隣国の人質ですが溺愛され、更に私への母国の扱いに激怒した公爵殿下が罰を下すと言ってます。私は気にしていないので、母国の重鎮は早く謝りに来てください。許す準備は出来てますから、はぁ
第7話 処刑されると怯えてましたが、なぜか全家臣の前で厚遇宣言されました!
第7話 処刑されると怯えてましたが、なぜか全家臣の前で厚遇宣言されました!
(はわー⁉ はわー⁉ はわわー⁉⁉)
私は前を歩く二人の後ろを丸で夢遊病者のようについてゆきます。
(やってしまいました! やってしまいました! やっちまいましたわーーーー⁉⁉⁉)
ここがブリュンヒルト大公国の王城の敷地でなく、私の私室でしたらとりあえず絶叫していたことでしょう!
ですが、前を歩くお二人の両脇には、どう見ても位の高い文官や武官などの大臣たちお歴々がならんでいて、お二人が歩くのを深く頭を下げながら待っているのです。
一瞬、何が何やら理解出来ませんでしたが、さすがにこの状況ならば私とて何が起こっているのか把握できます!
だって、
「ブリューナク大公殿下、無事のご帰還何よりです!」
「大げさだな。さっさと職務に戻らぬか。暇ではなかろうに」
「いえ、我らが主君の無事の帰還を出迎えるのは家臣の本懐というものです!」
と、そんな忠節の塊のようなやりとりが耳に入れば、
「レン侯爵殿下もお勤めご苦労様でした」
「まったくだよ、急にロズイル公爵領からの人質受け取りに同行すると言い出すのだから。困ったものさ」
とまぁ、そんな会話をしているのですから。
トンチキなわたくしでも、そのやり取りが何を示しているのか分かります!
つまり、
「ただの兵士さんお二人だと思ったら、上司の方は、このブリュンヒルト公爵領の君主ブリューナク大公国殿下!」
そして、
「部下の兵士さんは、ブリューナク大公殿下と最も親しいレン侯爵殿下だったというわけですね⁉⁉」
そして、そして!!!
「わたくしったら、そんなお二人に、慣れ慣れしくしたばかりか、友達になりましょうとか言ってしまったのですわ⁉⁉」
ああ……。
終わった……。
始まる前から終わった……。
せめて人質生活は慎重に慎重に、間違っても周囲の貴族の方々の御不興などかわないように注意して、おとなしく本でも読んで生活しようとしておりましたのに……。
あろうことか、君主様をダチ扱い!
その親友をもダチ扱い!
「よくて幽閉! 悪けりゃ不敬罪ですわ~⁉⁉⁉」
ガクガクガク!
わたしのパニックと怯えはとどまることを知らないのでした。
~レン侯爵視点~
「それで、あちらが例の御令嬢ですかな?」
「ええ、リグリッジ大臣。あなたには早馬を飛ばした通り、彼女が私の命を救ってくれたカナデ・ハイネンエルフ侯爵令嬢ですよ」
「ほう」
ブルーの髪の映える、有能なる歳若くリグリッジ大臣は、観察するように彼女の方を見る。
ですが、なぜか彼女は今、不敬罪ですわーと、よく分からない叫び声を上げています。
「えーっと、あの方で間違いないんですよね」
僕は苦笑します。
本当に凄い女性なんですけど、それを誇ったりも誇示したりしないのが彼女の凄いところなんですが、まぁ、最初は分かりませんよね。
「ふうむ、まぁ、何はともあれ気の毒なことですな。あの歳で人質とは。ですが、どうしてそれほどの才女を人質に差し出したのでしょうか? しかも、ロズワイル公爵領からは、彼女へは一切の配慮は不要と、むしろ厳しく遇して欲しいと読める伝聞が届いております。まったく腑に落ちませんが……」
「ああ、そうなのですね……。ふうん」
いつも冷静な僕ですが、どうしても彼女のことになると、頭に血が上ります。
それに、そんなことを言われたら、つい逆のことをしてやりたくなりますね。
そんなことを思っていると、
「ふははは! だが、しかしそのおかげで我が国にまた一人優秀な人材が手に入ったというもの! かの無能公爵には感謝せねばなるまい!」
僕らの会話に殿下が入ってきました。
まぁ、それはそうですね。あとは……。
「優秀な方にはそれ相応の境遇を用意すべきかと思いますが、殿下はどうお考えですか?」
僕のその言葉に、ブリューナク殿下はぽかんとした表情をすると、
「そんなことは当然であろう。なぜ急に当たり前のことを聞く?」
心底不思議そうな表情をされるのでした。
いやはや、愚問でしたね。
だとすれば、この後は。
「さあ皆の者、出迎えの儀はもう良い。それよりも、すぐに玉座の間へ集まるが良い。我から勅がある!」
いきなり集まっていた全員に向かいそう告げたのでした。
『勅!』
それは大公が発する最も強い命令であり、逆らうことは何人たりとも出来ません。
それほど絶対的な命令なのです。
一体何を告げるつもりなのか?
ふふふ。
皆が一気に緊張し、急いで玉座の間へと急ぐのが分かりました。
「さ、行きますよ、カナデ様」
「へ? へ? 私も行って良いのですか? 玉座の間ですわよね? 一番偉い方々しか入れない場所なのでは……? 私はただの人質で」
「そうですね。ですが、あなたが来なければ始まりませんよ?」
「へ?」
小首を傾げている彼女は、美しい銀髪と切れ長の目をした、一見クールな容貌とは裏腹に、非常に
~カナデ視点~
レン様に連れられて玉座の間に入りました。国力を感じさせる荘厳な間です。
そこでは、一足先に玉座の前へ到着し、当然のごとく、数段上にしつらえられた玉座へ座るブリューナク大公殿下の姿があり、そして先ほどと同様、重臣たちが玉座へ伸びる通路を挟むようにして佇立していました。
ま、間違いありません。こ、これは……。
「や、やはり不敬罪で極刑の宣告を……」
で、ですが、私も腐っても貴族令嬢。最後まで凛とした姿を見せなくてはっ……!
「はい? あの、カナデ様? そうではなくてですね。ああ、聞いてませんね……」
レン様はなぜか呆れ顔しながら、私をエスコートしてくださいます。そして、私はブリューナク大公殿下の前へしずしずと進むと、片膝を堕として拝謁のポーズを取りました。
これから私に下される判決。
少しでも潔く命を散らすことを覚悟します。
そして、ついにこの大陸で最も権力ある王より、その勅は告げられたのでした。
「カナデ・ハイネンエルフ嬢!」
ああ、来ました!
やはり極刑でしょうか⁉
いえ、ワンチャン! 幽閉とか島流しで命だけでもながらえたりできませんでしょうか⁉
ですが、そんな儚い願いすら吹き飛ばす言葉が、殿下より下されたのです。
「カナデ・ハイネンエルフ嬢。お前をこの我、ブリューナク・ブリュンヒルトの友として遇する! 彼女は我が盟友であるレン侯爵を助けたばかりか、古代言語を修めた才女でもある! 我が国にとって大変有用な人材であることもこの目で確認済みだ。ゆえに、隣国からの人質ではあるが、わが友として特別待遇とすることをここに宣言する! 異論ある者はあるか!!」
重々しい言葉が玉座の間に響いたのでした。
「……はへ?」
私は余りのことに間抜けな声を上げてしまいます。
いえ、皆さん異論ありまくりでは⁉
私は一介の、ただの人質令嬢ですよ⁉
ですが、なぜか家臣の皆さんが全く異論を挟まず、それどころか、沈黙が支配する玉座の間に、唯一私の間抜けな声だけが木霊したのでした。
「はええ?」
ちなみに、その時は気づきませんでしたが、後で聞いた話によると、そんな私の様子を見ながら、ブリューナク殿下とレン殿下は、共に笑いをこらえるのに必死だったそうです。
なんて意地悪なお二人なのでしょうか!!
しかし、そうこうしている間にも勅には一切異論は挟まれず、
「うむ、異論はないな。ではカナデ・ハイネンエルフ侯爵令嬢よ! これからは我が友として良しなに頼むぞ! 我が友ということは、この国はお前を歓迎し超厚遇しよう、好きに過ごすが良い! 具体的には国賓みたいな感じでな! そしてたまには俺を笑わせに来るが良い! わーっはっはっはっはっは!」
「は、はあ……。は? 国賓? は?」
結局最後まで頭がついでゆかず、間抜けな返事しかできないわたくしなのでした……。
ですが、こうして、なぜか私は人質の身でありながら、殿下たちの友人であり、まったくこの国で制約をほぼ受けないという大変な国賓厚遇を受けることになったのです。
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