第12話 黒い影 ~前編~

ついつい頑張りすぎて夜更かしをしてしまった俺は、翌日の昼頃、ラナさんに抱き付くようなかたちで目覚めた。


うーん、おっぱい柔らかい。ずっとこうしていたいなあ・・・。


と、しっかり先に起きていたらしいラナさんが、俺が起きたことに気が付き、朝の口づけをしてくれる。今回は昨夜張り切り過ぎたので軽いものだ。


「おはようございます、ご主人様」


そう頬を染めながら言った。うーん、天使だなあ。


あ、昨日頑張りすぎたので、とりあえず浄化のスキルを発動しておこう。


このままだとチョットね。


「朝食・・・には少し遅いですが食事を取って来ますので、少し待っていて下さいね」


もう一度俺にキスをしてから、ラナさんは服を着ると部屋を出て行った。


俺はそれを見送ると・・・もう一度ベッドに潜り込んだ。


ん、何せ今日も今日とて何もやる事気がないからな。俺としては本日も絶賛ダラダラと過ごすつもりだ。


ま、そもそも労働や努力をさぼればさぼるほど、ポイントが充電されるのだ。


頑張る理由がまったくない。


そうだなあ、今日もベッドの上でラナさんにご飯を食べさせてもらったら、ラナさんを抱き枕にもう一眠りするとしよう。


「・・・昨日はなんやかやでポイント消費しちゃったしな」


あの貴族のバカ息子のせいで、確か160ポイントは使ったはずだ。とんだ散財だよ。


まあ、ラナさんとの仲が深まったのは良かったけど。


ふむ、そこからだいたい丸一日、ラナさんとイチャイチャしていたわけだから、かなり怠惰ポイントの充電はされているはずだけど・・・。


「充電残量はいくらかな?」


俺が小声でつぶやくと脳内にいつものアナウンスが流れる。


『怠惰ポイントの充電は残り330ポイントです。ご利用は計画的に』


なるほど、それなりに充電されてはいるが、物入りになった際には不安になる微妙な量だな。


「やっぱりここはサボるのが正解か!」


まあ、もとから何もする気力もないんだけどね。


それにしても、さぼることが肯定される世界とは何て素晴らしいんだろう。


ラナさんのオッパイに顔を埋めて、好きなだけ惰眠をむさぼることが正義なんだからなあ・・・。


と、そんなくだらないことを考えてる内にラナさんが軽い食事を持って戻って来た。


パン切れ数枚とコーンスープ、それに野菜が添えてあるという、本当に簡単なものだ。


「これくらいで良いんですよね?」


「そうそう、だいぶ慣れて来たな」


俺が褒めらると、ラナさんは嬉しそうに微笑む。


そして、当然の様にお盆をもって俺の横に椅子を並べて座ると、上半身だけを起こした姿勢の俺にスープをすくって差し出してくれる。


「少しフーフーしますか?」


スープからは湯気が立ち上っていて美味そうだが、確かにもう少し冷ました方が良いだろう。


俺が無言で頷くと、ラナさんはフーフーとしてから食べさせてくれた。


「美味しいですか?」


「うん、美味いよ」


「良かった。パンもいかがです?」


パンを手でちぎってラナさんが俺の口に運んでくれる。


「パンはなんかぼそぼそしてるんだよな。麦が悪いんかねえ」


「もう少しお金を出せばよいパンを出してくれると思います。宿の主人にお願いしてみましょうか?」


「んー、いや、そこまでグルメじゃないからいいよ。あ、そうだ、パンを食べさせてくれる時はラナさんにキスしてもらおうかな。それでだいぶ味わいが良くなるだろう?」


「まあ」


ラナさんは驚いた後、頬を染めて俺に口づけしてくれる。


うん、ぼそぼそのパンでも何だか美味い様な気がしてきたぞ。


俺は触りやすい位置で揺れているオッパイについつい手を伸ばす。


うーん、こっちも柔らかい。


「あっ、ご、御主人様、今オッパイ揉んじゃダメです。キス・・・出来なく・・・やぁ・・・キス出来ない・・・」


昨夜、判明したことだが、基本的に彼女が「ダメ」と言ってるときはOKな時である。


という訳でそのままいじめてみる。


「ほら、ちゃんとご主人様の言う通りにしないといけないだろう? ちゃんとキスして」


「あ、だって、腰が抜けちゃう。ん、声が出ちゃうんです・・・あ、ん、ちゅ、・・・あっ、やっぱり駄目です!」


おっと、このままだと、また昨夜の続きになりそうだな。


というわけで冗談はここまでにしておく。


荒い息を吐きながらラナさんがやっとまともなキスをしてくれたが、さっきまでとは違うかなり情熱的なキスである。


うーん、ちょっとやりすぎたかな?


まぁ、別に自重する理由はないしこのまま続けても良いか・・・。


などと、俺が考えていた時である。


コンコン、という玄関のドアをノックする音と共に、


「すまないが、ミキヒコ殿はいらっしゃるか!」


そんな野太い声が聞こえて来たのである。

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