第109話 CMに関しての続報?

「皆さん集まりましたね。それでは、話をしていきたいと思います」


 事務所にて海里、綾佳が椅子に座って北島の話を聞いていた。


 何があったかといえば、放課後に綾佳は帰宅しようと鞄に荷物を入れていた時に、北島からメールが来た。


『以前、話をしていたCMの件について話がありますので、二人で事務所に来てください』


 メールが来てすぐに海里の元へ行き、届いた内容を伝えた。


 海里の元に届いてないのは、綾佳といつも一緒にいるから伝わるだろうと思っていたからだ。


 このメールを見た綾佳は、ずっと楽しみにしていた仕事の話だったので、満面の笑みをしながらガッツポーズをしていた。

 

 ということで、二人はすぐに荷物をしまい、急いで事務所へと向かった。


「それでCMの話ということですが、続報まではちょっと間が空きましたね」


「あの時は出演者が決まっただけですから。そこから企画やら内容を決めているので、時間掛かるのは仕方がないのです」


「なるほど。簡単ではないのですね」


「そうですよ。人気を取るのだって大変な———」


「———話はもういいので、早く話を進めてください!」


 話の途中で綾佳は割って入り、頬を少し膨らませて言ってきた。

 それほど、今回のCMは楽しみにしていたということだ。


「おっと、これは失礼。で、共演者が一ノ瀬柚月さんって事は伝えたのが最後でしたね」


 これに対して、二人は頷く。


「まず一つ目が撮影予定日です。撮影は四月下旬から行われる予定です。つまり、二週間後くらいですね」


「二週間後…」


「はい。平日の撮影もあると思うので、学校を休むことになりますね」


「仕事でお休みするのか… あの学校に転校してからは初めてだな…」


「そうですね。ですが、学校側にも話は通しているので、その辺は大丈夫そうですね」


「だけど、皆勤賞とか狙ってみたかったなー」


「諦めてください」


「あの… 俺はどうすれば…?」


 ずっと気になっていたことを海里はつぶやいた。

 海里は綾佳のマネージャー(バイト)だが、平日の仕事に関してはあまり詳しくは聞いていない。


 そこへ、今回の仕事が来たので聞いたのだった。


「あ〜、海里くんはどうした?もちろん、私と一緒に現場を来ることもできるよ」


「そうですね。寺本さんのことも学校側には伝わっているので、来ることはできますよ」


「そうですか… どうしよう…」


 すぐには答えが出ない。

 

(同時に休んだら、颯斗に怪しまれるかな…)


 颯斗は確実に海里と綾佳の関係を怪しんでいた。

 ちょくちょく、そーゆう視線を向けてくるので。


(ほんと、どうしようかな…)


 頭に手を当てながら悩んだ。


「もしかして、一緒に休んだ時のことを考えているの?」


 綾佳には全て見透かされていた。


「そ、そうだけど… どうすればいいかな」


「う〜ん… 一言いえば、行くしかない! でしょ?」


「ははは… 綾佳らしいな」


 海里は苦笑いしながら、綾佳の顔を見た。


「それで、寺本さんはどうしますか?」


「俺は… 行きます。学校のことも気になりますが、綾佳の仕事を見てみたい気持ちの方が高いので」


「分かりました」


「さっすがー!海里くんならそう言ってくれると信じていたよ!」


 綾佳は満面の笑みをして、体を軽くぶつけてきた。

 その衝撃で少しだけ体が揺らいだが、すぐに持ち直した。

 

「二つ目ですが、今回のCMはスポーツドリンクになります。内容はまだ分からないのですが、柚月さんとの掛け合いがあるとか」


「スポーツドリンクのCMって、ほんとに凄いじゃないですか!!なかなか選ばれないって有名なCMですよね?」


「そうですね。今回はあのイベントのおかげが大きかったのですね」


「(優勝してよかった…)」


 綾佳は小さくガッツポーズして、ボソッとつぶやいた。

 横でその呟きを聞いていた海里は、綾佳に「よかったな」とつぶやき、彼女は「うん」と微笑んできた。


「これにて最新情報は終わりですね」


「仕事の内容をそのまとめ方にするとは… 北島さんってほんとにマネージャーなんですか」


「寺本さん、もう数ヶ月も一緒に仕事をしているのに、まだ分かっていないのですね」


「まぁ二人は一緒に仕事してないから、仕方がないよ。北島さん、海里くんに厳しくしないでね」


「分かりました。これから、マネージャーの仕事についてビシバシと教えていきますからね」


「は、はい…」


 北島は不気味な笑みを浮かべながら、海里に向けて言った。

 海里は引きながら返事をして、綾佳は横で笑っていた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る