第179話 初配信 中編

「皆んなお待たせ!いよいよゲーム配信が始まるよ!!準備は出来ているかなー?」


 ゲーム配信の準備が出来たので、綾佳は視聴者に声を掛けた。


『待ってました!!』

『こちらも準備出来てます!』

『オンラインだと一緒に対戦できるかな?』


 それに答えるために沢山のコメントが流れた。

 その中には綾佳や海里と対戦したいというコメントがいくつか見られた。


「対戦か…海ちゃん。対戦やっちゃう?」


「そうだな。視聴者さんがやってほしいと言ってるし、オンラインでの対戦もやろうか」


 綾佳は海里から賛成を貰えたので、スタッフとしているレイナにも視線を向けた。

 レイナは少しだけ考える仕草をしたが、すぐにサムズアップしてOKを貰えた。


「ということで、海ちゃんとスタッフさんに許可を貰えたので対戦やるから皆んな参加してね!その前に練習はさせてね!」


 綾佳はウインクと舌ぺろをした。


『もちろん!それと綾佳ちゃんのウインクと舌ぺろありがとうございます!!!』

『やばい…俺、綾佳ちゃんに負けてもいいかも』

『海ちゃんもウインクしてー!』


 すると、ものすごい勢いでコメントが流れた。

 その中でどうしても目立つのが、海里にウインクをしてだった。もちろん綾佳にも見られているので、彼女はニヤニヤしながら口を開いた。


「視聴者の皆さんは海ちゃんのウインクを見たいようですよ〜 これはやるしかないよね」


「絶対にさっきのことを根に持っているだろ」


「……何のことかな?皆んなが見たいって言ってるんだよ?ほら」


 海里はもう一度コメント欄に視線を向けると、そこには確かに流れていた。同じコメントがものすごい速さで。海里は顔を引き攣りながら、綾佳の方に視線を戻した。


「………」


「う…海ちゃん。急に見つめてどうした…の?」


 海里は無言で綾佳を見つめ続け、そして綾佳の顔が赤く染まったタイミングで彼女と視聴者に向けてウインクをした。


 不意打ちにウインクをされた綾佳は自分の顔が赤くなるのが分かったので、ぷいっと振り向き口を開いた。


「なっ…なかなかいいウインクだったじゃない」


「不満そうな言い方だけど、ありがとうな」


 海里は苦笑しながら感謝をして、コメント欄に目を向けた。


『マジかよ。女装で可愛いウインクなら、本当の姿だったらカッコいいってこと』

『いい…女装だけど、好きになりそう』

『海ちゃんのスペック高い!!』


 海里は視聴者にも感謝を伝えて、やっと本来の目的であるゲームへと移った。


◇◆


「色々と話が逸れちゃったけど、ゲームを始めるよ。皆んなの画面にはちゃんとゲーム画面が見えているかな?」


 パソコンと同期したゲーム画面を、視聴者の方にも映っているか確認をした。


『見れるよ!』

『大丈夫だよ。固まる雰囲気もなし!』

『完璧!いよいよ綾佳ちゃんと対戦だ!』


 ちゃんと見れることを確認できたので、綾佳は海里と顔を見合わせて頷き、「スタート!」と言ってコース画面に移った。


「最初は簡単なコースからやるよ」


「そうだな。配信前では難しい所をやってたもんな」


「海ちゃん!!それは言わない約束だよ!!」


 和気藹々のトークをしながら、綾佳はコース選択を終えてスタートした。コメント欄には(笑)の文字が沢山流れていた。


「やったー!一位取れたよ!」


 簡単なコースだったので、綾佳は順調に進んでいき見事に一位を獲得した。海里はその後に続いて二位となった。


『綾佳ちゃん上手!これは負けられない』

『海ちゃんもあと少しだったね。次は一位頑張れ』

『二人とも凄い!』


 コメントの方も順調に盛り上がっている。

 このビッグウェーブに乗るために、いよいよオンライン対戦をすることになった。


「それじゃあオンライン対戦を解禁するよ。えっと…これってどうやるの?」


「まず俺たちがマルチプレイを開いて、そのあと合言葉を設定したら皆んなに教えるんだよ」


「なるほど。マルチを開いて…合言葉を設定っと」


 綾佳は海里から教えてもらった通りに設定を進めていき、合言葉を視聴者の人たちに伝えた。


 すると八枠中、残り六枠が一瞬で埋まった。


「わぁ!一瞬で埋まっちゃった。まだまだやるから、今は入れなかった人は落ち込まないでね」


「それと一度入った人は、次はお休みしてください。皆んなで楽しんでゲームをしたいので」


 綾佳はフォローしながら話、海里も譲り合いを視聴者に求めた。


「では第一回戦スタートです!」


 そして綾佳はスタートボタンを押した。


 一週目は綾佳の序盤一位と海里の五位から始まった。


 二週目は綾佳がコースアウトをした為七位に転落し、海里は順調に進んで三位に上り詰めていた。


 三週目(最終ラップ)で綾佳は一発逆転のロケットを引き当てて一気に四位まで上り詰めた。海里は二位まで行ってたが、一位にいる視聴者が上手すぎて追い越さないでいた。


 結果、綾佳は四位。海里が二位で終わった。


「あちゃ〜 四位だったよ。海ちゃんは二位って凄い?!」


「今回は上手く行けたけど、視聴者の人が上手すぎて抜けなかったわ」


 一位の人はショートカットやアイテムの使い方が上手かった。

 

『一位の人凄い!!』

『あれは神業すぎるでしょ!?』

『そんなアイテムの使い方があるのか』


 コメント欄にも一位の人に対する絶賛の声が多数あった。


「うぅ…次は負けないし、皆んなから絶賛の声を貰うんだ!!!」


 そう言って綾佳はもう一度マルチ募集をかけた。

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