隣国の人質ですが溺愛され、更に私への母国の扱いに激怒した公爵殿下が罰を下すと言ってます。私は気にしていないので、母国の重鎮は早く謝りに来てください。許す準備は出来てますから、はぁ
第5話 同行する男性たちは令嬢を追放した彼女の母国へ怒りつのらせる
第5話 同行する男性たちは令嬢を追放した彼女の母国へ怒りつのらせる
(続きです)
「実は、ケムの芯の部分しか食べないと、体内のマナ循環が悪化するという説があるんですよね」
と言いました。
「え!? そうなのですか?」
「ハイネンエルフ嬢よ、まことなのか? だが、そんな話、俺は聞いたことがないぞ?」
お二人は驚きの声を上げられたのです。
えーっと。
「申し訳ありません。これは全く医学的に証明されているお話ではないのです。勝手な判断をして申し訳ないと思っています。何せ300年前あたりの書物に記載があるだけですので」
「さっ」
「300年前⁉」
なぜか、お二人が更に驚愕の声を上げられたのです。
「我が国の王立研究所の所長以上の知識ではないか⁉」
はい?
「あの……。いえ、単に読書好きなだけですが……」
私は
ただ、確かに……。
「はい。しかも、古代語の書物でしたので、読んだことがある方は少ないかもしれませんね……」
「いや。古代語を読めるような才能持ちなど数えるほどしかいない。我が国ですら、だ。それなのに、なぜお前はそれを読むことが出来たのだ?」
まぁ、そう思われますよね。
「物心つかぬうちから、第一皇子の婚約者などにされてしまったせいで、籠の中の鳥でしたもので……。やることが本当になかったので、小さなころから城の中で、ただただ埃をかぶっている書物を片っ端から読み漁っておりましたら、いつの間にかなんとなく読めるようになっていたのですわ」
「城中の本を……?」
「はい! でも不思議なのですわ。古代語の本はともかく……。あれだけの本という宝物がありますのに、母国では誰もあれを読もうとされないのですから」
もったいないですわ。と感想を漏らす。
ブリューナク様はなぜか嘆息すると、
「とすれば、だ……」
と口を開き、
「すごいのは、隣国のロズイル公爵国ではなく、お前自身。カナデ・ハイネンエルフ侯爵令嬢。そなたが単に優れているというわけだな!」
「はいっ⁉」
いきなり何を言い出すのでしょうか。
「いえいえ! 違いますよ! 今回は偶々レン様の病状に思い当たる節があっただけですので!」
それに、そもそも、
「というか、私がやったことなど、単にご飯を炊きだしただけですので……」
しかし、
「バカめ! いや、バカではないのか! ええい、面倒な! だが、はっきり言ってやろうカナデ・ハイネンエルフ嬢よ! そなたがやったことは、我が国の貴族階級全員が今まで悩み、医者どもも匙を投げていた問題を見事解決してのけたのだぞ!」
なぜか褒められているようです。しかも、
「その通りです」
レン様までそう言うと、なんと頭を下げてきました!
「ちょ、ちょっと、頭なんて下げていただかなくても」
「いえ、これくらいはさせて下さい。そして、あなたという素晴らしい女性に出逢えた幸運に感謝しなくては」
彼はそう言うと、初めて微笑みを浮かべると、
「ありがとう、カナデ様。そして誓いましょう。あなたが困ったとき、必ず我が剣があなたをお守りすることを」
「は、はあ」
何だか誓いをたてられてしまいました。というか、普段澄ました男性がたまに微笑まれると、なんだか可愛らしいですね……。
それにしても、
(兵士様というのは言うことが大げさなのですねえ~)
そんなことを思います。
と、そんなやりとりをひとしきりした後、少し落ち着いたのか、レン様がぽつりと
「それにしても……」
と少し怒りを感じさせる口調で漏らしました。
「あなたのような優れた人材をみすみす手放すなど……。ロズイル公爵家は大丈夫なのでしょうか?」
その言葉に、
「うむ、そうだな。才能ある者をしっかりと評価すること。それでこそ国としての
ブリューナク様も大きく頷いて、私の母国への怒りを滲ませていらっしゃいます。
「あはは。大げさですよ。私程度の女はごまんといますよ? 才能もなければ、可愛げもないらしいですし……」
だからこそ、婚約破棄されて人質になど出されているわけですから……。
ですが、レン様はますます不機嫌そうになると、
「あなたがそんな風にしか考えられないような環境しか用意できなかったことが、隣国のそもそもの大問題ですね」
「ああ、まったくだな。あの国には貸ししかないが、ここまで俺を不機嫌にさせたのは初めてかもしれん。何が罰を与えぬと気がすまんな」
ば、罰?
いえ、聞き間違いでしょうね。
それに、何だか、途中から何をおっしゃっているのかよく分かりませんでしたし。
ですが私は勘の良い方です。
多分ですが、私の不遇な状況を心配してくださったのでしょう!
でしたら、
「心配してくださってありがとうございます。ですが、もしご心配頂けるのでしたら……」
私は昔からの夢を思い切って口に出します。
「わたくしの友達になっていただけませんか!」
そう言ってニコリと笑ったのです。
すると、
「へ?」
「はい?」
お二人は意表を突かれたかのように、首を傾げられたのでした。
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