衛兵隊と付近の狩人で対処するはずのお仕事でしたが、念のためにと騎士数名が同行しました。
そこでの仕事は上手くいって小鬼たちを追い払えたものの、一匹は肝をつぶして逃げていき増したが、その方向には村があります。
とっさに追いかけたところ、ゴブリンのしかけた粗末な落とし穴にはまってしまい、危うく底まで落ちるところをどうにか留まりましたが結果はご覧の通り。
「しかもあの村の方角には別動隊が既に守りを固めていると説明したではないか! いいか、同じ騎士団員とはいえ私が先達、しかも今回の任務では私が指揮だ! 命令不服従とみなしてもいいのだぞ!」
ものすごい剣幕で、顔を真っ赤にして𠮟りつける勢いは止まりません。
お説教に熱が入るあまりに潤んだ眼は、はたしてそのせいだけなのか……今はまだ、分かりません。
わかったのは、戻って、その夜の事です。
*****
夜になり、さすがに反省したあなたはありのまま騎士団長へ報告し、罰則こそ受けませんでしたがそこでも叱られました。
猛省とともに一人寝をしようとしたら、宿舎の灯が落とされてウトウトと寝入りかけた夜半、とんとんと控えめなノックが聴こえました。
そこにいたのは昼間とはうってかわって、何だか浮かない顔のフラン=ノエル。
とりあえず室内に招き入れて訊いてみると。
「そ、その、だな……昼間は……すまない、言い過ぎてしまった。で、でもな……私にも、しめしという、のが、あってだな……。それに、今思えば……私でも、村の方角にヤツが逃げたのなら、追ったと思う。お前が先に行ったから制止できただけで……」
つたない言葉、ばつの悪そうな顔、そしてほんのり上気し赤らんだ顔。
頬にかかる髪のひとすじを指先で払ってあげると、びくり、と体が震えました。
“いや……俺こそすまなかった。頭では俺も判っていたのに、つい、とっさに体が……”
弁解しようと思ったところで、耐えられず――――先に、体が動きます。
「っ! や、ちょっ……ん゛っ……ふ、ぷふっ……んぁっ……♡ は……♡ い、いきなり……何を……」
ぴたりと合わさった唇は、緊張なのか、少し乾いていました。
その折り目ひとつひとつを解きほぐすように塞いで波立たせるようにして潤わせると、彼女の伏せていた目に、とろんと涙が滲みました。
――――さて、そこから先はどうなったのか。
古今東西、仲直りなんてこんなもの。
お二人の“仲直り”は、朝の鳥が目を覚ましたころ、ようやく落ち着きましたと。
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