第112話 女子会 (後編) ①

 お盆に紅茶を入れたカップを乗せて戻ってきたレイナは、二人の前に置いていく。


「さぁ、私が取り寄せた最高級の紅茶をどうぞ」


「確かに普通の紅茶に比べて香りがいいな」


「凄く美味しそう…!」


 綾佳と麗音は同時にカップを持ち上げて、口元に運んだ。


「うん!とても美味しいな!」


「こんな美味しい紅茶飲んだら、他の紅茶飲めなくなりそう〜」


「当たり前ですわ。その紅茶は最高級なんですから!」


 レイナが持ってきた紅茶は二缶で三千円もする。

 ギフトの中では最高級で、市販の紅茶を飲んでいる人からしたら高級な紅茶だと思えるだろう。


 しかし、他の国では一杯二万円もする紅茶があることを知った彼女は取り寄せようとしたのだが、いろんな事情で取り寄せることが出来なかった。


「もしかしてだけど、レイナちゃんってお金持ちなの?」


 綾佳はずっと疑問に思っていたことを口にした。

 レイナの家はタワーマンションの最上階にあり、そこから見える景色は最高だ。

 さらに家の中には大きなピアノがあったり、床が一部大理石だった。


 だが、レイナの部屋はごく普通の女の子だった。


「確かに、私もそれ気になっていたぞ」


 レイナは一息つくと、口を開いた。


「確かに私の家はお金持ちですよ。だって、親が社長なんですから」


「マジか?!よくアイドルをやる事を許してくれたな」


「そうだよね。後継とか色々言われなかったの?」


「えぇ、私は後継することはないので。これ以上は詮索しないでください」


 そう言うと、自分で持ってきた紅茶を啜った。


 綾佳と麗音も、本人がそう言うならとお互いに顔を見合わせて頷いた。


「分かった。だが、何かあったら私たちに相談しろよ?」


「そうだよ!私もレイナちゃんの力になるから」


 二人の言葉を聞き、レイナはニコッとした。


「ありがとうございます!」


 ———ピーンポーン


 すると、インターホンが鳴る音が聞こえた。


 レイナはその場から立ち上がり、玄関へと向かって行った。


「もしかして、頼んでいた物が届いたのかな!!」


「時間的にそうだろうな。さて、レイナは何を頼んだんだろうな」


「お二人とも、扉を開けてくれませんか…?」


 扉の外からレイナの声が聞こえてきたので、代表として綾佳が部屋の扉を開けた。


 扉の外には両腕にビニール袋を掛けており、両手でピザの箱を持っていた。


「ふぅ… 量があるのできつかったですわ」


 荷物を全て机の上に置いたレイナは、その場にへたり込んだ。


「お疲れ様!」


「お疲れ」


「そう言うなら、手伝って欲しかったです…」


 レイナはため息をつきながら言った。


「とりあえず、袋から出して開けていい?」


 綾佳はうずうずしながら、机の上に乗っている袋類を見ていた。


「えぇ、どうぞ開けてください」


 了承を得たので、綾佳は麗音と協力して袋から出した。


 中身は一眼でわかるピザ、たこ焼き、さらに二人が頼んでいなかった高級焼肉店のお弁当があった。


 お弁当はレイナがメールで頼んでいた物らしく、二人は目を輝かせてみていた。


「やばいな… 高カロリーばかり頼んでる」


「確かにこれはやばいね… 私、少し持ち帰って海里くんにあげようかな」


「お持ち帰りするなら用意しますので言ってくださいね」


「はーい!」


 綾佳は元気よく返事をして、レイナからお弁当を受け取った。


◇◆◇◆


 頼んでいた料理は一時間弱でほぼ無くなったが、それでもカロリーを気にしていたのでピザとかは数切れ残っていた。


「ふぅ… 美味しかった〜 でも、流石に少し持ち帰るね」


「分かりました」


「数日はカロリー控えめのにしないとな… あと、運動する為に、ジムに行かないとだな…」

 

 麗音の言葉に二人は頷き、そしてため息をついた。


「そうだよね… ジム、海里くんでも誘って行くしかないかな〜 一人だと乗り気になれないし」


「なら、私も一緒に着いていこうかな?」


「麗音ちゃんも来る?!」


「いや、なんで驚いたんだよ」


「私とジムに一緒に来るのは好きじゃないと思っていたから、ちょっと意外だなって」


「海里と話したいからな」


 手をポンと叩き、綾佳は納得していた。


 その言葉にもう一人反応していた。

 レイナである。


「私も着いて行きますわ。もう一度、海里さんとお話したいので」


「レイナちゃんも来るだと?!海里くん、肩身狭くなりそうだな〜(笑)」


「まぁ、アイドルのマネージャーやって、綾佳のことを惚れさせたんだからそれくらいは我慢してもらわないとだな」


「そうですわね。なら、後日私が貸切でジムを借りますので、そこで会うのはいかがですか?」


「それはいい!それなら、周りの目も気にすることはなく話せるな」


「なんだか、私、凄く恥ずかしくなってきた…」


 綾佳は顔を真っ赤にしながら俯いた。


「まぁ、なんだ。そのジムで、私たちが海里に瀬倉に対しての気持ちとか聞けるタイミングがあったら聞くからさ」


「綾佳さんも私たちが提案した作戦など、家で頑張って実行してみてくださいよ?」


「うぅ… 頑張ります…」


 両手を強く握って、首を縦に振った。


 それから数時間はゲームやり、午後六時には解散となった。

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