第114話 予定が出来るのは嬉しい

 翌日になり、海里はベッドから起き上がった。

 パジャマを脱ぎ、壁に掛けてある制服に着替えてリビングへと向かった。


「おはよう」


 リビングに着くと、綾佳は既に朝食の準備を終えて海里のことを待っていた。


「おはよう!朝ごはん出来ているから、早く食べよ!!」


「そうだな」


 海里は椅子に座り、綾佳と同時に挨拶をした。


「そー言えば、CMの撮影がもうすぐだよね?柚月ちゃんからメールとか来てるの?」


 朝食を食べながら、ふと思ったことを聞いた。


 もうすぐ撮影ということで、綾佳のストーカーになりかけている柚月ならメールが来ているだろうと思ったのである。


「まぁ、来ていることには来ているよ」


 綾佳が机の上にあった携帯を手に取り、画面を触ると海里に向けて画面を見せてきた。


 そこには、柚月からのメッセージがあった。


『綾佳先輩!もうすぐ撮影ですね!』


『今日は綾佳先輩に迷惑かけないようにと思い、イメージトレーニングをしました!』


『この衣装どうですか?可愛いですか?』


 など、様々なメッセージが一日に何件かきていた。


「これは、何というか… 話が変わってきているよな?」


「そうだよね(笑) 柚月ちゃんってほんと面白いよね〜」


「面白いけど、ストーカの一歩手前まで来ているなこれは」


「私がちゃんと止めてあげないとね!」


「綾佳先輩頑張ってください」


 綾佳は、「任せなさい!」と言ってサムズアップした。


 それから二人は朝食を食べて、学校へと向かった。


◇◆◇◆


「おはよう!」


「おはよう」

「おはよう、颯斗くん!」


 教室に入ろうとしたら、颯斗が後ろから挨拶してきた。

 二人は少し驚きながらも、後ろを振り向いて挨拶をした。


「あっ、海里、昨日はごめんな。なんだか、気を遣ってしまって」


 教室に入り、颯斗は二人の席の近くに立ちながら話してきた。


「別に、少しの間だけど俺も楽しめたし」


「そう言ってくれると色々と助かるわ。なんだかんだで、楓も楽しそうだったしな」


「そ、そうか」


 楓の名前を聞いて、海里は苦笑いをした。


(楓さんの言葉がずっと脳裏に出てくるんだよな…)


 海里は昨日からずっと『ヘタレ』という言葉が、何度も頭の中で巡っていた。


 自分でも自覚はあるものの、いざ行動に移せるかと言われたら無理なのだ。


「ちょっと、二人とも楽しそうに話してずるいよ〜!!それに、楓ちゃんに会ったの?私も会いたかったな」


「おっ、なら、今度みんなで遊ぼうぜ!楓も瀬倉さんが来るなら、絶対に来ると思うし」


「やったー!!それなら、今度のゴールデンウィークとかかな?」


「瀬倉さんの予定に合わせるから、ゴールデンウィークでも大丈夫だよ。海里もいいよな?」


 どうやら、海里に選択権はないようだ。

 なので、ため息をついて返事をした。


「あぁ、それで大丈夫だ」


「それじゃあ、あとで楓にもメールで聞いてみるよ」


「よろしくね〜!」


 話が終わったタイミングで先生が入ってきたので、颯斗は自分の席へと戻って行った。


 海里がふと横を見ると、綾佳は嬉しそうに口角が上がっていた。

 どうやら、楓に会えるのが嬉しいようだ。


(まぁ、自分のファンと遊ぶことは普通は無理だもんな)


 そんなこと思いながら、海里は先生の話に耳を向けた。

 

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