第140話 どうやらリーダーにされるそうです

 楓の家での勉強会が週末に開催と決まり、海里たちは教室へと戻った。

 

「綾佳、さっきから機嫌が良さそうだけど、どうしたんだ?」


 自席に座ってから綾佳はずっと鼻歌をしていて、機嫌が良さそうな雰囲気が出ていた。


「当たり前だよ!この後はLHRで、明日の校外学習の予定決めだよ!!ワクワクしているんだよ!」


「なるほど、校外学習が楽しみなのは同感だな。今回の候補地はどこに並んだろうな」


「分からない。だけど、楽しければどこでもいいかな!学校行事系はいつも参加できていなかったから」


 学校行事がある時、綾佳は毎回仕事が入っていた。なので、今回参加できることは彼女にとって奇跡であり、海里と一緒に回れることにワクワクしていた。


 すると、先生が教室に入ってきた。


「みんなー、席につけよ」


 先生の呼び掛けで、席を立っていた生徒たちが自分の席へと戻っていった。


「じゃあ、明日の校外学習について話すぞ。明日の校外学習は六班に分かれてもらう。そして各班で目的地を決めてもらうぞ」


 そういうと、先生は黒板に候補地を書いていく。

 書き終わると、何かを思い出したように振り向き口を開いた。


「ちなみにだが、班は自由だ。好きなもの同士で班を組むといい」


 そして先生は、行動開始と言って手を叩いた。


「海里くん、一緒に班を組も!」


「もちろん。俺は最初から綾佳と組むつもりだったよ」


「うふふ… 私、嬉しいな。あと、誰を誘う?」


「そうだな… なるべく知っている人がいいが…」


 海里は教室内を見渡した。

 どうやら、すでに仲良いグループで班が出来ており、残っているのはよく一人で行動する人のみ。


「どうやら俺たち二人だけの班になりそうだね」


「そうみたいだね!でも、私は二人だけの方が都合がいいのだけど…」


「……っん?最後の方はなんて言ったの?」


 綾佳は段々と声が小さくなり、最後の方は聞き取れないほど小声だった。

 海里は首を傾げながら聞き返したが、綾佳は、「なんでもないよ」と手を振って誤魔化した。


「あの… 俺の存在を忘れてますよね?」


 海里と綾佳は声のする方に振り向いた。


「あっ… 」

「颯斗くん、もしかして… 余り物?」


「そうだよ… みんな、俺が瀬倉さんとお昼を食べているからって、班に入れてくれなくてよ… 」


 涙目になりながら、颯斗は残った理由を話した。


「えっと… なら、颯斗も一緒に回るか?」


「お願いします!!てか、勉強会で教えるんだから、そこはな… 」


「はぁ… それとこれは関係ない気がするが、いつものメンバーで回るとするか。綾佳もそれでいいか?」


「………っん。海里くんがリーダーだから、全て任せるよ」


 綾佳は頬を膨らませながら言った。


 それよりも気になったのは


(いつの間にリーダーになったんだ?)


 海里は困惑しながら、綾佳に質問をする。


「待って、俺がリーダー?!」


「そっ!海里くんなら、私たちをまとめることもできるし、スケジュール管理とかも完璧でしょ?」


 綾佳は顔を近づけてきて、ニコニコしてきた。

 彼女が言いたいのは、マネージャーの仕事をしている海里なら大丈夫でしょと言うことだ。


 海里は苦笑しながら頷くことしかできなかった。


 颯斗は二人が言っていることが何だか分からないが、微笑ましい光景に頷いていた。


 何だかんだリーダーになった海里は、行動予定を決めるために三つの席をくっつけて座った。


「それじゃあ、二人とも行きたい場所を言ってくれ」


 綾佳と颯斗は黒板に書いてある場所付近を地図で見ながら言っていき、それを海里がまとめていく。


「なら、俺と瀬倉さんの行きたい場所をうまく構築していけば回れそうじゃね?」


「構築って… 颯斗くん頭がいい人みたい」


「いやいや、さっき頭いい証拠見せたでしょ?」


「そうだったね」


 自分の目の前で二人は楽しそうに話をしていた。

 海里はそれらの話を聞きながら、プリントにメンバーと行き先を書いていった。


 そして海里は咳払いをして、口を開いた。


「とりあえず、二人の意見をまとめて書いたからこれでいいか?」


 海里は二人にプリントを見せて二人は、「いいんじゃね?」や「流石、海里くんだね!」と言っていた。


「じゃあ、先生にプリントを提出してくるわ」


 そう言って、海里は席を立ち上がり、先生のいる教壇の元へと向かった。

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