第113話 楓さんは協力的?
綾佳がレイナの家にて女子会をしている頃、海里は颯斗と出掛けていた。
家にいてもやる事がなく暇をしていたら、颯斗から『これから少しだけ遊ばね?』と連絡がきたので、海里は『行くわ』とだけ送った。
そして、待ち合わせ場所に来たら… 楓もいた。
「おい、彼女も一緒だなんて聞いてないぞ?」
「連絡したあとに楓からも遊ぼうってきたから、みんなで回ろうって考えてこうなった」
「うん、よく分からない。それで、楓さんはよかったの?」
きっと、楓は二人でデートしたかったに決まっている。それなのに、自分がここにいたらダメだろうなと思いつつ、彼女に聞いた。
「まぁ、ちょっと予想外でしたが、海里さんともお話したかったので大丈夫ですよ!」
「それを聞けて少し安心したよ。でも、二時間くらいで俺は帰るから、そのあとは楽しんでね」
今が十一時半なので、十三時半に帰ればそのあとは二人で自由に行動できるだろうと考えた。
「お気遣いありがとうございます。ですが、私は気にしてないので、もう少しいてもいいのですよ?」
「一応、そのあとに予定があるから…」
嘘である。
海里は二人と解散したあとに予定など無い。
だけど、楓のことを思って言ったのである。
「うふふ… 海里さんはいい人ですね!」
「そ、そうかな?」
「えぇ、私、海里さんのこと好きになりそうですよ」
楓の言葉に、颯斗は「ちょっと… 楓、さん?」と横から手を伸ばしながら呟いていた。
海里は、苦笑いしながら楓に言った。
「颯斗のことを、これからもよろしくね」
「もちろん。大事な幼馴染で、大事な彼氏ですもん」
それを聞いた颯斗は、「かえでぇ…楓…」と泣きながら呟いていた。
海里と楓は、それを見るとお互いに顔を見合わせて微笑して、喫茶店へと向かった。
「あの… 俺は遊びたかったのですが、何故喫茶店なんでしょうか?」
喫茶店に着くと、颯斗が徐に口を開いた。
「確かに遊びなら、ゲームセンターやショッピングなどありますが、私は海里さんとお話したかったので喫茶店なのです。あと、お腹空いたので」
「なるほど… だけど、海里と遊ぶ約束をしたのは俺なんだけど…」
「あら? 貴方が私の誘いを断れば、海里さんと遊ぶことが出来たのですよ? なのに、同時に時間を合わせて… そしたら、私は海里さんと話したくなるに決まってるじゃないですか」
楓は真剣な眼差しをして、颯斗に説教をする。
(楓さんには逆らえないのか… それにしても、颯斗のやつ時間をずらせばよかったのでは?)
そんなことを思いながら、二人の会話が終わるのを待っていた。
「………はい」
「さぁ、海里さん。あそこの席に座りましょう!」
話が終わったようだ。
海里は頷き、楓の後ろを着いて行った。
その後ろに颯斗がトボトボと着いて来た。
海里と楓は注文を終え、先に席へと着席した。
「それで海里さんは、瀬倉綾佳さんとはどこまで進んだのですか?」
颯斗が注文している間に、楓が唐突に聞いてきた。
突然の事に、海里は口に入れていたパンが変な所に入りむせてしまった。
「な、何を聞いているのですか?!」
「大丈夫だよ!颯斗くんには、何も言わないから。ほら、帰ってきちゃうからは・や・く!」
これは逃げ道がないようだ。
海里は「はぁ…」っとため息をつき、楓の質問に答えることにした。
「一言で言えば、何も進んでません。ただ、色々あって同棲はしているくらいですかね」
「なんと!!!同棲しているのに、何も無いのですか?!普通、同棲していたら、ラッキースケベやキ… キスなどあるのでは…?」
「いやいや、それは無いから!!あっちはトップアイドルなんだぞ!!手を出せる訳ないし…」
「つまり、手を出そうとは思っていたと?」
「………」
別に手を出すとか、出さないとか考えたことは一度もなかったようなものだ。
海里にとって綾佳とは自分の生活を支えてくれる相方であり、仕事の仲間と思っていた。
なので、楓の言葉に答えることができなかった。
「海里さんってヘタレですね」
「ヘ… ヘタレって…」
「分かりました。ここで私から一言、助言をあげましょう。綾佳さんは、海里さんと恋人関係になりたいと思っているかもしれません。以前、お会いした時に既にそんな顔をしていたので… もはや、ラッキースケベに憧れているかもしれませんね(笑)」
「恋人関係とかは、今はまだ分からない… これから大事な仕事があるし…」
「なら、ラッキースケベやりましょう!」
「それって、狙ってやれないよね?」
「まぁ、ここに関しては運もありますね。なので、そのような事が起こったら私に連絡ください!」
そう言って、楓は携帯を取り出して連絡先を見せてきた。
海里は最初戸惑ったが、「…ん」っと催促してきたので連絡先を交換した。
それと同時に注文から颯斗が帰ってきた。
「あれ?二人とも俺がいない間にかなり盛り上がっているけど、何があったの?」
「颯斗くんのダメな所を教えていたの」
「なっ?! 本当か海里?それだったら、今聞いたこと全て忘れてくれ!!」
「こら!海里くんが可哀想でしょ?」
二人のやり取りを見つつ、海里は苦笑いをした。
「大丈夫だよ。そんなに酷いことは聞いてないから」
そんなことを一つも聞いてないが、自分のことの話はできないので、楓の話に乗るしかなかった。
「そうか、楓、俺がいない所で評価が下がるようなことはやめてくれよな〜 海里が学校で瀬倉さんに言うかもしれないし」
「それは大丈夫だと思うよ。海里くんはとってもいい子だから、友達の悪いことなんて言わないよ」
楓はチラッと海里の方を見て、ウインクしてきた。
海里は、「ハハハ…」として、残っていたパンを一気に食べた。
「あれ? 海里くん、そんなに早く食べてどうしたの?」
「ちょっと、やらなければいけないことを思い出したから、俺はここで帰るよ」
「ふ〜ん… まぁ、それなら仕方がないか」
楓は、何故か気に入らないような顔をして言ってきた。
(あれ?楓さんって颯斗の彼女だよね?デートしたかったんだよね?)
明らかに二人になるのが嫌そうな顔をしていた。
「そうか。悪かったな、色々とさ。学校帰りとかさ、今度時間ある時にゲーセンでも行こうな」
「そうだな。その時は楽しみにしている」
「俺もだ!」
海里は立ち上がり、自分の食べた食器類を返却口へと持って、そのまま出口へと向かった。
後ろを振り向くと、颯斗はこちらに向かって手を振っていたので、海里も手を振り返した。
——— ピコン♪
それと同時にメッセージアプリにメールが届いた。
綾佳ではない事はすぐに分かった。
だって、目の前で楓が携帯をいじっていたからである。
『もし、例のことが起きたら報告待ってますよ♪』
なんだかとんでもない人に目をつけられたなと思いながら、海里は『その時が来たら…』と返信した。
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