第168話 報告会① 後編
それぞれ注文していた料理が届いたので、いざ本題の話をすることにした。
「それでは私がどうやって海里さんを焚き付けさせたか話したいと思います」
「お願いします!!」
「あのヘタレさんを焚き付けるやり方…興味深いですねぇ…」
二人の返事を聞き、楓は紅茶を一口飲んだあと話の続きをした。
「最初は綾佳さんと付き合いたいと思っているけど、スキャンダルとか怖いと言って下を俯いていたのです」
「海里くんらしいね(笑)」
「なるほど…ヘタレさんは相変わらずへっぴり腰だったのですね」
「そうなんですよ!だから、私言ってやったのです!!」
楓は右手の握り拳を曲げ、真剣な顔をして言った。その勢いに二人は、「おぉ…」っと手をパチパチとして言葉の続きを待った。
「男なら当たって砕けろです!何か障害が起きたらその時に考えればいい。余計なことを考える前に、一つのことを思っていなさいと…っと!」
「楓ちゃんが…熱血なことを言っているよ!」
「なかなか説得力がありますね。それで海里さんはなんと答えたのですか?」
「萎縮していた海里さんが姿勢を正して、『分かりました』と言ったのです。そこから具体的な内容の話をしていきました」
「すごい…凄いよ、楓ちゃん!!」
綾佳はヘタレの海里にそこまで言わせたことに驚き、楓に尊敬の眼差しを送った。
楓は少し照れ臭そうにしながら、「綾佳さんの為に頑張りました」と胸の前でガッツポーズをして言った。
「楓さん、具体的な内容とは、どのような話をしたのですか?」
レイナは楓が言った"具体的な内容"がとても気になったようだ。具体的といっても、ただアドバイスをしただけなので何の参考にもならないのだが。
「その…レイナさんにはつまらない話になると思うのですが…」
「平気ですよ。私の場合は海里さんの反応などを聞くのが楽しみなので」
「レイナちゃん、私の海里くんを取らないでね?」
「取りませんよ。綾佳さんに何されるか分からないですし」
「えっと…話を続けてもよろしいでしょうか?」
相変わらず話が脱線するので、楓はタイミングを見計らって二人に話し掛けた。
「お願いします!」「楓ちゃん、お願い!」
二人同時に返答してきた。
楓は紅茶を口に含み潤し、口を開いた。
「私は海里さんに夏休みの間にプールや海に誘って、綾佳さんに告白してみれば?と提案しました」
「それって…!!楓ちゃん、私が憧れていたとか伝えてはいないよね?」
「………えぇ、そのことは伝えていませんよ」
楓は少し間を置いたあと、綾佳に満面の笑みをして言った。本当は海里に全て伝えていたのだが、楓は秘密にしていた方が面白いと判断し嘘をついた。
そして楓は、「そのあと」と言葉を続けた。
「不審に思われたら…とか言ってきたので、私たちとWデートという形でもと提案しました」
「あぁ、海里くんは心配するよね。でもWデートの方が緊張するのでは…?」
「寧ろ、前向きな感じでしたよ」
「あの海里くんが前向きだと…?!」
「楓さんって凄いですわね。海里さんをそこまで変えられるとは…驚きですわ」
綾佳はギョッとして、レイナは楓の評価を改めていた。
「という訳で、海里さんを焚き付けさせた話は以上です。あっ、最後に勝手な行動はしないでくださいと言ったので、何も変わらないで接してくると思いますので」
「楓ちゃん、ありがとう… これでまた一歩、告白までの道が進んだ気がするよ」
「いえいえ、私はただ海里さんをのやる気を起こしただけです。(あと、颯斗が迷惑かけたので…)」
楓にとって自分が綾佳の力になれることがとても嬉しかった。だけど、それは口には出さない。自分の心に留めていくのが一番だから。
「今度、二人でどこかに出掛けようね!」
「是非!!お願いします!!」
楓は胸の前でガッツポーズをしながら満面の笑みを溢し、綾佳とのお出掛けにワクワクした。
すると、二人の会話を聞いていたレイナは顔を引き攣らせながら口を開いた。
「あなた、なかなか侮れないですわね…」
レイナのボソッと溢した言葉に、二人は一旦顔を見合わせたあとに うふふ… っと笑みを溢した。それに対してレイナは顔を赤く染めながら、「笑わないでください」と言葉を発した。
それから報告会と昼食を終えた三人は食後のデザートを頼み、ここからは本格的な女子会を始めることになった。
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