第185話 給料上がる話…では?
水曜日の放課後。海里と綾佳は社長に呼ばれて事務所に来ていた。
話し合いは応接室で行われ、長机の上にはお茶が用意されていた。
「学校終わりに事務所に呼んで悪かったな。どうしても伝えないといけないことがあってな」
それを聞き、海里と綾佳はゴクリと唾を飲み込み、国見からの続きの言葉を待った。
国見は二人の様子を見て一つ頷き口を開いた。
「実は配信の時に瀬倉にとあるミッションを出していたんだ」
「とあるミッション…?」
海里は首を傾げながら聞き返した。
そして綾佳の方に視線を向けると、ポンと手を叩いて頷いていた。
「それはだな…初回配信でチャンネル登録者数1000人を目指すことだ」
「それを達成したら何があるんですか?」
「海里くんの給料が少しだけ上がる」
給料が上がる…それは以前動画に出てほしいと綾佳に言われた時に提示された言葉。社長がこの話をしてきたということは、自分の給料がほんとうに上がるんだと思った。
「ほんとですか?!綾佳の言っていたことは嘘ではなかったんだ」
「でしょ!私が嘘を付く訳ないんだから〜!」
「あら。綾佳さんは社長に交渉していたではありませんか。ちなみに今回の動画配信だけですからね」
「綾佳?それはどうゆうことかな?」
海里が聞いていたのは全体的に給料が上がるような話だった。だけど北島の話は全体的な給料アップではなく、一時的なものだと言うことだ。
「えっとね…その、何というか…」
綾佳は顔を引き攣りながら視線を横にずらした。
そして海里の方を見ないようにしながら、国見を睨みつけていた。
「瀬倉、そんなに睨むなよ。確かに今回は一時的だが、これからの頑張り次第では上げることを考えているんだから」
「社長、それはほんとですか!?」
「もちろんだ。今回の生配信で瀬倉の知名度もさらに上がったし、海里くんの女装も人気だしな(笑)」
「俺の女装は人気でなくていいんですよ…」
海里はため息をつきながら返答した。
「そんなこと言わなで海里くん。私は海里くんの女装姿も好きだよ!海ちゃんに会いたいぞ!」
「そう言うってくれるのはありがたいけど…」
「あはは…それで頑張り次第とは?」
綾佳は苦笑したあと、国見に質問した。
「一つ目が本命のマネージャー業だ。これは海里くんの本業だから当然だけどな。二つ目が配信だ。これに関しては不定期でもいい。だけど収益化までは何とかして頑張ろうな」
「マネージャー業はもちろん頑張りたいと思います。これが今、俺に出来ることですから」
「 !! 海里くん…私の為に頑張ってくれるなんて…私、嬉しい」
綾佳は目をうるうるさせながら海里の方を見つめていたが、国見との話の途中だったので彼女の頭を撫でて話の続きをした。
その時に綾佳が顔を赤くしていたことを知っていたのは、対面にいた国見と近くにいた北島しかいなかった。
「そして配信ですが…収益化は目指したいですね。まぁ、綾佳ならすぐに行けると思いますけどね(笑)」
「そうだな。すでにチャンネル登録者数に関しては条件達成しているから、あとは総再生時間とかだな」
「総再生時間ですか…そうなると生配信だけではダメですよね」
「ダメだな。生配信と録画した動画を公開することを考えないとな。給料アップ目指す為にやるか?」
国見は海里にそう問うと一口お茶を啜った。
これに関してはグリーンバックのこともあり、元々考えていたことだ。すでに考えていたことなので、海里は考える時間を作らずに了承の一言を言った。
「それじゃあ、収録について話をしようか」
国見は話をする為に北島に事務所にあるお菓子を持ってくるように言った。北島は渋々椅子から立ち上がり取りに行った。
一方、綾佳はというと———両頬に手を当てながらぶつぶつ呟き、未だに顔を赤くしていた。
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