第180話 初配信 後編
「皆んな本気出し過ぎだよ〜 私、全然勝たせてくれないじゃん〜(笑)」
「時々、プロの人がいるのかと思ったよ」
あれから五回戦行った。綾佳は二回戦目に一位を取れたが、それ以降は三位や五位と順位が伸びなかった。一方、海里はというと三回戦目と四回戦目に一位を取れたが、それ以外は全部二位だった。
『俺、コントローラ握ると本気が出るんだよね』
『綾佳ちゃんのファンは手加減をしない(笑)』
『海ちゃんも強かったね』
どうやらプロではないものの、かなり極めている人がいるらしい。そんなコメントが沢山流れていた。
「極めている人は手加減を覚えようね!綾佳ちゃんは泣きたくなったよ」
「泣きたくなったって…そんなので手加減をしてくれる人なんていないだろ」
「そうでもないらしいよ。コメント欄を見て!」
海里は、「そんなことはないだろ」と思いながらコメント欄を見た。
『綾佳ちゃんに言われたら手加減をしないとね』
『次がラスト?それなら綾佳ちゃんに華を待たせないとね!』
『海ちゃんの呆れ顔が最高すぎる』
確かに手加減をしてくれるコメントがあったが、自分のことも書いてあり苦笑した。
「確かに書いてあるわ」
「でしょ!ということで、ラストバトルを始めるよー!」
綾佳はそう言ってマルチ募集をもう一度掛けた。
◇◆◇◆
「いや〜 お陰様で私が一位を取ることが出来ました。皆さん、協力ありがとうね♪」
「物凄い茶番劇だったな」
「そんなことはない。私の実力だもん。っね!皆んなもそう思うよね?」
綾佳は視聴者に声を掛けて、今のレースについて感想を求めた。
『もちろん。綾佳ちゃんの実力で間違いない(笑)」
『茶ば…ではなく、実力だね(笑)』
『感想が矛盾しているけど、綾佳ちゃん可愛いから許しちゃうよ〜』
確かに視聴者は茶番劇ではないと言ってたが、文の最後が笑っていた。海里は顔を引き攣りながら頬を掻いた。
「そうだな。綾佳の実力だよ」
「はい。ということで、海ちゃんからも実力だと認めてくれてので、ゲーム配信はこれにて終わりです!次が最後になります」
「段々とグダグダになってきてるが、これは大丈夫なのか?」
「大丈夫!これが私たちの配信のやり方だから!それに独特すぎて、次も見たいって思ってくれるでしょ?」
「まぁ…見たくはなるけど」
海里はチラッとコメント欄を見た。
『ある意味グダグダ配信なのに面白いから、飽きることなく最後まで見てられる。チャンネル登録不可避』
『アイドルの時には見られない綾佳ちゃんが見られるから、ある意味レア配信だね』
『次の配信が既に待ち遠しい!!』
好印象のコメントが沢山流れていた。
「視聴者さんが楽しんでくれているなら、俺はいいんだけど」
「でしょ!だから、最後までグダグダで行こうね」
「はいはい」
海里と綾佳はそのままエンディングへと移った。
「長かった配信もいよいよ終わりだね〜」
「時間で言ったら二時間くらいやってたな」
「そんなにやってたんだね。皆んなも楽しんでくれたかな?」
それに合わせてコメントが流れていく。
『楽しかったよー!』
『次の配信も楽しみにしているよ!』
『コラボ配信して欲しいなー!』
嬉しいコメントが沢山流れたので、お互いに顔を見合わせて微笑した。
「コラボ配信かぁ…レイナちゃんとの配信もやりたいなぁ」
「目の前にいるし聞いてみれば?」
「そうだね!」
綾佳はスタッフとして作業していたレイナに、コラボ配信のお誘いをした。
彼女は声を発することはしなかったが、手を頭の上に挙げて大きく円を作り承諾してくれた。
「おぉ!!レイナちゃんからOK貰えたよ!!」
その言葉を皮切りにコメント欄はさらに勢いよく流れていった。
『綾佳&レイナの配信は期待!!』
『これは神回になるかも!』
『海ちゃんも出ますよね?』
どうしても海ちゃんに出て欲しい視聴者がいるようだ。海里はまたもや女装して出るのかと思った。
「私と海ちゃんのレギュラー配信だから、もちろん出るよ!だけど配信は不定期になるから、チャンネル登録とSNSのフォローをして待っててね!」
綾佳は顔の側でハートを作りウインクした。
「それじゃあ、そろそろ終わりにするか」
綾佳は頷き、そして一つ咳払いをした。
「———今日の配信はこれにて終わります。次のコラボ配信も楽しみに待っててね!」
「視聴者の皆さんに楽しんでもらえる配信を頑張るので、これからも綾佳共々応援をよろしくお願いします」
そして二人は顔を見合わせて一つ頷くと———
「「以上で綾海チャンネルの初配信ライブは終わりです。ありがとうございました。バイバイ!」」
二人は画面に向かって手を振った。
『バイバイ!』
『SNSでの告知を待ってるよー!バイバイ!』
『楽しかったよー!!バイバイ!』
一斉に別れの挨拶がコメント欄に流れた。
そしてタイミングを見計らって、レイナが【終了】ボタンを押して配信は終わった。
最後にチャンネル登録者数を確認すると、二万五千人と書いてあった。
これにより、社長からのシークレットミッションは余裕でクリアーをした。
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