隣国の人質ですが溺愛され、更に私への母国の扱いに激怒した公爵殿下が罰を下すと言ってます。私は気にしていないので、母国の重鎮は早く謝りに来てください。許す準備は出来てますから、はぁ
第4話 婚約破棄された悪役令嬢は隣国への移送中に同行する男性を助け、その才能に驚かれる ~その2~
第4話 婚約破棄された悪役令嬢は隣国への移送中に同行する男性を助け、その才能に驚かれる ~その2~
(続き)
突然、
「うっ!」
と、従者であるレン様が胸をおさえて、苦悶の表情を浮かべたのです!
「ど、どうなされたのですか⁉」
私は驚いて声を上げてしまいます。
ですが、
「い、いえ。大丈夫です。またすぐにおさまりますよ」
片手を上げて制止するように、レン様はおっしゃいました。
しかし、その顔色は真っ青で、目の焦点も合っているとはいるとは思いません。
「どう見ても大丈夫ではありませんわ⁉ それに、またって。ずっとこんなことが⁉」
私はそう言いながら、隣のブリューナク様を見ます。
「王都病……だな。なぜか俺たちのような者がかかる原因不明の不治の病だ。くそ、レンしっかりせんか!」
彼は怒ったように言いますが、レンの手をしっかりと握っています。
とても心配なのでしょう。
それにしても、
(王都病? 俺たちのような者? ブリュンヒルト大公国の兵士がかかる特有の病気でしょうか?)
「は、ははは。大丈夫ですよ。ブリューナク様。それに、そのような表情を外で見せるものではありません……」
「馬鹿め! ここには俺と人質の女しかおらんではないか! 友の心配をして何が悪い!」
「ありがたいお言葉です……。ぐっ!」
「レン!」
更に苦しそうに胸を押さえました。
やはり、まったく全然! これっぽっちも、大丈夫そうではありませんわ⁉
何だか上司と部下というより、無二の親友のようなやりとりのようでしたが、今はどうでもいいですわね!
それよりも!
「あの、少し宜しいでしょうか?」
「え?」
まさか私がこんな状況で口を開くとは思っていなかったらしく、初めてブリューナク様が驚いた表情をされました。
ですが、
「少しだけお聞かせ下さい。レン様の病は1か月前から始まったのですね?」
「あ、ああ。そうだ」
なるほどなるほど。私は頷きます。
「この1か月、変わったことはありませんでしたか? 何か思い当たる節ですとか……」
「思い当たる節か……。いや、特にない気がするが……」
ブリューナク様は首を傾げます。
「何でもいいのです。何かありませんか?」
すると、彼は渋い表情をしながら、
「まぁ、
口を開くと、
「とある事情でな。こいつは最近王宮で務めることになったのだ。そのために生活全般は大きく変わった」
「なるほど、王宮勤めの上級兵士様になられたのですね!」
「ん? まぁ……。間違いではないか。そのようなものだ」
「それまではどうされていたのですか?」
「故郷の別の地で公務をこなしていた。最近俺のもとに来たというわけだ」
「それが原因ですわ!!!」
私は立ち上がりながら叫びました。
「ぬお⁉」
と、いきなり絶叫してしまいましたので、ブリューナク様が驚いた表情で私を見上げられていました。
淑女にあるまじき行為でしたわ。いやぁ、婚約破棄されたおかげで、少し自由を満喫しすぎていますわね。反省ですわ。
ま、それはともかく。
「馬車を止めて下さい! ブリューナク様!」
「何をする気なのだ?」
彼は頭にハテナマークをつけて聞きます。
それはもちろん。
「レン様の治療にきまってますわ! さあ、私の荷物からお釜を出してくださいませ!」
「は?」
「……は?」
胸をおさえて苦しんでいたレン様すら、何を言っているんだこの女は、と言う表情で私を見上げたのでした。
「レッツ炊き出しですわ!!!」
「これは驚嘆せざるを得ぬな……」
ブリューナク様が
なお、私の今の恰好は、いつもの黒のドレスの上にエプロン(私物)と三角巾(私物)をまいた、完全に飯炊き女です!
そしてやったことと言えば。
「レンよ。本当に症状が改善しているのか?」
ブリューナク様はどうしても信じられない、といった様子で、驚かれた表情でレン様に語りかけます。
なかなかレアな表情な気がしますね。
「ええ、とても体調がよくなりました。この……」
レン様は私がお釜で炊きだし、そして途中まで食べた、茶色の物体を手に持ちながら言います。
「我が国の主食である『ケム』の握り飯を食べたら」
ケムとは爪先よりも小さな粒上の食べ物だ。本来は茶色の実で苦味があるが大量にとれる。
「完治しているわけではありませんが……。なんと言いますか、正しい薬を処方してもらったような、そんな感覚があるのです」
「馬鹿な! 信じられぬぞ⁉」
ブリューナク様が叫びます。
「我が国の医者どもが総力を上げて解決しようと何年も何年も努力してきて解決しなかった問題なのだぞ!?」
それを! と続けます。
「隣国の令嬢がほんの1時間ほどで解決してしまうとは!! しかもそれは我が国の主食だぞ⁉ どういうことなのだ⁉」
訳が分からない! とばかりにおっしゃいました。
「隣国の医療がこれほど高いとは聞いたことがありませんでしたね」
「うむ! なるほど、そうか。ハイネンエルフ侯爵令嬢よ、ケムに一体何を混ぜたのだ! 」
お二人が引き続き驚嘆した調子で感想を述べています。
「あ、いえ~」
私はちょっと冷や汗をかきながら弁明を始めます。
よく考えたら私ってば人質なわけで。
変なことをしたと疑われたら処刑されるかもしれませんものね⁉
「べ、別に何も混ぜてませんのでご安心ください。えっとですね~、医術とかではなくてですね。あの、レン様はブリューナク大公国の主食であるケムを毎日召し上がられていますよね?」
「ええ、そうです。だからこそ不思議なのです。どうして今回、そのケムを食べることで不調が治ったのか」
彼は疑問符を浮かべる。
ですが、そこが盲点なのです。
「ケムは今みたいにそのまま食べると、少し苦味があって余りおいしくはありませんわよね? ですが芯の部分には甘みがあります。ですので、貴族の方はよくこの外側は削って捨ててしまい、甘い実のある芯のみを食べたりされますわよね?」
「ええ、そうです。最近はそのケムと野菜ばかりを食べていますね」
「そんなぜいたくが出来るのはブリューナク大公国くらいですので、もしやと思いましたが。やっぱりそうでしたのですわね」
私は納得します。そして、
「実は、ケムの芯の部分しか食べないと、体内のマナ循環が悪化するという説があるんですよね」
と言いました。
「え!? そうなのですか?」
「ハイネンエルフ嬢よ、まことなのか? だが、そんな話、俺は聞いたことがないぞ?」
お二人は驚きの声を上げられたのです。
えーっと。
「申し訳ありません。これは全く医学的に証明されているお話ではないのです。勝手な判断をして申し訳ないと思っています。何せ300年前あたりの書物に記載があるだけですので」
「さっ」
「300年前⁉」
なぜか、お二人が更に驚愕の声を上げられたのです。
「我が国の王立研究所の所長以上の知識ではないか⁉」
はい?
「あの……。いえ、単に読書好きなだけですが……」
私は
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