第199話 夏だ!プールだ!水着だ!!
8月初めの日曜日。待ちに待ったプール&花火大会の日がやって来た。
海里と綾佳は昨夜準備した荷物を持って、待ち合わせの場所まで急いで向かった。
待ち合わせ場所の改札口に着くと、すでに麗音とレイナが来ていた。彼女たちは以前の反省を踏まえて、早めに来ていたらしい。
それからすぐに颯斗と楓も到着したので、目的地に向かって出発した。
◇◆◇◆
電車で揺られること一時間。一行はプールが併設されている遊園地へとやって来た。
この遊園地のプールは波のプール・流れるプール・ウォータースライダーと目白押しだ。
今回はプールだけなのでプール入場券だけを買った。それから男女別れて更衣室へと向かった。
◇◆◇◆
side 男子グループ
海里と颯斗は男子更衣室へとやって来た。
中に入ると沢山のロッカーが並んでおり、隣同士で空いていたロッカーを見つけて着替えを始めた。
「いよいよ女子たちの水着が見れるな!!楓のも楽しみだけど、現役アイドルの水着を生で見れるのはもう最高だ!!!」
「一応忠告をしておくけど、綾佳の水着を見て興奮するのはやめろよ。それを見つけたら目潰しするかもしれないから」
海里は指をピースにした状態で、颯斗の目元に突きつけた。彼は海里の手を抑えながら苦笑し、そして口を開いた。
「大丈夫だって。瀬倉さんの水着を独り占めできるのは海里だけって分かっているから。それを言ったら俺だって楓の水着を他の人に見られたくないしな」
「本当に分かっているのかよ…でもプールだから色んな客に見られるんだよな」
「それよりさ、ふと疑問に思ったんだが、変装しないでプールで遊ぶことは出来るのか?」
颯斗はTシャツを脱ぎ終えると、首を傾げながら聞いてきた。
確かに公共のプールには一般人は沢山いる。中にはアイドルファンもいるに違いない。そんな場所で変装もなしに男と一緒にいてもいいのかと言うことである。
「綾佳の話によると、こーゆう場所だと意外とバレないらしく普通に遊べるらしいよ」
「そうなのか。とりあえず、俺たちはアイドルである三人に迷惑かけないようにしないとだな」
「そうだな」
海里はプール後に控えているビッグイベントの為に、自分もなるべく控えめにいこうと決めた。
それから着替え終わった海里と颯斗はロッカーの鍵を閉めたあと腕に入れて外へと出た。
◇◆◇◆
side 女子グループ
女子更衣室へとやって来た四人は、目の前に広がるロッカー室から四人が近くに置ける場所を見つけて着替えを始めた。
「うぅ…アイドルとアイドルに挟まれて緊張します…」
綾佳とレイナの間に挟まれた楓は左右交互に向きながらボソッと呟いた。
「楓ちゃん!普段通りにしてれば気にならないよ!今はアイドルではなくて、楓ちゃんの友達の瀬倉綾佳だよ!」
「そうそう。綾佳の言う通り、プライベートの私たちはアイドルではない。ごく普通の女子高生だ」
「そうですわよ!ファミレスで語ったあの日は一体なんだったのですか!!」
綾佳、麗音、レイナは楓に向けて緊張を解す言葉を掛けた。
「綾佳さん。麗音さん。レイナさん。ありが———ひゃっ!!」
楓は涙を浮かべながら感謝を伝えようとしたら、レイナが突然彼女の胸を後ろから掴んだ。
そして楓は可愛い声を上げてしまった。
「あら。楓さんとても可愛い声を出しますね〜!あと触り心地がとてもいいですわ」
「マジ?!私も触ってもいいかな?」
綾佳は手をわしわししながら、楓の胸に向けて伸ばしていく。その様子に楓は麗音に涙目を向けながら助けを求めた。
「はぁ…仕方がない」
麗音は綾佳とレイナの額にデコピンを食らわせて、その場を収めた。
「「痛ーい!!」」
「痛いじゃありません。楓が困っているだろ。それに早く着替えないと、海里たちが待っているかもしれないぞ」
「はっ!そうだった!!」
それから会話を一旦終わらせて、それぞれ黙々と着替えをしていきロッカーの鍵を閉めて外へ出た。
◇◆◇◆
海里と颯斗は後ろを向きながら、女子たちが来るのを待っていた。心拍数はかなり上がっていた。
「海里くーん!!お待たせ!!」
そして遂に女子グループがやって来た。
「海里。"いっせいのせ"で振り向くぞ」
「面倒くさいな…まぁ、いいけど」
颯斗の合図で同時に後ろを振り向いた。
「おぉ…皆さんとても可愛いです!!楓もとっても可愛いぞ!」
「颯斗…彼女なのに"も"って何よ!!彼女である私が1番じゃないの?」
「ごめんなさーい…楓が1番可愛いです。現役アイドルの御三方よりも目立っております」
「よろしい」
楓は満足したようで、首肯しながら腕を組み呟いた。颯斗は遊ぶ前から疲れた顔になっていた。
一方、海里の方はというと。
「海里くん… 私の水着どうかな?ちょっと冒険してみたんだけど、変…かな?」
海里は綾佳の水着を下から上へ上から下へと見ていき、そして生唾を飲み込んだ。
彼女の水着姿はとても素敵で魅力的だった。そして刺激的で他の男には見せたくなかった。
「うん…とても魅力的だよ。他の男たちには見せたくないよ。今すぐお持ち帰りしたい…かな」
「お…お持ち…帰り…な、何言っているの」
海里は柄でもないことを言ったので、顔が急に熱くなった。綾佳の方を見ると、彼女も顔を赤く染めていた。
「はいはい。皆さんプールに行きますよ」
「もはやバカップルだな…」
レイナは手を叩きながら、麗音は小声でボソッと呟いた。
それからプールの場所へ移動を始めたのだが、向かう途中に色んな視線が女性グループに注いだ。
◇◆◇◆
最初に一行は波のプールへとやって来た。
この場所は奥に波発生装置があり、そこから浅瀬に向かって波がやって来る。
「海里くん!!」
「ん?……うわぁ!」
海里は綾佳に呼ばれて振り向くとプールの水を掛けられた。上手く成功できたので、彼女はとても嬉しそうにしていた。
「うふふ。海里くんびっくりした?」
「びっくりしたよ。という訳で、やり返しても問題ないよね」
海里は口角を上げると、その場に屈んで綾佳に向けてプールの水を掛けた。
「ひゃ!!冷たい!!」
「でも気持ちいいな。気温も高くて良かったよ」
今日の気温は38度。プールには最適な気温であり、まさしくプール日和だった。
「んね!とっても気持ちいいね!」
それからお互いにプールの水を掛けあった。
その様子を見ていた四人は温かい目で見守りながら口を開いた。
「海里と綾佳の二人はいい感じだな。これはもう付き合ってるって言ってもいいよな」
「そうですわね。今夜がとても楽しみですわね」
「綾佳さんとても可愛いです」
「あぁ…海里のやつが」
颯斗は嘆息して、三人(楓、麗音、レイナ)は微笑し合って二人の元へと向かった。
「海里さん。綾佳さん。私たちの目の前でイチャイチャして楽しそうですわね」
「そうだな。私たちのことが目に入らないくらいイチャイチャしてたな」
「お二人ともお似合いですよ!」
「あぁ…海里が遠い存在になっていく」
レイナ、麗音、楓の怒涛の言葉に手を止めた二人は顔を赤くして下を俯いた。(颯斗の言葉は無視)
「イチャイチャじゃないもん!!スキンシップだもん!!」
「それのどこが違うんだよ(苦笑)どっちも同じ意味だろうが」
「綾佳さんったら、いやらしいですわ」
「い…いやらしいって。そんな意味ではないのに」
綾佳は頬を膨らませながら呟いた。
海里と楓は顔を見合わせるとお互いに苦笑した。
颯斗は海里の肩に腕を置いて嘆息していた。
それから流れるプールへと向かった。
◇◆◇◆
「流れるプールは最高ですね!」
「必要な動きをしなくていいからな」
「颯斗!逆走したら他のお客さんに迷惑でしょ!」
「流れるプールで逆走は定番だろ」
レイナと麗音はプールでぷかぷか浮かびながら流れに身を任せていて、楓は逆走している颯斗の腕を掴んでいた。
「ふっふふ。楓ちゃんと颯斗くんはどこに行っても変わらないね(笑)」
「結婚してからも尻に引かれるタイプだな」
「そうだね!レイナちゃんと麗音ちゃんも楽しめているし、夏休みの思い出としては最高だね!」
「……だな」
海里は一瞬言葉を詰まらせた。
それは花火大会でのビッグイベントが着々と迫って来ているからだ。
「それじゃあ、私たちも流れるプールを楽しもう」
綾佳の笑顔に海里は一言、「うん」と返事をした。そして海里も流れに身を任せながら、ぷかぷかと浮かんでいた。
そして頭の中では、ビッグイベントの言葉を頭の片隅で考えていた。
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