第3話 案内
「やっぱ、買えるよね」
誰もいない寒空の中、独り言を呟いた。
僕は公園のベンチに座ってスマホ画面とにらめっこしている。
僕が作ったアプリの通貨は、人の手を介在して今や地元の自動販売機でさえ買い物ができる。
プシュッ
「さあこれからどうしようか?」
アプリ画面で決済済みの項目を見ながら、自問する。
相変わらず僕のアプリ画面がメール999+表示されたまま点滅している。
ゲームマスターに問い合わせをしようとするメールは今でもひっきりなしに来る。
試しにメールの画面を選択して、軽くスクロールしてみたところ、気になるメールが一通届いていた。
マーチャントギルドのご案内
拝啓、Mr.
この度当ギルドでは、来たる2月1日に特別
役員会議を開催する予定です。
そこでは、会長死去に伴う新たなギルド役員の補充及び会長の選出が行われます。
貴殿は、ギルド役員3名の推薦を得たことから、正式に当ギルドメンバーとしてお迎え致します。
つきましてはご多忙中とは存じますが、皆様にぜひご来場頂きますようご案内申し上げます。
敬具
何だか要領を得ないいたずらメールが来ているな。
マーチャントギルドは聞いたことがないし、そもそも誰が僕を推薦し、何時何処で開催されるかわからない会議に参加ってツッコミどころ満載じゃないか。
こんなよくわからないメールにため息をつきながら今後のことを思案しつつ家路に着いた。
その夜、何だか胸がざわつき目が冴えて眠れなかった。
布団の中で何度か寝返りをうちながら、今後のことについて考える。
こんな夜は年3回は訪れる。
だが、今回の理由は明らかだった。
寝るのは一度諦めて、とりあえず願書を出しておいた大学の赤本を斜め見しながら、眠たくなるのを待つことにした。
「マーチャントギルドか。」
商人組合って意味かな。
この手の話って、融資や投資話の詐欺が多いんじゃないかなぁ。
何となく気になって、ネットで検索することにした。
『マーチャントギルド』
中世ヨーロッパの都市で発達した商人組合。
商人ギルドは11世紀に結成され、以後、地域の商業を独占的に支配した。
13から14世紀にかけて各都市の支配者層に取り入り政治経済を支配したが、16世紀以降衰退した。
『マーチャントギルド 会長死去』
マーチャントギルド最大の組織である“オーパーツ”の会長は2022年1月25日、老衰のため死去した。
「いや、まさかね。」
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