第5話
「私、1年後に死ぬの。昔悪性リンパ腫になったことがあってね。手術で取ってから今まではなんともなかったけど、年明け前に検査したら次はステージ4で別のところに転移してたの。」
それから長井さんは自分がどういう病気なのか、なんでここに転校してきたのかを教えてくれた。
「なんだか昔から治療ばっかりでもう疲れちゃってさ、痛いのも嫌だけどもういいやって思っちゃってあとは徐々に進行してくの待とうかなーなんて思ってるの。意外とこういう人っているんだよ?だから私もそっち選んだんだ。だから最後のわがままとして海が近いこの学校に引っ越してきたの。今まで海行ったことなかったからさ!最後くらいは海を見て死にたいなって。」
穏やかな笑顔で語る長井さんの顔は泣きそうな笑顔にも見えたが僕は何も言わずに話終わるのを聞いていた。
「あともう1つ、今の夢は骨になったら海に半分だけ撒いてもらうこと!半分は親のところにないと可哀想だからね。」
そこでふと疑問が湧いてきた。
「な、なんで長井さん僕にその話してくれたの?」
と。
すると彼女は
「最初に言ったでしょ?嘘を見抜いてくれたお礼だって。あとは…多分会って初めてだからかな。ほら、あんまり知らない人の方が気兼ねなく重い話できるって言うかなんて言うか、そんなことない?」
と僕の顔色を伺うような感じで聞いてきた。
「確かに、それはあるかもね。ありがとう、言いづらい話してくれて。」
「いーえ、こちらこそ嘘だって分かって話も聞いてくれてありがとね。あ、あと私の事長井さんじゃなくて叶音でいいよ!苗字で呼ばれるのあんまり慣れてなくてさ。」
この時点で僕はこの1年間長井さんと深く関わっていくような予感がしていた。そうなると早めに名前で呼んだ方がいいのかなと考えていたら病院と自分の家の分かれ道についていた。
「あ、ここでバイバイなんだね。じゃあまた明日ね!郁里くん。」
と駆け足で去っていく彼女に
「ま、また明日!叶音さん!」
と咄嗟に大きめの声で答えてしまった。
彼女は嫌な顔は全くしないでくれた。むしろ振り返ってお互いが見えなくなるまで手を振ってくれていた。
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