第13話 ガチでやばい俺のファン
聞いてしまった。
なんで、
せっかく、こいつは今まで大人しくしていたのに。
こいつは石の
どうしよう、やっぱナシって言う?
いやまて、それだと俺が、こいつにびびってるって認めることに……
「阿久津くん」
「うわっ!?」
俺が自分の言葉にあわくっている間に、碇は目の前に迫ってきていた。
近い。なんだこの雰囲気。
「デスバ島の感想……大きな声では言えないけど」
「お、おう」
碇はうつむいて、言葉を
そして次の一言は――
「すっごくすっごく面白かった」
「……!?」
本当に?
あんなに、変な本の読み方をするやつが?
「なんでだよ。面白かったなら、なんで大きな声じゃ言えないんだよ」
「だって……」
碇は周囲をキョロキョロと見回す。
「他に誰もいない。言えよ」
俺は、信じられない想いで碇を促す。碇は小さな口を開いた。
「……うん。友情の
やばい……
「すごい点は3つ。1つは、はずれ武器であるゴムボール。ギャグ要素に見せて、最弱のあれが最強の敵を
やばいって……
「でもこれは、かなり怖いことだよね。だって、瑞樹が生き残って最後に誰かと二人になったときに『実は麻友子は生きてる。麻友子を始末しに行って、このゲームを終わりにしよう』ともう一人に言ったら、麻友子は殺されるしかない。瑞樹の裏切りは察知できないし、手持ちの武器はゴムボールだけだからね。つまり、瑞樹も麻友子も、お互いを信じてないとこの結末は起きないんだ。だからそういう意味で、この物語はただのエログロデスゲームにとどまらず、
無限に……
無限に聞いてられる……!
ずっと、ずっと聞いていたい……!
「あ……ごめん、作者に感想を聞いてもらえるなんて初めてで、嬉しくて」
「やめるなよ」
「え?」
「もっと……もっと、
「え、いいの? ずっと喋っちゃうよ、僕?」
「いいんだよ。ずっと喋れよ。もっと、もっと褒めろ」
俺は、涙を
そういうことに、こいつは
「あ、うん、じゃあ遠慮なく。瑞樹の武器がリボルバー拳銃っていうのもいいよね。弾が6発っていうのがすごくわかりやすくて、同時に1発消費するごとに追い詰められてる感がすごい。もしこれ、スナイパーライフルとかサブマシンガンとかにしたら、この話の緊張感が弱まると思うんだ。作り物感も出てくるというか。でもリボルバー拳銃なら、重さも1キログラム程度らしいし、女の子が隠しながら持ち運ぶのにも適してる。そう、それに、瑞樹が自分の武器を知られないように頑張るのもいいね。
そうなのか?
そんなにすごかったのか、俺……!?
掃除時間の終了を告げるチャイムが鳴った。
碇は「初めて、掃除をサボったよ」と照れくさそうに言った。
こいつは俺の話のすごさを、語らずにはいられなかったのだ。
俺はこいつに、初めて掃除をサボらせた。
俺の作品は、それだけのパワーがあった!
帰りのホームルームで、俺は思い出し笑いをかみ殺すのに必死だった。
志築が、
すまん、志築。
お前に迷惑をかけたデスバ島だが、そういうのだけじゃなく、面白かったらしいんだ。
だから俺は書く。書き続けようと思う。
もう読んでくれないだろうけど……
もし面白いのが書けたら、少しでいいから見直してほしい。
ホームルームが終わると、俺は、降り出していた雨の中を急いで家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます