第8話 魔法
「もう時期、19時になるね。」
「そろそろ向かおうかしら。」
あ、今日は大学受験の日だったな。親が心配しているだろう。行方不明の届出が出ているかもしれない。全寮制なんて嫌だったから行くつもりもなかったが、こうなってみると受験だけはしておきたかった。
未練?いや、今まで勉強してきた成果が見たかっただけかもしれない。
「18時30分ね。」
「じゃあ、あなた灯を点けてくださる?」
「ここは意思が充満しているので、触媒があれば、長い間灯りが灯っているから。」
もはや幼女とは思っていないその娘から、長めのワンドを手渡された。
「そうね、恥ずかしくなければ、呪文と共に魔法を発動すれば、スムーズに灯を灯すことができるわ。」
「明かりよ。この手の中に集まりそしてこの世界を照らし出せ!ライト!」
「はい、どうぞ!」
うわっ。めっちゃ恥ずかしいな。これ言わないとダメなの?
…僕は幼女っぽい何者かの言葉を全力で無視し、無言で手に血液が溜まるイメージをし、手に集まった血が光に変わっていく連想をし、そして杖へと移っていくっぽい感じを試してみた。
僕のイマジネーションは、想像した以上の働きを見せ、杖の先に埋め込まれた紫水晶が白く光を放ち、虹色の虹彩が波打つように辺りの壁へとぶつかって壁という壁が薄い皮膜を覆ったように光を灯し始めた。
「な、な、何という?」
「詠唱破棄、いやしかしそんな馬鹿な。」
「光が白いと!」
僕の想像した通り、ここは洞窟の中だった。
しかも鍾乳洞。壁には金地で見たこともない文字様の細工が施されている。
「あっ、もう完全にファンタジーの世界だし。」
「もうどうとでもなりやがれ。」
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