第173話 準備が終わりました

「お疲れ様でした。では綾佳さん、私と一緒に確認をしましょうか」


「うん!」


 レイナは男性に労いの言葉を掛けると、綾佳の方に視線を向けたて声を掛けた。

 綾佳は返事をして、二人でパソコンの元へと向かった。


「まずは設定なのですが、パソコン内のアカウント名を瀬倉綾佳と登録しています」


「レイナちゃんの名前じゃないの?」


「えぇ、これは綾佳さんが使うので、アカウント名は自分のにするべきです。ちなみにパソコンのメールアドレスも綾佳さんが使えるのにしました。登録するのに使えるように」


「色々と考えてくれたんだね。ありがとうございます」


 綾佳はレイナと男性に向けてお辞儀した。


「いえ、自分はいつも通り仕事をしたので。それよりも話の続きをしてもよろしいでしょうか?」


 男性は謙遜しながら、レイナに視線を向けた。


「お願いします」


「分かりました。続いてはメールアドレスなんですが…これはレイナお嬢様が話してしまったので、配信について話しますね」


「レイナちゃんのエースさんって、ほんとなんでも出来るんだね」


「この方が凄いだけですよ。他の方はここまで詳しくは出来ませんもん」


「そうですね。私が趣味で調べたり、実践したりしているので知っているだけですよ。もちろん副業ではなく、趣味の一環として」


 男性はあくまでも金銭を受け取っていないことをレイナに知ってもらうために、必死で弁解していた。

 レイナは、「分かっていますよ」と言って、男性に話を続けるように促した。


「それで配信ですがアカウントを作ったら、カメラと同期して、開始ボタンを押します。大体はこんな感じで始まることになりますね」


「なるほど…意外と簡単なんですね」


「それにしても、貴方の説明は大雑把すぎますわ。いつも通りにできないなら、私がもう少し丁寧に説明しますよ」


「すみません。レイナお嬢様の前だと少し緊張してしまい、本領発揮ができないようです」


 男性は頭を掻きながら、苦笑していた。

 そのあと彼は一礼してからパソコンから少し離れて、二人に席を渡した。


(おぉ…レイナさんの説明凄いな)


 紅茶を飲みながら聞いていた海里は、レイナの説明の上手さに驚いた。彼女の説明は自分がやったことあるように、スムーズに話していた。


「レイナお嬢様は昔、名義を変えて声だけ配信をやったましたからね」


 二人の説明を見つめていると、男性が気づき海里の元へやって来た。


「そうなんですね。まだまだ知らないことが、レイナさんにはあるのですね」


「これ以上はないと思いますが…とりあえず、レイナお嬢様は最高にカッコいい方です」


「そうですね。ですが、綾佳もレイナさんに負けず劣らずカッコいいし、可愛いですよ」


「そうですか………で、貴方は誰ですか?」


 男性は首を傾けながら聞いてきた。


 ここまで親しく話していたのに、自分の正体を知らなかったことに驚いた。

 綾佳は説明しないのは分かるが、レイナは説明していると思ったからだ。


 海里はコホンと咳払いをして口を開いた。


「自分は瀬倉綾佳のバイトマネージャーをしています、寺本海里と言います。レイナさんとも仲良くさせていただいてます」


「そうでしたか。これは失礼しました。でもレイナお嬢様に男性のご友人がいたとは…」


「その言い方だと、何かあるのですか?」


 男性の言い方はまるで何か含みがあるように聞こえたので、海里は聞き返した。


「いえ、特には無いですよ。私が勝手に感動していただけですから」


 男性は苦笑しながら、頬を掻いていた。


(ないのかよ!!なんか複雑な過去でもあるのかと思ったじゃん!!!)


 海里は顔を引き攣りながら、「そうでしたか」と言った。


◇◆◇◆


 あれから十五分経った。

 海里は男性と紅茶を飲みながら、談話をずっとしていた。それからレイナたちは話が終わったのか、海里たちの元へやって来た。


「御二方共、こちらの説明は全て終わりました。綾佳さんは、一応配信出来るようになりました」


 レイナは物凄く疲れた顔をして、海里に伝えてきた。その顔を見るに、綾佳に伝えるのは相当苦労したように見える。


「綾佳。配信は完璧に出来そうか?」


「もちろん!レイナちゃんのおかげで、私は完璧になりました!配信者綾佳ちゃんと呼びなさい!」


 綾佳は胸を張りながら、ドヤ顔で言ってきた。


 海里は綾佳のことをスルーして、レイナに視線を向けて口を開いた。


「あとは宣伝するだけか」


「そうですわね。宣伝に関しては、綾佳さんのSNSを使いますので、携帯を出してください」


「うん。分かった」


 綾佳はポケットから携帯を取り出し、レイナに言われるままSNSを開いた。


「綾佳さんは人気アイドルなので、短い文でも皆さんが反応してくれると思います。私もリツイートしますので」


「分かった。今すぐ作って投稿するね」


 そう言うと、綾佳は投稿ようの文をテキパキと打っていく。

 ものの数分で綾佳は頷き、海里とレイナに画面を見せた。


「うん、いいと思うよ!」


「綾佳さんらしくて、とてもいいですわ」


「それじゃあ投稿するよ」


 綾佳は【投稿】ボタンを押した。


「あとは待つだけだね。皆、喜んでくれるかな?」


「喜んでくれるさ。綾佳の配信は皆見たいよ」


「そうですわね。海里さんも頑張りましょうね」


「はい…頑張りたいと思います」


 海里は諦めの表情を浮かべながら、レイナの言葉に頷いた。


 ちなみに綾佳の配信予告は、好印象で初回のミッションもクリアー出来そうだった。

 

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