第143話 とても好評だった!

 海里たちは、SNSに投稿する為に近くにあった椅子に座った。


「海里くん、これの写真とこれの写真で投稿したらどうかな?」


「二枚じゃ足りないから、追加で三枚くらい選んだ方がいいかもな」


「なるほど!選んでみる!」


 海里と綾佳は画面を見ながら投稿用の写真を選んでいる時、颯斗もまた楓にメールをしていた。


「楓… 頼む。返信が来てくれ… 」


 その様子を見ていた海里は、苦笑しながら颯斗に声を掛けた。


「颯斗、楓ちゃんから返信きたか?」


「うぅ… いま、返信きたよ。瀬倉さんの秘蔵写真のおかげで許してもらえたよ… 」


「そ、そうか。秘蔵っていうのは気になるが、許してもらえたのならよかったな」


「てことで、俺電話してくるわ!」


 颯斗は携帯を見せながら椅子を立ち上がり離れた場所に移動した。海里は、「いってらっしゃい」と苦笑しながら手を振った。


 それと同時に綾佳が声を掛けてきた。


「海里くん!!こんな感じでどうかな?」


 画面を見ると、一通り完成された投稿用の作成が終わっていた。

 写真は五枚になっており、文章も簡潔にまとめられていて分かりやすい。


「いいと思うよ」


「よかった… それじゃあ、投稿するね!」


 綾佳に聞かれて、海里は頷いた。


「ポチッとな!」


 彼女は投稿ボタンを押し、それを海里に見せた。


「出来たね!どのくらいくるかな?」


「そうだな… 五分で300は来るだろうな」


「ふっふふ、私はもっと来ると思うね!」


 それから五分が経ち、SNSを確認した。


「ふっふふ… 」


「それで、結果はどうだった?」


「海里くんの負け!」


 綾佳は満面の笑みをして、携帯の画面を見せた。


 そこには、いいね数500とリツイート数200と映し出されている。


「マジか… しかも、どんどん上がってるし」


「コメントも凄いよ!」


 コメント欄も沢山来ており、


『私服の綾佳ちゃん!!』

『もしかして、横浜にいるの?!』

『その格好の人とすれ違った気がする!!』

『天使の羽の綾佳ちゃん可愛いよ!!」

『食べ歩きの写真も見たいなー?』


 など、どれも嬉しいコメントばかりだ。


(だけど、投稿したから人が集まりそうだな… しかも、すれ違った人もいるとか… )


 そう思った海里は、移動することにした。


「綾佳、コメント見る限りだとこっちに向かって来てる人もいるらしいから、移動した方がいいかも」


「そうだね… ここで集まって来たら迷惑になるし、一応もういないことを投稿しておこうか」


「それが懸命だな」


 本人からその投稿をされれば、ファンの人たちは残念に思って来るのを諦めるかもしれない。

 そうすれば、大ごとにもならずに済む。


「俺は颯斗を呼びに行って来るよ」


 海里は席を立ち上がり、颯斗のいる場所へと向かった。


「颯斗、そろそろ移動するぞ。訳あって、ここには居られなくなった」


「分かった。『それじゃあ、帰りに家に寄るから。もちろん!楽しみにしておいてよ』お待たせ」


 どうやら無理矢理電話を切った感じらしい。


(楓ちゃん、ごめん… いまは緊急事態だから許して)


 心の中で楓に謝り、颯斗と共に綾佳の元へ戻った。


「綾佳の方はどんな感じだ?」


「えっとね、みんな諦めてくれているけど、数人は来そうかな?」


「もはや、ストーカー予備軍じゃん」


「それだけ熱心なファンってことだよ!有難いね」


「恨まれて変な事件に巻き込まれるなよ… 」


「その時は最強のボディーガードがいるから大丈夫だよ!!」


 海里はこの言葉の意味を直ぐに理解した。

 すなわち、自分が綾佳のボディーガードになって、私のことを守れと言っている。

 その証拠に、目の前でウインクしながらサムズアップしている。


「最強のボディーガードってカッコいいっすね!」


 そんな悩みをしていることを知らない颯斗は、海里の横で無邪気な子供みたいに目を輝かせていた。


(もうダメだ… 二人の暴走を止められる気がしない)


 海里は額に手を当てながら嘆息した。


「とりあえず、移動しよっか」


「急がないとやばいもんね!」


「そうなのか?なら、早く移動しようぜ」


 三人はファンが来る前に無事に移動し、何事もなく残りの時間を楽しく回れた。



 最終的に桜木町駅に着いた。

 校外学習の前日に決めた予定でも、この駅で現地解散することになっていたので予定通りに一日行動することができた。


「それじゃあ、俺は楓にお土産買うからここで解散だな」


 颯斗は彼女の楓にお土産を買っていくらしい。

 時々、変な行動をする颯斗だが、ちゃんと彼氏らしいことをするんだなと思った。


「分かった。俺たちは帰るよ」


「颯斗くん、楓ちゃんによろしく伝えといてね!」


「おう!一字一句間違えずに楓に伝えるぜ!」


 颯斗はサムズアップしたあと、手を振ってお土産を買いに行った。


「それじゃあ、私たちの家に帰ろっか」


「だな。今日は疲れた… 夕飯何にしようか」


「それは帰りながら考えればいいでしょ!」


「それは言えてるな」


 海里と綾佳は楽しそうに話ながら、家へと帰っていった。



 おまけ


 颯斗は赤レンガ方面まで戻り、楓の為に生チョコを買いに行った。

 

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