第14話

「海だ〜!めっちゃ広い〜!」


「早く足つけようぜ!!ほら郁里お前も!」


「え、う、うん。」


次の週の水曜日、僕達は学校が終わってから真っ直ぐ海に来た。僕達の他には散歩をしている人が2、3人いるくらいで少なかった。


「海ってこんな感じなんだね!意外と冷たい…」


「まだ5月だからね、まだ暑くなるから次来る時はちょうど良くなるよ。」


「おい郁里!ちょっとこっち来いよ!」


伊織、またなんか僕に変なことしようとしてるな。


「やなこったー」


と返事をし、砂場に流され放置されている大きな木の幹に座ろうとした。

ここで事件は起きた。


ピシャッと言う効果音とともに僕の背中が濡れた感覚がした。

もしやと思い後ろを振り返ると同時に


「あ、やばい」


と言う声がして振り返った瞬間に走り去っていく叶音さんの声がした。


女の子を追いかけ回すのはどうかとも思ったがよくよく考えてみれば僕は水をかけられた被害者だ。追いかけても問題は無い。そう判断して叶音さんの後を追う。


こんなに全速力で走ったのはいつぶりだろうか。

いつもなら走るのは面倒臭いと思うが今日のこれは不思議とそうは思わない。


「え、待って侑里くん早くない!?」


「僕だって一応走れるよ、久々だけど。」


と彼女に追いついて言う。


「ごめん、なんかもうちょい運動できないと思ってた……。」


「それもちょっと酷くない?」


「あ、ねーねー2人とも!コレ見て!ここにちっちゃいふぐいるぞ!」


ふぐって…しかもあいつ精神年齢何歳だよ。


「え!ふぐいるの?見る見る!侑里くん行こ!!」


ここにもいた。子供が。


「あんまり走ったらふぐ逃げてくよ。疲れたし少し歩こう。」


「侑里お前父親みてぇだな。」


「お前が精神年齢低いんだよ。」


「あ、本当だふぐいる、可愛い!すくえるかな?」


「え、ちょっとやってみたら?さすがに俺は逃げると思うけど…」


「えい!…え、待って。」


と笑いながら差し出してきた手の中を見たら少しの海水と一緒にすくわれたふぐがいた。


「こいつ警戒心低すぎじゃね?この先生きていけんの?」


とか言いながらみんなで大笑いしふぐを海に戻した。

この時点でそろそろいい時間だったから、手や足を拭いてお互い帰路についた。

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