第186話 北島さんの熱意は凄かった
「それで寺本さんたちは収録についてどのように考えているのですか?」
北島はお菓子を国見の前に置くと座席に座り、海里たちに話し掛けた。
「俺たちはゲーム収録を考えています。その為にグリーンバックなども買うつもりです」
「ほう、ゲーム収録でグリーンバックとは。なかなか編集が大変になりそうだな」
「そうですね。以前私も興味本位で調べたことがありましたが、慣れないと時間が掛かりそうでした」
二人の言う通り、一番大変なのは編集だ。
綾佳は基本的には撮影だけなので、編集をやることはしない。というより、綾佳に任せたら何をしでかすか分からないからだ。一方、海里はというと機械音痴なので自分では編集をしたくなかった。
「俺がやるしかないのかな…レイナさんは女装の件や他事務所の理由があって頼めないし」
「それでも海里くんにはマネージャー業に集中してほしいから、それは認められないな」
国見は海里の言った台詞を否定した。
それだけ海里には"バイトマネージャー"ではなく"本物のマネージャー"になってほしいのだろう。
そして陶酔状態でいる綾佳に視線を向け口を開いた。
「瀬倉。君は編集の話をどう考える?」
「………っえ?………(海里くん。何の話かな?)」
綾佳は間抜けな顔を一瞬すると、すぐにハッとなり海里に小声で聞いてきた。
国見と北島はやれやれという感じにため息をついていた。
「(俺たちの動画を収録でもやるんだけど、その収録した動画を誰が編集するかという話だよ。俺はマネージャー業に集中してほしくてダメで、レイナさんには負担を掛けられないから…)」
「(なるほど。それで私の考えを聞かせてくれと)」
綾佳は話の概要を理解したらしく、腕を組みながら何かを考えだした。
そしてすぐに綾佳は口角を上げ口を開いた。
「それなら北島さんにやってもらおうよ!」
「はっ?!私ですか?!」
北島は机をバンと叩き立ち上がった。
「だって北島さんなら信用できるし、すぐに技術も身につけそうでしょ?」
綾佳の言いたいことは分かるが、北島はそれを受け入れたくないようだ。
それより北島は綾佳から毎回負担が掛かるようなことを言われて大変だなと思った。
「この際に言っておきますが、私は何でも仕事を受ける訳ではないのですよ。綾佳さんのマネージャーが本業です。綾佳さんの雑用ではありません!!」
北島の熱意が凄い伝わってきた。
それだけ彼女は綾佳のマネージャーとしての仕事を誇りに思っているのだろう。
そして海里がバイトマネージャーから昇格することを恐れているのかもしれない。
「あはは…熱意のある演説ありがとうございます。確かに北島さんは私のマネージャーだよ。だからこうして頼んでいるんだよ」
「そう言われても、今回は私は何も動きませんよ」
「そんな〜 海里くん。北島さんが意地悪してくるよー!!」
「これに関しては綾佳が悪いな」
「海里くんまで…皆んな酷いよ」
綾佳は涙目になりながら、国見の方を見た。
国見は頭を掻きながら口を開いた。
「三人とも落ち着け。この件に関しては、俺が何とかするからいいな?」
三人はしゅん…としながら、「分かりました」と口を揃えた。そして収録配信の話し合いは幕を閉じた。
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