第20話

次の日、みんなでバイキングに行こうと思っていた日だ。


僕が学校に着くといつもすぐにこちらに来てくれる叶音さんが今日はいなかった。


体調悪いのかな?

もし休みでもしょうがないだろう。最近はずっと学校来てたし。


そんなことを考えていると伊織がバタバタと走りながら来た。


「侑里!ちょっとこっち!!」


と、慌ただしく教室に入り僕を呼ぶ。そのせいで僕と伊織にクラス中の視線が集まった。


「い、伊織…なんだよ朝っぱらから。」


「いいから!とりあえずこっち来い!」


そう言いと伊織は僕の手引き教室出る。そして人のいない空き教室まで連れてこられる。


「伊織、どうしたの?朝からそんな慌てて…」


「大変なんだって!昨日家に帰ってから、親に頼まれてコンビニに買い物行ったんだけどさ。途中の道に救急車が止まってて、何があったのか見たら、ながいっちが、血吐いてて…運ばれてて……俺見てるしか出来なくてさ……。」


きっと、僕たちと別れてから病院に戻るまでに回り道をしていたのだろう。


「病院には?行ったの?そのあとは?」


「ついて行けなかった。ずっとぼーっと見てて、いつの間にか買い物して家に帰ってた。」


伊織は昔からに付き合いだが、誰よりも繊細な一面がある。僕もメンタルが弱い部分があるのは自覚しているそれを超える時があるのが伊織だ。


「とりあえず落ち着いて、今日は帰りに病院寄ろう。叶音さんに会えるかはわからないけど看護師さんとかに聞いてさ。」


「う、うん。わかった…。」


それでも伊織は暗い顔をしている。


「伊織、今日学校にいれる?大丈夫?」


「うん、先行ってて。落ち着かせてから行くから。」


「わかった。先生来たらトイレにこもってるって伝えとくから。」


「おう、任せた。」


結局、伊織が戻ってきたのはHRが終わって少ししてからだった。

顔色も戻ってクラスの友達ともいつも通りに騒いでいたから多分大丈夫だと思う。


この日はいつもよりも静かな学校生活を送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

拝啓、1年後の貴方へ 撫子 @nadeshiko_2304

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ