第2話 換金
我ながらいくらなんでも疎すぎた。
テレビも見ないネットもゲームもやらない、ライトノベルを読み漁りながら、学校と自宅の往復を繰り返していた高校3年間。
「せめて自分で作ったアプリぐらい見ておけばよかった。」
このアプリを簡単に説明すると、現実世界のお金を使って異世界人を育成していくゲーム。
ゲーム内には、闘技場があってマネーとステータスの取り合いができる。
あらかじめ設定しておいた毎月のイベントでは、装備品とステータスポイントが賞品として付与される。
ゲーム内に登場するのは異世界でよく存在する種族。
例えば、人間、ドワーフ、エルフ、ハーフエルフ、ハイエルフ、ダークエルフ、半魔半人、獣人、妖精、巨人、魔族などが選べて、ジョブが自動で割り振られる仕組みになっている。
そこに、4大元素の火・水・土・風の属性付与と聖魔の2属性をプラスした魔法が使え、各種ステータスは各々任意に選択できる。
と、ここまではよくある異世界モノで、ここまで世界中で流行る要素などない。
問題なのは、取引の匿名性。
つまり、マネーロンダリングができてしまうってこと。
資金洗浄できるようにしてしまったのが間違いだった。
お金に色がつかない。
ギャングやマフィアがどんどんこのアプリに現金を投資してしまっていたらしい。
あとは、徹底したネズミ講システム。
どう足掻いても、1秒でも先に始めた人が有利なシステムにしてしまった。
とどめは、僕が一人で開発したっていうのを自慢したくて、アプリの二次使用権をフリーにしてしまったこと。
たまたま、新しい投資先を探していた大富豪の目に留まり、多額の資金投入とシステムを利用したゲームが多数開発されてしまったということだそうだ。
ことだそうだというのは、そうネットニュースのまとめサイトに書いてあったからだ。
もはや僕の手を離れてとんでもないことにになってしまったゲームアプリだけど、システム開発者として、また胴元として、ゲームマスターとして最初に作ったキャラクターにとてつもない金額が毎月上納されていたのだから、どうしようもない。
「まぁ試しにちょっと買い物でもしてみるか。」
いくら匿名性があると言っても、何かの拍子に残金表示やキャラクター画面が見られたら、個人が特定される危険性がある。
こんな田舎だって、防犯カメラはそこら中についているし、誰かがショルダーアタックをしないとも限らない。
考えた挙句、近くの佐藤城址公園にある自動販売機ではじめての買い物をすることにした。
ゴトン
まさかこのジュース一本の購入がとんでもないことになるとは思わなかった。
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