第182話 クラスメイトにも評判は良かった
月曜日。海里と綾佳は下駄箱で靴から上履きに履き替えながら談話していた。
「コラボ配信の件だけど、レイナちゃんの次は麗音ちゃんを誘おうと思っているんだけどどうかな?」
「早いよ…綾佳。まだレイナさんのコラボ配信の内容も決まっていないのに次は早すぎる」
「だって、早く伝えないと皆んなスケジュール関係でコラボが出来なくなるでしょ?レイナちゃんの時みたいに」
「確かにレイナさんの時はその場で決めたから、次の配信日は未定だな」
「それにSNSを見たんだけど、配信を早く見たいってファンの人達が言ってるんだよね。コラボじゃなくてもいいからって」
それは海里も見た内容だ。SNSで、『綾海チャンネル』と検索すると二人だけでも見たいという内容が沢山ある。
「だけど女装するのにはレイナさんがな…」
「そうなんだよね」
海里も綾佳もファンの気持ちに応えたいが、ここで問題になるのが海里の女装だ。海里は自分で女装用の服に着替えることはできるが化粧などが出来なかった。
レイナの力がないと女装になれないのだった。そして一個人の理由で仕事の邪魔は出来ない。
つまり自分自身で変身の技術を身につけないといけないのだった。
「はぁ…女装用の化粧を覚えるしかないか」
「女装用というより、普通に化粧を覚えれば出来るようになるよね?」
「……確かに化粧を覚えれば出来るかもしれない。だけどレイナさんの技術まで辿り着くことは…ね」
「そうだね。レイナちゃんの技術は一朝一夕で身に付けられないよね。とりあえず、レイナちゃんに相談してみようか」
「お願いします」
海里は綾佳に軽くお辞儀をした。
それは海里がレイナの連絡先を知らないので、綾佳頼みだったからだ。
綾佳は、「任せなさい!」と言ってサムズアップをした。
あっという間に教室の前に着いた。
綾佳は扉に手を掛けて開くと、いつもの事ながら先に来ていたクラスメイト達が一斉に二人の方を向いた。
「綾佳ちゃんおはよう!配信見たよ!とても面白かったし、綾佳ちゃんゲーム上手だね!」
「綾海チャンネルのグダグダ感最高でした!俺、チャンネル登録しましたよ!!」
「アイドルの時や学校の時と違って、家でのオフの感じが出てて新鮮だったよ!次の配信はいつになるのかな?」
そして一斉に綾佳の元に駆け寄り、怒涛の感想ラッシュが綾佳を襲った。
「えっと…皆んな、配信見てくれてありがとう!次の配信はまだ決まってないからSNSを確認してね!」
最初は戸惑っていたが、流石トップアイドルなこともあり綾佳はすぐに口角を上げて対応をした。
(それにしても、皆んな配信見てくれたんだな…有難いけど恥ずかしいな)
海里は頬を掻きながら苦笑していると、後ろから声を掛けられた。
後ろを振り向くと、いつものことながらゆっくりと登校してきた颯斗がいた。
「よぉ、海里。今日もクラスの皆んなは元気だな」
「ほんとだよ。綾佳が何かやる事にこれだと、先生から指導が入りそうだよ」
「それを抑えるのがマネージャーの役目だろ?」
颯斗は海里の肩に手を置くと耳元付近に口を近づけて、「そうだろ。海ちゃん?」と言った。
「………っな?!その名前は今はやめろ。本当に恥ずかしかったんだから」
海里は額に手を当てながら、顔を赤く染めていた。女装の時に"海ちゃん"と呼ばれるのは我慢できるのだが、普通の時は恥ずかしさでいっぱいだった。
「お…おぉ。それは悪かったな。どうしても本人の前で一度呼びたかったからさ」
「それを実行しようとする颯斗の性格の悪さな」
「だからごめんって」
颯斗は苦笑しながら手を合わせて謝った。そして、「あと」と言葉を続けた。
「今日の放課後、二人とも暇か?」
「まぁ、スケジュールは空いているよ」
「それはよかった。楓がどうしても瀬倉さんに感想を伝えたいらしいんだよ」
楓は綾佳の連絡先を知っているが、本人に感想のことを伝えるのが恥ずかしかった。それで同じ学校である彼氏の颯斗に頼んだ。
「なるほど。あとで綾佳にも伝えておくよ。んで、場所はどこになるんだ?」
「ファミレスでいいだろ。少しぐらい騒いでも、周りに掻き消してもらえそうだし」
「あはは…それもそうだね。楓ちゃんは綾佳のことになると、熱が入って声が大きくなるもんね(笑)」
「彼氏としては気を付けて欲しいんだけどな(笑)という事で、よろしく〜」
颯斗は前のドアから教室内に入っていった。
それからすぐに担任がやって来て、海里と綾佳も教室内に入り席へと着いた。
「綾佳。放課後にファミレスで楓ちゃんが綾佳に話があるんだって」
担任がホームルームをしている時に小声で颯斗の伝言を綾佳に伝えた。
「いきなりだね…(笑)でも楓ちゃんが私に話があ?と言うなら行くしかないよね!それでファミレスに行くのは私だけなの?」
「だな。いや俺と綾佳、そして颯斗で向かう」
「あっ…颯斗くんは彼氏だもんね。颯斗くんが来るのは当然か」
「………」
とんでもなく酷いことを言っている気がするが、気にしたら負けだと思い海里は考えるのをやめた。
それを何かを感じ取ったのか、綾佳は苦笑しながら頷き口を開いた。
「よし、授業を頑張るぞ!」
「頑張ろうな」
そして二人は担任の方へと視線を戻した。
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